中国の芸能界では今、ある話題が大きな注目を集めています。新作ドラマ「許我耀眼(私を輝かせて)」で再び大きな人気を呼んだ女優の趙露思(チャオ・ルースー)が、長年続いた所属会社「銀河酷娛(インハー・クーユー)」とのトラブルからついに解放されました。報道によれば、違約金を支払うことなく、阿里巴巴(アリババ)傘下の「虎鯨文娛(こげい・ぶんゆ)」に移籍したとされています。
一見すると単なる芸能ニュースのように見えますが、その背後には、中国の芸能界に横たわる権力と資本、そして芸能人との間に存在する極端な不平等関係という、深刻な構造問題が浮き彫りになっています。
輝きの裏に苦しみ
かつて趙露思については、「精神状態がおかしい」「病気を理由に同情を買おうとしている」と嘲笑する声がありました。資本に逆らったのだと言う人もいました。しかし真実が少しずつ明らかになるにつれ、人々はこれが単なる精神的な崩壊ではなく、資本による組織的な搾取と支配の結果であり、実質的な奴隷化だったと気づきました。
また、著名俳優の于朦朧(アラン・ユー)が中国共産党(中共)権力者によって暴力的に命を奪われたと伝えられた事件をきっかけに、人々はようやく趙露思が置かれていた過酷さと、最終的に決断せざるを得なかった背景を理解し始めました。
数年前、彼女は極度のストレスによる重い精神的疾患を抱え、体の痛み、めまい、嘔吐に苦しんでいました。しかし所属事務所は休養を認めず、入院さえも許さず、さらに彼女をホテルの部屋に閉じ込め、自称「法師」という人物を呼び寄せ、呪術や悪霊祓いまで行い、「憑依した邪霊」を追い出すと言い張ったのです。
彼女は日記にこう書いています。「家に帰りたい。でも彼らは、それは裏切りだと言った」。
そしてすべての迷いを捨て、友人に助けを求めて声明を出したとき、彼女はすでに絶望の淵にいました。まるで地の底から絞り出すような声で「助けてください。本当に病気なんだ」と訴えたのです。しかし世間が注目したのは、青ざめた顔と痩せ細った姿だけで、誰も「彼女は一体何を耐えてきたのか」と問いませんでした。
「国民的アイドル」から「幽閉された芸能人」へ
趙露思は2016年にバラエティ番組でデビューし、翌2017年、19歳で時代劇に出演して本格的に芸能界に入りました。デビューから10年も経たないうちに数々の人気ドラマで頭角を現し、「トップ若手女優」として国民的な人気を得ました。その明るい笑顔は「夏の光のように清らか」と称えられたほどです。しかしその光は資本という鉄の檻の中で、危うく消されそうになっていました。
2024年、ドラマ「恋人」を撮影中に突然倒れ、緊急搬送されたことがありました。その後のライブ配信で彼女は涙ながらにこう訴えました。「所属事務所銀河酷娛との契約はなんと15年、取り分は会社が7割、違約金は約80億円(4億元)にも上る。さらに病気で休んだだけで、約4000万円(205万元)を差し引かれた。会社からは言葉による屈辱だけでなく、身体的な暴力もあった。復帰後は無視や孤立という扱いを受けた」
この出来事は、中国芸能界に長く潜んできた闇を明るみに出しました。過酷な契約で芸能人を縛りつけ、利益だけを搾り取る実態です。
中国芸能界は、中共体制の縮図
趙露思の15年契約は、いわば現代版の「身売り契約」と言えます。15年という長期契約、逃れられない条項、異常に高い搾取率――こうした契約は業界で当たり前のように存在しています。
表向きには「新人育成のための投資」と説明されますが、実際には組織的な搾取です。芸能人の青春は契約に縛られ、成功すれば利益は会社へ、失敗すれば自分だけが責任を負います。体調を崩しても休むことを許されず、自らの身体さえ資本の所有物のように扱われるのです。
資本が奪うのは収入だけではなく、自己決定権、人格、尊厳まで奪い取ります。趙露思の経験は、幸運にも「生きて語れた」一例にすぎません。声を上げられず、苦しみの中で沈黙を強いられる芸能人が無数に存在しています。
中国の芸能産業は、政治と資本が結びついた構造の延長線上にあります。一方では国家が検閲や宣伝方針でコンテンツを統制し、他方では資本が契約で芸能人を支配する仕組みです。
銀河酷娛のような会社は、独裁体制の縮図です。契約書にサインした瞬間、運命は企業に握られ、芸能人が生み出す利益はすべて企業のものになる――まさに中国社会そのものです。国民が生み出した富が権力者に吸い上げられていく、その構図と酷似しています。
趙露思の「逆襲」は体制内での反抗
2025年9月26日に配信されたドラマ「許我耀眼」は、ほとんど宣伝をしなかったにもかかわらず、瞬く間に検索ランキング上位を独占しました。この成功は「趙露思の自己救済」とも言われ、彼女が勇気を持って真実を語り、立ち上がった結果として評価されています。
彼女の人気は偶然ではありません。視聴者が彼女を支持したのは、役柄の魅力だけではなく、彼女の「真実さ」と「抵抗」があったからです。それは今の中国社会では非常に貴重な「醒めた強さ」でした。趙露思は、中共体制に押しつぶされそうになりながらも、自分の運命を取り戻そうとする普通の人々の象徴でもありました。彼女の歩みは、多くの人の「自由への渇望」を呼び覚ましたのです。
彼女の「契約解除の成功」は、資本の枷が決して破れないものではないことを世間に証明しました。声を上げ、戦う勇気があれば、世論と公衆の力が不公正に対抗する最後の盾になり得る――その事実を示したのです。
趙露思の物語は、芸能界にとどまりません。制度的な制約と司法の独立が欠如した社会では、誰もが職場や立場で「契約という名の束縛」を強いられる可能性があります。人々が彼女に重ねて見るのは、一人の女優の運命ではなく、体制に抗う個人の姿です。「許我耀眼」のタイトルのように、彼女が自らの光を取り戻した姿は、権力に対する明確な「ノー」というメッセージでもあります。
趙露思の「再生」
中国のブロガー「一盅情懐」によれば、アリババが新たに資金を投じて設立した「虎鯨文娛」が、すでに趙露思と契約を結んだといいます。契約期間は5年で、違約金は一切求めず、代わりに、出演作品で2年間、新人育成に協力するという条件だけとされています。ネットユーザーからは「以前の事務所でも新人をよく支えていたのだから、彼女にとっては大したことではない」との声が多く、円満な契約解除に安堵と称賛の声が広がっています。
報道では、「虎鯨文娛」が彼女に贈った最初のプレゼントは大型時代劇の主演を役とされ、さらに映像産業が厳しい状況に見舞われている中でも、次の作品まですでに決まっているといいます。
病苦と抑圧から抜け出した趙露思は、勇気と一つのドラマを武器に再び光を取り戻し、まさに「再生」を果たしました。
(翻訳・藍彧)
