中国市場で日系企業の撤退が相次いでいます。ヤクルトが広州工場の閉鎖を発表したのに続き、自動車や化学、化粧品分野でも事業縮小が進行中です。かつて「成長の主戦場」とされた中国市場は、今や日本企業にとって撤退判断を迫る厳しい現場となっています。
10月20日、飲料大手ヤクルト(中国名・益力多)は、中国での事業再編の一環として、広州第一工場を11月30日に閉鎖すると発表しました。これは昨年12月の上海工場に続くもので、わずか1年足らずの間に中国で2度目の工場閉鎖となります。
販売が半減 1年で2つの工場を閉鎖
公式サイト資料によると、ヤクルトは2002年に中国市場へ参入し、広州市で「益力多(イーリードゥオ)」の名称で販売を開始しました。同年6月に広州第一工場が稼働を始め、乳酸菌飲料の販売がスタートしました。その後、2014年に広州市黄埔区に第二工場を、2019年には仏山市に仏山工場を開設しています。
ヤクルト日本本社は2023年11月の決算発表で、中国市場の業績低迷などを理由に2024年度の利益予測を下方修正すると明らかにしました。広州市内の別の現地子会社「広州ヤクルト」を含め、2023年1月から9月にかけて中国全体の1日あたり販売本数は前年同期比で約20%減少しています。
2024年2月、日本のメディアは、ヤクルト本社が上海にある「中国ヤクルト」で約800人規模の大規模リストラを行ったと報じました。報道では、中国経済の長引く低迷による販売不振が背景にあり、本社がやむを得ずこの決断を下したと分析されています。
公式情報によると、ヤクルト中国グループは広州市、天津市、無錫市、仏山市に計6か所の生産拠点と53の支社を持ち、家庭への宅配サービスも展開しています。
今回の広州第一工場閉鎖に関する発表では、2025年1〜3月期の平均販売量が1日あたり149万本であることが明らかになりました。これは2021年の1日平均282万本と比べてほぼ半減しています。
日本企業が中国からの撤退を加速
アメリカのシンクタンク「戦略国際問題研究所(CSIS)」は2024年9月に「脱却ではなく多様化を――地政学的リスクに直面する台湾産業の対応」と題する専門家研究によると、57.4%の台湾企業が中国本土からの撤退を検討していると指摘しました。
財信メディアの謝金河(シエ・ジンホー)会長は、アメリカのボイス・オブ・アメリカのインタビューに対し次のように語りました。日本は過去30年間で3万社以上が中国に投資してきましたが、中国政府による長年の反日教育の影響で、中国における日系企業の事業展開はますます困難になっているといいます。
2023年には三菱自動車が中国市場から撤退し、2024年には日本製鉄が中国の宝山鋼鉄との20年に及ぶ提携関係を終了すると発表しました。こうした動きは、多くの日本企業が中国からの撤退を急いでいることを示しています。さらに、2024年9月に深セン市で日本人児童が刺殺された事件が発生し、日本国内では強い衝撃と怒りが広がりました。これを受け、多くの日本企業が中国駐在の社員に家族同伴で帰国することを認め、その費用を会社が負担する措置を取り始めています。
謝金河は「これまで中国で利益を受けてきた企業は、どこの国のものであっても今や困難に直面している。特に日本は、長年の日中間の因縁の中で最も大きな影響を受けるだろう。中国共産党は毎晩のようにテレビ番組を通じて中国国民に対し日本への憎悪を植え付けている」と述べています。
日本の経済産業省は2020年7月に第1次の補助金制度を発表し、これにより一部の日本企業は国内や東南アジア諸国への移転を進めました。さらに昨年の深セン市での日本人児童襲撃事件が、日系企業の中国撤退の流れを一層強める結果となり、日本企業は台湾企業に続く「第2の撤退ラッシュ」の中心となっています。
日系自動車メーカーの不振、サプライチェーン全体に波及
2024年4〜6月時点で、日本企業の中国現地法人による設備投資額は、7四半期連続で欧州での投資額を下回りました。日系自動車メーカーの不振はすでに部品や材料など、サプライチェーン全体へと広がっています。日本製鉄をはじめとする企業も、中国での拠点や事業を次々と縮小しています。
日本にとって中国は、第2の輸出相手国であり、最大の輸入相手国です。第3位の欧州よりも地理的・経済的な結びつきは深いものの、投資先としての優先度は明らかに低下しています。
中国における日本企業の投資減少は、自動車メーカーの業績悪化に大きく影響を受けています。日本の輸送機械業界に属する中国現地法人の売上高は、2024年に入ってから前年比20%以上の減少が続いています。
2024年6月、日産自動車は常州市の工場を閉鎖しました。この工場は年間13万台の生産能力を持ち、中国全体の生産量の約1割を占めていました。日産は他の工場でも生産能力を削減する方向で検討しています。
7月にはホンダが広東省の工場を閉鎖し、さらに湖北省の工場での生産停止も計画していると発表しました。新設の電気自動車(EV)工場を考慮しても、年間生産能力は29万台減少する見通しです。
日系車の中国国内での生産減少により、部品や材料関連の事業も冷え込んでいます。ホンダの関連会社J-MAXは広州工場の一部を売却し、武漢市の一部生産拠点を縮小する予定です。また、自動車用の鍵などを製造するアルファ社は、湖北省にある中国子会社を2025年3月に解散し、生産体制を統合します。
材料メーカーの中では、日本製鉄が中国宝武鋼鉄集団傘下の宝山鋼鉄との合弁事業から撤退を決定しました。これにより中国での生産能力は約70%削減される見込みです。
日系自動車メーカーが苦戦する一方で、中国の自動車用鋼板メーカーの技術力は向上しており、競争が一段と激しくなっています。帝人株式会社も2024年3月に、自動車用カーボンファイバーなどを製造する中国子会社を現地企業に売却しました。
投資ブレーキを踏むのは自動車業界だけではない
日本の化学メーカーDICは、2024年中に中国での液晶材料事業から撤退しました。同社は現地企業に対する技術的優位性を失いつつあり、市場シェアも縮小しています。
価格競争が激しさを増す中、味の素は冷凍食品工場3カ所を統合・再編し、一部を売却しました。
また、2023年7月には資生堂が高級化粧品ブランド「BAUM(バウム)」の中国販売を終了しました。資生堂の藤原憲太郎社長は「消費者はますます価格を重視しており、今後も利益の見込めないブランドから撤退する可能性がある」と述べています。
日本企業が中国で苦境に立たされていることは明らかです。経済産業省の統計によると、2024年4〜6月期における中国現地法人の売上高は、7四半期連続で前年同期を下回りました。2021年以降、日本企業の海外投資に占める中国法人の割合は徐々に減少しており、工場や拠点の拡大よりも合理化へと舵を切っています。
(翻訳・藍彧)
