2025年11月1日、韓国・慶州(けいしゅう)で開催されたAPEC首脳会議の場で、日本の高市早苗(たかいち・さなえ)首相と中国共産党の習近平(しゅう・きんぺい)総書記が、就任後初となる短い会談を行いました。わずか30分にも満たない会談でしたが、その張りつめた空気が各国メディアの注目を集めました。冒頭の挨拶が終わるや否や、高市首相は遠慮することなく、日中間の一連の敏感な課題を次々と取り上げ、異例ともいえる率直さで会談の核心に切り込みました。尖閣諸島(せんかくしょとう)や東シナ海の情勢、中国によるレアアースなど重要鉱物資源の輸出管理、日本人の拘束および在中邦人の安全、新疆ウイグル自治区の人権問題、香港における「一国二制度」の形骸化、さらには台湾海峡の平和と安定――いずれも中国が最も神経を尖らせるテーマでした。このような切り出しは、近年の日中首脳会談ではほとんど例のない展開であり、同席した外交官や関係者を驚かせました。

 高市首相の一連の質問によって、会場の空気は一時的に緊張を帯びました。海外メディアの一部は、高市首相が新疆の人権問題に言及した際、習主席が「休憩」を理由に席を立ったとも報じています。このエピソード自体は確認されていませんが、日本のSNS上では「高市首相の迫力に押されたのでは」と冗談交じりに語られました。会談全体を通じ、習主席は終始慎重な態度を崩さず、発言もおおむね受け身にとどまりました。冒頭で「日中関係の健全で安定した発展を望む」と述べた以外は、「率直な意見交換」や「意見の相違を管理する」といった原則的な表現に終始し、高市首相が提示した具体的な懸念に対しては明確な回答を避けました。中国の国営メディアも会談を簡潔に伝えるのみで、高市首相が提起した敏感な議題には一切触れず、「短時間ながら率直な意見交換が行われた」とのみ報じました。この異例の控えめな報道姿勢は、高市首相の想定外の強硬な発言に対し、中国側が慎重に対応せざるを得なかったことを示しているようです。

 会談後、高市首相は自ら記者団に会談の内容と成果を説明し、台湾問題にも踏み込みました。「台湾海峡の平和と安定の維持は、地域の安全保障にとって極めて重要である」と中国側に明確に伝えたと語り、就任後初めて中国の最高指導者に直接台湾問題を提起しました。その言葉には、冷静さの中に明確なメッセージが込められていました。日本初の女性首相として、高市氏が国際舞台で台湾海峡の安定を強調したことは、日本が相手国の規模や地位に左右されず、自国の核心的関心を堂々と主張する姿勢を象徴するものでした。さらに彼女は「双方は台湾問題についても意見を交わした。日本の立場を理解してもらいたい」と述べ、この発言は国内外の主要メディアで大きく報じられました。日本側が首脳会談の場でこれほど明確に台湾問題を取り上げるのは、近年ではきわめて異例なことです。

 この「短くも異例な」会談は、高市首相が就任以来一貫して示してきた外交スタイルを如実に物語っています。すなわち、理性的で冷静でありながらも、一歩も退かない姿勢です。彼女は明確で率直な言葉で、日本の利益と原則を守り抜きました。ある評論家は、高市外交を「退かず、曖昧にしない外交」と評しています。今回の会談からもわかるように、彼女はこれまで日本が避けてきた敏感な課題をあえて正面から取り上げ、中国側に直接意見を伝えました。高市首相は表面的な友好ムードを演出することも、対立を避けることもなく、経済的利害を理由に人権問題を曖昧にすることもありませんでした。むしろ、礼節を保ちつつも、日本の懸念を明確に示したのです。この率直で毅然とした外交姿勢は、北京に対し「日本はもはや主権と価値観に関わる問題で沈黙しない」という明確なメッセージを送るものとなりました。日本国内のSNSでは「これこそ日本外交のあるべき姿だ」「相手の目を見て真実を語る勇気がある」といった称賛の声が相次ぎ、保守派の論者たちも「毅然とした態度で日本の尊厳と国益を守った」と高く評価しました。

 一方で、日本国内では高市首相の強硬な外交姿勢に対し賛否が分かれています。保守層や多くの国民が国際舞台で堂々と主張する彼女を支持する一方で、経済界や野党、リベラル層の一部からは懸念の声も上がっています。北京を刺激することで日中関係がさらに悪化し、経済的な報復や貿易制限を招くのではないかという不安です。中国は依然として日本最大の貿易相手国であり、多くの日本企業が中国市場やサプライチェーンに深く依存しています。もし中国が新たな制裁や不買運動を仕掛ければ、その影響は日本経済にも波及しかねません。また、高市首相が理念や価値観を重視するあまり、実務的な外交交渉の余地を狭めてしまうのではないかという指摘もあります。中道派の一部からは「原則を貫くことは重要だが、対立の激化は避けるべきだ」との声も聞かれます。

 こうした中で注目すべきは、高市外交が単なる強硬路線ではなく、時代の変化に応じた戦略的選択であるという点です。長年にわたり日本は、米中両大国の狭間で「戦略的曖昧さ」を保ちながら、米国の安全保障に依存しつつも中国との経済関係を維持してきました。しかし2020年代半ばに入り、米中対立の激化と台湾海峡情勢の緊迫化によって、そうした曖昧な立ち位置は次第に通用しなくなっています。中国の軍事的拡張と外交的圧力が強まるなか、日本は米国や同盟国からより積極的な役割を求められるようになりました。こうした現実を踏まえ、高市首相は明確な立場を取ることを選んだのです。すなわち、「自由と民主主義という価値に基づく国際秩序を守る」という立場です。たとえそれが中国の不満を招いたとしても、原則を曲げることはしないという決意を示したといえます。

 今回のAPEC会談での強い発言は、まさにその象徴でした。高市首相は、日本がこれまでのように中国に過度な配慮を見せる外交を終わらせ、より主体的かつ断固とした姿勢で地域秩序の形成に関与する意思を明確に示しました。この姿勢はアジアの他の民主主義国家にとっても励みとなり、日本が「アジアにおける民主主義の要」としての役割を果たす意思を世界に示すものです。もちろん、こうした外交の転換は短期的には日中関係の不安定化を招く可能性があります。しかし、東京の判断は明確です――一時的な安定よりも、国際秩序の原則とルールを守ることこそが日本の長期的利益につながるという考えです。

 今回の高市首相と習主席の会談、なかでも「冒頭2分間」の直接的な応酬は、将来、日本外交の転換点として語り継がれるかもしれません。歴史はしばしば一瞬の決断によって動きます。「高市首相の2分間外交」と呼ばれるこの出来事は、勇気ある行動として記録に残る可能性があります。誇張に聞こえるかもしれませんが、高市政権下で日本外交のスタイルが確実に変わりつつあることは否定できません。これまで敏感な問題を避けてきた日本が、いまや堂々と立場を表明し始めているのです。経済的に中国に依存し、外交的に慎重だった時代は終わり、日本はより自信を持って主権と価値観を守ろうとしています。高市首相は行動で示しました――日本はもはや沈黙しない国だと。国際秩序が再編されつつある今、この変化は日中関係のみならず、アジア太平洋全体の力学にも影響を及ぼすでしょう。確かなことが一つあります。APECの握手の瞬間、日本外交の言葉が変わり、大国の狭間で自らの立場を再定義する日本の決意が世界に伝わったということです。日本は理性的でありながら、信念を貫く姿勢を世界に示しました――「どんな圧力の前でも、私たちは信念を曲げない」と。

(翻訳・吉原木子)