秋冬のシーズンを迎え、中国各地でインフルエンザの流行が急速に拡大しています。特に南部の省では患者数が増え続けており、主流となっているのはA型H3N2株です。昨年主流だったA型H1N1株とは異なる傾向を示しています。香港でも子どもの重症例が相次ぎ、死亡例も報告されるなど、社会的な関心が高まっています。専門家は、今年のインフルエンザシーズンが例年より早く到来する可能性があると指摘し、さらに呼吸器合胞体ウイルス(RSV)など他の呼吸器感染症との同時流行が予想されるため、感染対策の負担が一段と増していると警告しています。
中国疾病予防控制中心(中国疾控中心)の最新データによると、2025年10月19日時点で北部地域の流行は依然として低水準にとどまる一方、南部地域では明確な増加傾向がみられます。今週は全国で49件のインフルエンザ様疾患(ILI)の集団感染が報告され、検出されたウイルスの約9割がA型H3N2株でした。専門家は、このH3N2株が変異の進行が速く、病原性が強い上に、一般の免疫がまだ十分ではないため、感染リスクが昨年より高いと分析しています。
各地の病院では小児科外来の受診者が急増しています。特に新学期以降、児童の感染例が目立ちます。SNS上では、「陝西省の幼稚園で31人中17人が感染した」とする動画が投稿され、話題になりました。江蘇省、浙江省、上海市、広東省、重慶市、河南省などでも発熱患者が集中し、小児病院によっては1日900件以上の点滴を行うケースもあり、待合室があふれる状況が続いています。
ネット通販サイト「京東(JD)」の医薬品販売データでも、インフルエンザ関連薬の売上が急増しています。10月1日から19日までの期間で、「999感冒靈」は前年同期比210%増、「蒲地藍消炎片」は390%増となりました。ネット上では「息をするだけで喉が痛い」「20日経っても熱が下がらない」といった投稿が相次ぎ、河南省のユーザーからは「次から次へとウイルスが襲ってきて、人間がもたない」と嘆く声も上がっています。
一方、香港でも厳しい状況が続いています。新学期が始まった9月以降、香港衛生署の衛生防護中心は学校や施設での集団感染を556件報告しました。10月23日時点で、児童の重症例は14件にのぼり、そのうち1人が死亡しています。患者の年齢は2歳から17歳までで、11人は基礎疾患のない健康な子どもでした。
10月12日には13歳の女子生徒がB型インフルエンザに感染し、心筋炎や脳症を併発して死亡。香港で今年初の児童死亡例となりました。20日には2歳の女児がA型インフルエンザによる肺炎と脳障害で重篤な状態となり、この女児は潜伏期間中に広東省に滞在していたことが確認されています。23日にも14歳の女子がショック症状を起こして集中治療室(PICU)に搬送され、本週4件目の重症例となりました。衛生防護中心の徐楽堅総監は、学校や保護者に対し、児童への季節性インフルエンザワクチン接種を早急に進めるよう呼びかけています。
首都医科大学付属北京佑安医院の感染科主任・李侗氏は、「H3N2ウイルスは感染力が強く潜伏期間が短い。高熱、咳、喉の痛み、全身の倦怠感などの症状を引き起こし、重症化すると肺炎や心筋炎を併発することがある。特に子どもや高齢者にとっては脅威だ」と述べています。復旦大学付属児童医院の感染科副主任も、「新学期以降の感染拡大は顕著で、現在は小学生や幼稚園児が中心となっている」と指摘しました。
さらに、インフルエンザだけでなく、RSVなどの呼吸器ウイルスも9月から10月にかけて流行期に入っています。中国疾控中心のデータによると、9月下旬から10月上旬にかけて、南部地域の外来・救急患者の検査でRSVの陽性率が2番目に高かったといいます。RSVは感染力が強く、乳幼児の肺炎を引き起こすことが多く、家族全員が感染するケースも少なくありません。重症となった子どもの一部は集中治療を必要としました。河南省では手足口病の流行も一部地域で確認され、江蘇省丹陽市でも小児科外来の患者が急増しています。遼寧省衛生健康委員会は「秋冬は呼吸器疾患の多発期であり、インフルエンザワクチン接種で感染や合併症のリスクを大幅に減らせる」と注意を呼びかけました。
複数の呼吸器感染症が同時に流行する中、医療関係者は国民に対し、こまめな手洗い、マスクの着用、室内換気、人混みの回避など、基本的な感染対策を徹底するよう求めています。発熱や咳、喉の痛みなどの症状が出た場合は、自己判断で薬を乱用せず、早めに医療機関を受診するよう呼びかけています。国家衛生健康委員会は今後も流行状況を注視し、地方政府に対して科学的な防疫指導を続ける方針です。気温がさらに下がるにつれ、これらの呼吸器疾患の流行はしばらく続くとみられ、専門家は特に子ども、高齢者、慢性疾患を持つ人などハイリスク層に対し、早めのワクチン接種を行い、重複感染による健康被害を防ぐよう強調しています。
(翻訳・吉原木子)
