2025年10月、日本政府は「経営・管理」ビザに対して、この10年間で最も厳しい規制強化を実施しました。かつては数百万円を投資するだけで日本で会社を設立し、家族を伴って移住することができたものの、現在ではその門戸が急速に狭まっています。過去10年にわたり盛んだった低コスト移民モデルは、ここでひとまず終止符を打ったと言えるでしょう。かつてこのビザを利用して家族で日本へ移住した中国人の中には、すでに荷物を整理し、帰国の準備を進める人も少なくありません。
このビザ制度の当初の目的を振り返ると、2015年に日本政府は「投資・経営」ビザ(後に「経営・管理」ビザに名称変更)の申請条件を大幅に緩和し、資本金の下限を500万円に引き下げました。これは、外国人による日本での起業を促進し、新技術や新産業を導入して経済再生を後押しする狙いがありました。このビザを取得すれば、外国人起業家は最長5年間の在留期間を得ることができ、配偶者や子どもには「家族滞在」ビザを申請する資格が与えられ、日本での生活・就学・医療を享受することが可能でした。さらに一定の年数や条件を満たせば、永住や帰化の道も開かれていました。欧米やオーストラリアでは数百万元(人民元)規模の投資が求められるのに対し、500万円という金額は「極めて寛大」と受け止められ、一時は中国の富裕層を中心に日本移住ブームを巻き起こしました。2024年時点でこの「経営・管理」ビザを持つ在留外国人は約4万人、そのうち中国籍は約2万500人にのぼり、過半数を占めています。日本は多くの中国人家庭にとって「コストパフォーマンスの高い移住先」として人気を集めていました。
しかし、本来「人材を呼び込み、事業を興す」ことを目的としたこの制度は、現実の運用の中で次第に歪み、「偽の起業、真の移民」という問題を生み出しました。多くの人が500万円をかき集めて会社を設立しても、実際の事業活動を行わず、主な目的は家族での定住や先進国の公共サービスの享受、あるいは理想的な老後の生活拠点を確保することにありました。中には仲介業者に手数料を支払い、口座間で資金を動かして「給与」を受け取る形を装い、会社は長期間休眠状態のままというケースもありました。つまり、書類上だけの「仮想的な経営」が横行していたのです。
日本政府が当初期待していたのは、外国人起業家による新技術や新市場の創出でしたが、申請者の多くの「壮大な計画」は、最終的に小規模な飲食店や民宿など、参入障壁の低いビジネスにとどまりました。一方で、来日後すぐに高級マンションや高級車を購入する人、国際・私立学校の席を確保する人、あるいは重病が発覚してから慌てて会社を設立し、在留資格を得て長期入院治療を受ける人まで現れました。こうした行動に対して、「不正に制度を利用して利益を得ているのではないか」という疑念や反感が社会に蓄積していきました。実際、制度の乱用が個別の例にとどまらないことを示すデータもあります。調査によると、多くの更新申請者が実体のある経営を行っておらず、別の報告では、継続的に経営投資を続けているのは全体の3分の1程度にすぎないといいます。ビザ保持者の多くが民宿や飲食、小規模貿易といった分野に集中し、制度が想定していた高度な事業展開や雇用創出は進まず、一部の大都市では住宅価格や居住環境への悪影響も問題視されるようになりました。
「偽の起業」現象がエスカレートする中で、日本社会の不満は次第に高まり、メディアも相次いで「ビザの乱用」事例を報じました。借り会社を利用したマネーロンダリングや虚偽雇用、「日本企業」の名義を使って安価な模倣品を海外へ大量輸出し、「日本製」ブランドの信頼を損なうといった事例も見られました。また、民宿業が急速に拡大した大阪などでは、騒音やゴミ、地域秩序への悪影響が深刻化し、住民トラブルが相次ぎました。一般市民から政財界に至るまで、「偽の経営、真の移民」という構図への不満が沸騰寸前に達し、政府に対して「抜け道を塞ぎ、秩序を取り戻せ」と求める声が高まっていったのです。
こうした批判の高まりを受け、日本政府はついに動きました。2025年から入国管理部門による審査が大幅に厳格化され、かつては提出から2か月ほどで許可が下りることもあったものの、現在では審査期間が長期化し、必ずしも許可が得られるとは限らなくなりました。10月中旬に正式施行された新制度では、制度そのもののハードルが大きく引き上げられています。
第一に、登録資本金の下限が500万円から3,000万円へと引き上げられました。
第二に、少なくとも1人の日本人または在留資格を持つ常勤従業員を雇用することが原則として義務付けられました。
第三に、会社は独立した営業オフィスを設ける必要があり、自宅兼用や複数社による共用住所での申請は認められなくなりました。
さらに、いわゆる「ソフト条件」も同時に強化されました。申請者またはその会社の従業員のうち少なくとも1人がJLPT N2レベルの日本語能力を有し、日常の経営・コミュニケーションに支障がないことを証明する必要があります。申請者本人には、関連分野での修士以上の学歴、もしくは3年以上の経営管理経験が求められ、自らの経営遂行能力を客観的に示すことが義務付けられています。また、事業計画書は今後、有資格の第三者専門家による審査が必須となり、正当な理由なく長期休業が続く場合や、代表者が長期間海外に滞在して戻らない場合、税金や社会保険料を滞納している場合などは、更新審査時に重点的なチェック対象とされます。これらの新基準は、制度の入口段階で不正を防ぎ、ビザ本来の「経営活動を主とする」という趣旨に立ち返らせる狙いがあります。
新たな規制の影響は、まず在日華人コミュニティに広がりました。今回の措置は、このビザを利用して日本への移住を図っていた外国人、特に中国人にとって極めて大きな打撃となりました。門戸が明らかに高くなっただけでなく、制度利用のメリットも急速に薄れています。現在約4万人いるビザ保有者のうち、新基準をすぐに満たせるのはごく一部に限られると見られています。日本政府は3年間の移行期間(2028年10月まで)を設けていますが、この期限を過ぎても基準に達しなければ、更新が難しくなり、在留資格の終了を余儀なくされる可能性が高いと予想されています。言い換えれば、今後数年でこのルートを利用していた人々の一部は、次々と帰国を迫られることになるでしょう。
ある在日中国人の小規模企業経営者は、「新しい規定では、年間でほとんど利益が出ない400万円を従業員の給与として支払うよう求められており、小さな事業者には到底無理です」と率直に語ります。小規模で資金力の乏しい華人企業の多くは、この新たなハードルを越えられず撤退を余儀なくされると見られます。中国のSNS上でも、「25万元で家族ごと日本移住」という時代は終わったとの声が広がっており、ある華人メディアは「そもそもこの低コスト移民プラン自体が誇張された宣伝であり、実際に必要な投資額やリスクは25万元では到底賄えない」と指摘しています。新制度の施行により、名義だけの会社を設立して移住を狙うといった手法は、もはや通用しなくなったと言えるでしょう。
日本社会にとって、この「整頓の嵐」は単なる行政手続きの改正にとどまらず、より深い意味を持ちます。多くの国民は今回の新制度を「タイミングとしても適切で必要な措置」と評価しています。それは、外国人による公共資源の不適切な利用を実質的に防いだという点で、痛快と感じる向きもあるほどです。同時に、この高いハードルは「大波が来て砂が洗われるように」、本当に日本で起業する意思と能力を持つ人材を選別する作用を果たすでしょう。確かに、副作用として、起業意欲はあっても資金や管理経験の乏しい人が排除される可能性は否定できません。短期的には日本が海外起業家を引きつける余地が狭まるかもしれませんが、長期的に見れば、公平で透明性が高く、実質的な経営を重視する制度環境こそが、真に日本で根を下ろして事業を営む起業家にとって有利に働くはずです。
(翻訳・吉原木子)
