中国では、呼吸器疾患が急速に拡大しています。政府は「インフルエンザの流行期」と説明していますが、市民の間では新型コロナ(COVID-19)の再流行ではないかとの疑問が高まっています。11月20日、中国のSNSでは、多くの地域のネットユーザーが、「インフルエンザ感染後に死亡した人が身近にいる」と書き込んでおり、大きな関心を呼んでいます。

 中国メディアによりますと、河南省濮陽市の蒋さんは11月10日未明、3歳の息子が高熱と手足の冷えを訴えたため、急いで病院に行きました。診察時の体温は39.8度で、医師からは「ただの風邪」と診断され、薬を処方されて帰宅しました。しかし数時間後に容体が急変し、息子は亡くなりました。蒋さんは「まさか3歳の息子が、丸一日も経たないうちに亡くなるとは思いませんでした」と振り返っています。

 重症化した事例は他にも報告されています。浙江省では12歳の少女が、発熱からわずか1日で左肺がレントゲンで白く写り(肺が白く写る重度の肺炎)、杭州では39歳の女性が3日間自宅で耐えた結果、複数の肺葉が白く写っていました。香港でもA型インフルエンザ疾患後に続発した急性脳症を発症した2歳の女児や、13歳の少女がB型インフルエンザで死亡したことが確認されています。こうした事例が相次ぎ、市民の間では「当局が感染状況を再び隠しているのではないか」という不信感が一層強まっています。

 SNSには各地から、身近でインフルエンザによる死亡があったとの投稿が相次いでいます。河南省の短編動画投稿者は「近所の5歳の子どもがA型インフルエンザにかかり3日で亡くなった。今年はあまりにも酷い。子どもの免疫力を必ず高めてほしい」と訴え、内モンゴルのネットユーザーは「こちらでも金曜日に発熱し、日曜日に亡くなってしまった子どもがいる」と書き込みました。

 河南省のある母親は「娘は誤診され亡くなりました。医師は“問題ない”と言い張り、検査をしても『ガスが溜まっているだけ』と言われ、点滴後に帰宅させられました。その日のうちに急変し、命を救うことはできませんでした」と訴えました。山東省では「熱性けいれんで命を落とした」という投稿があり、新疆自治区では「前夫がA型インフルエンザで昨日亡くなった」という書き込みも見られます。河北省のネットユーザーは「従弟が高熱で倒れ、夕方から未明の間に亡くなった」と明かしました。

 特に子どもの突然死が多く、「目にするのはほとんどが子どもの急変。このウイルスはあまりに強烈だ」という声も広がっています。湖南省のネットユーザーからは「クラスの17人が欠席した」「下の子はA型インフルエンザとマイコプラズマの両方にかかり、前触れもなく高熱になった」との投稿があり、雲南省のネットユーザーは「子どもが6種類のウイルスに同時に感染し、10日以上入院している」と訴えました。広西自治区では、「1歳の孫が病院に着くなりけいれんし、すぐICUに入った。間に合って本当に良かった」と語っています。河北省や河南省では「学校全体で発熱が広がっている」「クラス29人が一斉に発熱した」という声も広がっています。

 公式メディア・新華網によると、今年の秋と冬シーズンの重症例の67.8%は65歳以上の高齢者ですが、免疫機能が未発達な5歳未満の子どもは症状の進行が早く、急性壊死性脳症や重度の肺炎で死亡するケースもあるといいます。慢性疾患のある人、免疫力の弱い人、肥満傾向の人も重症化リスクが高いとされています。

 医療現場でも深刻さが増しています。山東大学・斉魯第二病院の呼吸器・重症医学科の副主任医師張鶯氏は「受診者の5〜6割がA型インフルエンザで、すでに流行のピークに入っています。高熱と筋肉痛で苦しむ患者が非常に多く、この状態が半月近く続いています」と説明しました。

 また、遼寧省瀋陽市の中国医科大学附属盛京病院では、南湖キャンパスの小児科の急患が1週間で3割増加したといいます。小児内科の主任によれば、「3つのキャンパスを合わせると、1日の小児の外来と急患は2300〜2400人に達しており、多くの子どもが39〜40度の高熱で受診し、2〜3日後には咳込み、乳児では喘鳴が見られる」とのことです。

 中国国家疾病予防管理局は11月10日、「今回の流行のピークは12月中旬から下旬、または1月初旬に達する可能性が高い」と指摘し、現在流行しているウイルスの95%以上がH3N2亜型だと発表しました。山東省の発表でも、ピークは11月末から12月初めと予測されています。さらに国営メディアは「複数の病原体に同時感染すると白肺の肺炎を引き起こす危険がある」と注意を呼びかけています。

(翻訳・吉原木子)