現在の中国経済は、冷たい統計データの領域を超え、社会のあらゆる層に景気の冷え込みを実感させる空気が広がっています。

 不動産の崩壊、雇用の縮小、内需の低迷は、単なる経済統計上の危機にとどまらず、複数の世代の中国人に現実的な重圧としてのしかかっています。

 「70年代生まれ(1970年代生まれ)」の負債不安から、「80年代生まれ(1980年代生まれ)」の資産目減り、「90年代生まれ(1990年代生まれ)」の職場不安、そして「00年代生まれ(2000年代生まれ)」の集団的な「躺平(横たわる)」まで、中国社会はいま、世代を超えて「経済的心理の崩壊期」を迎えています。

80年代生まれ」のジェットコースターのような人生

 北京の経済系ブロガー「忐忑的可楽餅(タンテゥーダ・コロッケ)」は、10月15日の投稿でこう述べています。「ここ20年間、国民全体が住宅購入に走ったという時代において、70年代生まれ・80年代生まれ・90年代生まれのほぼすべての人が巻き込まれました。不動産は資産運用の手段であるだけでなく、社会的地位の象徴であり、同時に不安の源でもあった」

 しかし今、不動産市場が下落を続ける中で、「私たちは囚人のように、いくつもの住宅に縛られている」と彼は語りました。

 80年代生まれにとって、このゲームは特に残酷です。彼らは「最も努力した世代」と呼ばれました。懸命に学び、働き、ローンを組み、家を購入し、高速都市化と資産膨張の時代を生きながら、不動産を通じて階層上昇を果たそうとしたのです。

 しかし、栄光の時代は長く続きませんでした。2020年代に入ると不動産バブルは急速に崩壊し、住宅価格の半減が日常化しました。高値で購入した多くの家庭は、帳簿上の資産が一夜にして10年前の水準に戻ってしまったのです。資産の縮小は単なる数字上の損失ではなく、過去20年の努力が「帳消し」にされたような感覚をもたらしました。

 「80年代生まれの人生はまるでジェットコースターのようだ。前半は頂点に駆け上がり、後半は自由落下だ」と、このブロガーは語ります。

 住宅価格は下がっても、ローンの残高は変わりません。銀行の契約は冷たく、鉄のように硬い現実です。ますます多くの中間層が「資産負債の逆転」という苦境に陥っています。不動産は値下がりし、負債は減らず、消費意欲は大きく抑制されています。

 この世代は「住宅ローンに縛られた中年層」とも呼ばれています。仕事を替える勇気も、起業する余裕もなく、子どもを持つことすらためらう人が増えています。なかには月々の返済を維持するために、副業でフードデリバリーや宅配を行う人もいます。

 経済学者は、この構造的な負債問題こそが、中国の内需が回復しない最大の要因の一つであると分析しています。数千万世帯が支出を抑え、貯蓄を強いられる悪循環に陥っているのです。

90年代生まれ」の職場と学歴競争

 「忐忑的可楽餅」は、「90年代生まれ」のほうがさらに厳しい状況にあると指摘しています。80年代生まれが個人資産の急成長を経験したのに対し、90年代生まれは経済成長の「大波の終盤」に乗った世代であり、より早く景気後退とリストラの荒波に直面した世代だといいます。

 彼はこう語ります。「90年代生まれは都市化の恩恵と資産膨張の波の末期に間に合った。まるで大宴会で少し口にしただけで、まだ満足していないのに、テーブルをひっくり返されたようなものだ。気づけば経済は不況に入っていた」

 「私の90年代生まれの元同僚の多くは、入社時の月給が約12万〜15万円(6000〜7000元)程度だった。その中には海外留学帰りの人も多かった。ところがようやく昇給して少し生活が安定したころ、会社が大規模リストラを始め、大半が職を失った」

 一方で、学歴の価値低下と激しい競争の進行は、彼らが避けられない現実となっています。

 同ブロガーは次のように述べています。「多くの90年代生まれと話して分かったのは、彼らの中にはオーストラリアやイギリス、ニュージーランドなどへ留学していた人が少なくないということだ。かつては華やかに見えた留学経験も、今では一部の名門校を除けば、多くが中国の就職市場で『信用されない学位』と扱いされている。国内の一流大学卒には太刀打ちできず、教育投資の効果は急速に下がっている。つまり、雇用市場の競争が極限まで激化しているのだ」

00年代生まれ」社会のルールを見抜いた「覚醒世代」

 「忐忑的可楽餅」は、00年代生まれを「最も冷静で、同時に最も無力な世代」と評しています。彼らは社会資源の分配構造を早くから見抜き、住宅購入や資産獲得のチャンスを完全に失ったことで、「もうそのゲームには参加しない」という寝そべりの姿勢を選んだといいます。

 「競争が極端に激化しており、00年代生まれはどんなに努力しても家を買うことはできず、高収入職や社会的資源の面でも前の世代を超えることはできない」

 このように、家を買うといった従来型の成功目標が達成できないことで、00年代生まれの消費心理は大きく変化しています。彼らは貯蓄や不動産投資よりも、むしろ「感情を発散できる商品」や体験型の消費を選び、短期的な心理的満足を求める傾向を強めています。これは、消費の重心が大きな物的価値から「情緒的価値」へ移行していることを示しています。

 この見解には多くの共感が寄せられています。ブロガー「洛克大神(ルオク・ダーシェン)」はこう指摘します。「今は寝そべり族がますます増えている。仕事に行かず家で無気力に過ごす者もいれば、あるだけの金を使い果たして破れかぶれになる者もいる。いずれにせよ、人生を半ば放棄している」

 「90年代生まれはすでに住宅ローンに縛られている。かろうじて買っていない少数派も現実的になり、もう家を買おうとはしない。00年代生まれはその姿を見て様子をうかがっている。90年代生まれが住宅に縛られて苦しむ姿を目の前にして、家を買って得られる幸福など、たかが知れていると分かっているからだ」

 「洛克大神」はまた、「家を買うのは泥船に乗るようなものだ。その後には住宅ローン、内装、結婚、出産、教育、医療と、次々と出費が待ち受けている。ひとたびその船に乗れば、自分の意思では降りられない」と語ります。

 「市場に刈り取られる前に、親が玄関先に張り付いて『早く家を買え、妻を娶れ、孫を産め』としつこく迫ってくる。親のこのしつこさには抗えず、結局は『ニラ』として刈り取られる」

 「忐忑的可楽餅」は、「いったいこの数世代が何を間違えたというのか」と疑問を呈します。

 彼は、この複数の世代を巻き込んだ経済の衰退は、中国が長年続けてきた「高負債・高投資・高成長」という経済モデルの行き詰まりの結果であり、不動産バブルの崩壊と内需の停滞がもたらした衝撃に他ならないと分析します。
そして、経済環境が冷え込む中では、個人の努力も抵抗も、最後にはむなしく感じられると結んでいます。

(翻訳・藍彧)