中国の茶葉は長い歴史を持ち、栽培法や飲み方の違いから豊かな茶文化が発展してきました。

 私たちが日常的に飲む緑茶、紅茶、烏龍茶は、一般的に同じ茶樹の新芽から作られます。決定的な違いはその加工処理、つまり発酵の度合いや処理方法にあります。たとえば、緑茶は発酵させず、紅茶は完全に発酵させ、烏龍茶は半発酵です。また、蒸気で加するか炒るかといった製法によって、茶葉の化学組成が変化し、その結果として茶湯の色や風味も異なります。

 ところが現代の中国では、利益追求のために大量の偽造品が横行しており、茶葉も例外ではありません。

 まず茶樹について説明します。通常の茶樹は年に二回、春と秋にそれぞれ一度ずつしか収穫できません。しかし、収穫後の茶樹に植物ホルモン剤を散布すると、わずか7日から10日で再び新芽が出るようになります。

 台地茶とは、山地や斜面に茶樹を段々畑状に植える栽培法を指し、この栽培方法によって地形を最大限に活用でき、生産量を高めることができます。

 古樹茶を人の手で摘む方法と比べると、台地茶は機械での摘採に向いており、労力を大幅に省けます。しかし、収穫物には茶葉の破片が多く混じるため、このように収穫された茶葉は品質も価格も高くなりにくいのが現実です。

 より高い収量を得るため、一部の栽培者は植物ホルモンを使用して短期間で茶樹を発芽させます。薬剤散布後、わずか7日で新芽を摘めるようになるため、効率を上げる目的でドローンで薬剤を散布する農家も増えています。

 計算してみると、1本の茶樹に農薬を散布するコストは約1円未満(数分の人民元)にしかすぎません。それに対して、摘んだ新芽を製茶して販売すれば、約2万円(約1000元)になることもあります。利益率は数千倍に達する計算です。

 以上は茶樹の段階で行われる手口ですが、茶葉そのものの偽装手法はさらに多岐にわたります。以下では、もっとも一般的な四つの偽装手法を紹介します。

着色料を添加した「染色茶」

 染色茶とは、工業用の着色料で色を付けた粗悪な茶葉のことです。たとえば中国で有名な緑茶「西湖龍井(せいころんじん)」では、悪質な業者が古くなった茶葉を工業用色素で染め、あたかも新茶のようにして再販売するケースがあります。
では、中国産の緑茶や紅茶が色素で染められていないかをどう見分ければよいのでしょうか。あるネットブロガーがその見分け方を紹介しています。
「コップを二つ用意して、どちらにも冷たい水を入れます。その中に比較したい二種類の茶葉をそれぞれ入れ、しっかりかき混ぜてみてください。もし10秒以内に色が急に濃くなるようなら、それは間違いなく色素茶です」
なぜそう言えるのでしょうか。色素には大きく分けて二種類あります。一つは工業用色素、もう一つは天然の植物色素です。天然の色素は冷水にはほとんど溶けず、熱湯で初めて溶け出すため、茶を熱湯で入れると色が出るのです。一方、工業用色素は冷水でもすぐに溶けます。したがって、冷水の中で瞬時に色が出る茶は、人工的に染められた染色茶である可能性が高いのです。

香料で茶葉の香りを増強

 市場には「香り」を売りにした茶が多くあります。例えば人気の高いジャスミン茶などが該当します。ところが、こうした茶の中には、人工的な香料を加えて香りを作り出した偽茶も存在します。香料には人工化合物が含まれており、茶を入れる際に茶湯に溶け出して、長期的に摂取すると健康に悪影響を及ぼす恐れがあります。

 では、ジャスミン茶に香料が使われているかどうかをどう見分けるのでしょうか。多くのネットブロガーたちが、それぞれの判別法を紹介しています。
あるブロガーは次のように述べています。
「まず茶葉をグラスに入れ、そこに熱湯を注ぎます。その上にティッシュペーパーをかぶせて1分ほど待ち、ペーパーを外して香りを嗅いでみてください。もしツンとした人工的な匂いがしたら、それは香料を加えた香料茶の可能性が高いです。」

 一級茶鑑定士(ティー・テイスター)の魏勇敢(ウェイ・ヨンガン)はこう語っています。
「乾いた茶葉を見ただけで香料の有無を判断することはできません。香りを嗅いだり、実際に飲んでみたりして判断するしかないのです。もし一煎目は強い香りがするのに、二煎目で香りが消える場合、それは香料入りの可能性があります。また、飲んだ後に口が乾いたり、苦味を感じたり、腹痛や吐き気が出たりする場合も、香料入りの茶である可能性が高いです」

人工的に「熟成」させたプーアル茶

 中国・雲南省で生産されるプーアル茶は、長期間保存することで独特の風味が生まれます。そのため、長い年月を経た熟成プーアル茶は高値で取引されることが多いです。

 しかし、一部の業者は利益を得るために、高温多湿の環境で短期間に人工的に熟成させたプーアル茶を作り出しています。具体的には、茶葉を密閉された空間に置き、温度と湿度を何度も上げ下げしながら管理する方法です。こうして新しい茶葉を長時間、高温・高湿度にさらすことで急速な酸化反応を引き起こし、見かけ上「古いプーアル茶」に見せかけるのです。

 このような偽物のプーアル茶は、見た目が艶やかで赤褐色を帯びており、本物の古茶と区別がつきにくくなっています。

 では、どうすれば本物と偽物を見分けられるのでしょうか。

 ある女性ブロガーが次のように説明しています。
「これを見てください。このお茶は濁って黒ずみ、まるで排水溝の水のようです。では、こちらを見てください。鮮やかな赤色で透明感があり、まるで赤ワインのようです。つまり、この濁って黒い方が人工的に熟成させた偽物の茶なのです。」

滑石粉(かっせきふん)で茶葉の光沢を増す

 滑石粉とは、天然鉱物の滑石を細かく粉砕したもので、無臭・無味です。これを緑茶に混ぜると、茶葉の重量を増やすだけでなく、黒ずんだ低品質の茶を覆い隠すことができます。さらに、粗悪な茶葉であっても見た目が美しくなり、まるで1万円(約500元)以上する高級茶のような光沢を放つのです。

 緑茶に滑石粉を混ぜるのは、一部の茶商の間では暗黙の了解となっている不正手段です。しかし、滑石粉は人体に有害であり、健康を損なう恐れがあります。では、自分が飲んでいる緑茶に滑石粉が混ざっているかをどう判断すればよいのでしょうか。あるブロガーが見分け方を紹介しています。
「茶を入れたとき、茶湯の透明度をよく観察してください。もし濁りが強く、それが長時間続くようであれば、そのお茶は絶対に飲まないほうがいいです。普通の茶葉であれば、原料の品質が多少悪くても、淹れたお茶は基本的に澄んで明るい色をしています」

(翻訳・藍彧)