11月11日午後4時ごろ、四川省阿壩(アバ)チベット族羌(チャン)族自治州馬爾康(マルカン)市の双江口(そうこうこう)水力発電所にある紅旗特大橋が突然崩落しました。全長758メートル、主径間220メートル、主塔の高さ172メートルという壮大なスケールを誇るこの橋は「雲中の橋」と呼ばれ、今年完成したばかりでした。しかし、完成からわずか数か月後、その巨大な橋は川底に沈むという悲劇に見舞われました。
地元紙「川観新聞」によりますと、事故は11日16時10分ごろ発生しました。国道317号線の紅旗橋右岸橋頭付近で斜面が崩れ、下方の道路や一部の橋梁が損壊しました。この土砂崩れにより、国道317号の馬爾康〜壤塘(ニャンタン)区間の交通が遮断され、現時点では死傷者は確認されていません。復旧の見通しも立っていないとされています。
現場の映像には、大量の岩石や土砂が山体から崩れ落ち、山側の橋脚と橋桁が次々と断裂して大渡河(だいとが)へ落下し、巨大な砂煙が立ち上る様子が映し出されています。
「馬爾康オンライン」は同日午後6時45分の通報で、「変形が進行し、山体が崩壊したため、当該区間の路基と引橋が崩落した。人的被害は確認されていない。詳細を確認中であり、車両は交通管制による迂回路を通行するように」と発表しました。また、11月10日午後3時ごろ、紅旗橋右岸の山体に変形が見られたため、交通運輸局と公安局が合同で《交通管制通告》を発出し、臨時的な通行制限を行っていたことも明らかになりました。
しかし、当局が発表した「地滑りが原因」という説明に対しては、多くの疑問の声が上がっています。科学系インフルエンサー「科普大世界(かふだいせかい)」は、「今年1月に主径間の合龍を終えたばかりの新設大橋が、なぜわずか数か月で崩落したのか。設計・施工の段階で地滑りのリスクを予測できなかったのか。両岸の山体を補強しなかったのはなぜか。地質調査を軽視したのではないか」と厳しく指摘し、この完成直後に崩落した橋の背後には重大な責任の空白があるのではないかとの見方を示しました。
「科普大世界」によると、四川省地質環境監測センターが2024年に発表した『阿壩州地質災害リスク評価報告』では、紅旗特大橋が位置する馬爾康市白湾郷の大渡河流域は「地質災害高発地域」と明記されていました。この地域は地殻運動が頻繁で、岩盤が脆く、水力発電所の貯水による地下水位の変動が加わることで、地滑りや崩落が発生しやすいとされています。つまり、今回の崩落は決して突発的な自然現象ではなかったといえます。
同氏はさらに、「高リスク地域に架けられた特大橋であるにもかかわらず、建設前に十分な地質調査を行ったのか。設計・施工中に補強措置を講じなかったのはなぜか。斜面に明らかな亀裂が生じて初めて交通管制を行ったのは遅すぎる。地質モニタリング体制に盲点があったのではないか」とも指摘し、監視体制の不備を問題視しました。
「極目新聞」の報道によれば、四川高速公路建設開発グループの公式サイトは2025年1月14日、G317線・双江口水電站復建道路プロジェクトの紅旗特大橋において、主径間220メートルの合龍工事が無事完了したと発表していました。翌15日には、中国電建集団成都勘測設計研究院も「紅旗特大橋主跨合龍成功」と題する記事を掲載し、この成果を誇らしげに伝えていました。
当時の紹介によると、紅旗特大橋は馬爾康市白湾郷に位置し、「Y字型」に大渡河東源をまたいで、馬爾康・金川(きんせん)・壤塘の三地域を結ぶ重要な交通の要衝でした。橋梁全長758メートル、三径間一連のプレストレストコンクリート連続剛構方式を採用し、主塔は172メートルに達する高さを誇っていました。その壮麗な姿から「雲中の橋」と称され、地域交通の新時代を象徴する存在とされていました。
しかし今、その「高原の誇り」はわずか10か月で崩れ落ち、川面に沈みました。この悲劇は、技術と誇示の裏に潜むリスクを浮き彫りにし、中国の公共インフラ建設における品質管理、地質調査、そして安全監督の在り方に大きな課題を突きつけています。
(翻訳・吉原木子)
