インターネットの発展に伴い、オンライン販売はますます人気を集めていますが、スーパーは次第に人々から忘れられつつあります。

 10月初めの大型連休、中国の杭州市にある敷地3000平方メートルの大型スーパーは商業エリアの中でひときわ閑散としており、買い物をしているのは中年夫婦が二、三組だけでした。生鮮売り場はがらんとしており、半月前に並べられた賞味期限間近の惣菜や、割引シールが貼られた肉類が目立っていました。

 『2025年中国小売業発展報告』によると、2 024年に全国で閉店した大型実店舗スーパーは687店に達しました。また2024年には、チェーンスーパーの約6割で売上高が減少したといいます。

スーパーの衰退

 かつてスーパーが持っていた「販売チャネル」「利便性」「ビジネスモデル」という三大優位性は、いまや全面的に崩壊しつつあります。

 スーパーで扱う商品の中心は日用消費財で、その比率は7割を超えます。しかし現在では、日用消費財を買えるチャネルはあまりにも多く存在します。天猫スーパーや京東スーパーといったオンライン小売業者では数百万種類もの商品が揃うのに対し、実店舗スーパーで扱うのは数千種類にとどまり、品揃えの少なさが際立っています。

 スーパーの黄金時代には「販売チャネルを制する者が勝つ」とされ、立地のよい場所を押さえ、多くの人を集めることが最大の資産でした。しかし、この独占的な流通網が崩れると、価格交渉力は大きく低下しました。

 利便性という売りも危うくなっています。過去半年の間に、美団、アリババ、京東の3社は合計で約4000億円(200億元)以上を投入し、デリバリー市場で熾烈な競争を展開しました。その狙いは小売市場への参入であり、外食以外の分野にも宅配を広げることでした。今年7月、美団は即時小売の当日注文数が1億2000万件を突破したと発表し、そのうち2000万件が食べ物以外の注文でした。タオバオ即配も7月5日には食品以外の商品の注文が1300万件を超え、全体の16%に達したと明らかにしました。

 一方で伝統的なスーパーの経営モデルでは、低価格販売は困難です。スーパーの利益の大部分は商品の販売益ではなく、供給業者から徴収する棚代、管理費、販促費などに依存しており、これらのコストは最終的に商品の価格に転嫁されます。

 さらに重要なのは、現代の消費者が「気分的な満足(体験としての価値)」を重視するようになったことです。中国の消費者はスーパーに対して「駐車が不便」「レジ待ちが長い」「アフターサービスが不十分」などの不満を抱えており、利用体験は劣悪だと感じています。苦情対応サイト「黒猫投訴」には、スーパーに関連する苦情が約20万件寄せられ、そのうち半数以上が「傷んだ食品」や「粗悪品を買ったのに返品できない」といった内容でした。一方、オンラインチャネルではプラットフォームがアフターサービスを保証してくれるため、消費者が実店舗スーパーを避ける理由がまた一つ増えているのです。

スーパー企業の対策

 業界データを見ると、スーパー市場全体の規模が縮小しているわけではありません。『2025年中国小売業発展報告』によれば、2024年のスーパー売上高は前年比2.7%増加しました。つまり、スーパー業界は消滅しているのではなく、分化が進んでいるのです。

 従来型の大型スーパーは「客足減少→回転率低下→品質悪化→さらに客足減少」という悪循環に陥りやすい一方で、売上を伸ばしているのは主に以下の4種類のスーパーです。

 第一は、会員制倉庫型スーパーです。最大の特徴は有料会員制による客層の絞り込みで、品質を重視し効率を求める中産階級の家庭をターゲットとしています。スーパーの役割は「商品選定の専門家」へと変わります。中国国内に60店舗以上を展開するサムズクラブは、2024年の純売上高が約2兆1000億円(1005億元)に達し、前年比20%以上の増加を記録しました。会員数も860万人に達し、過去最高となりました。

 第二は「クラウド型スーパー」です。特徴は徹底した効率追求で、取り扱う商品は人気かつ高品質の「ヒット商品」に限定します。数百平方メートル(約90〜150坪)規模の倉庫を使うことで、ピッキング効率を高めつつ賃料コストを大幅に抑えます。さらに住宅街の周辺に倉庫網を形成して配送効率を高める仕組みです。代表例は「フラッシュ倉庫」であり、美団の2024年上半期決算によれば、6月末時点で同社のプラットフォームに入居するフラッシュ倉庫は5万を超えました。この数はわずか8か月前には3万でした。美団は2027年までに10万を超えると見込んでいます。

 第三はサービス改革で注目される中国のスーパー「胖東来(パン・ドンライ)方式」の改造です。強力な商品と徹底的なサービスによって「気分的な満足」を提供することを核心にしています。2024年初め、中国の大手スーパー永輝は胖東来の協力を得て改革を開始しました。第一に新商品費、入場料、陳列料をすべて廃止し、従来のモデルから商品マネジメント型に転換しました。第二に商品ラインを刷新し、リピート率を指標に選品を最適化しました。第三にサービス面では、従業員の労働時間を減らし賃金を引き上げ、サービス基準を標準化し、無料サービスや「満足できなければ返品可能」という方針を導入しました。

 市場分析で知られる米国ニールセン社の報告によれば、こうした改革を導入した伝統的スーパーではすでに効果が表れており、2024年に改造を完了した店舗の総売上高は3倍に増加、生鮮分野に至っては改革前の7.7倍に達しました。

 第四は、ハードディスカウント型です。極端に絞り込んだヒット商品のラインナップと効率的なサプライチェーンによってコストを削減し、徹底した低価格を実現します。消費者の「安くても良いものを買いたい」という心理に応えるモデルです。ハードディスカウントスーパーの単店舗あたりSKUはわずか1000~2000程度で、ほとんどの日用品をカバーします。仕入れを直結させ、自社生産や自社開発を増やすことで中間コストを削減し、サプライチェーンから利益を生み出す仕組みです。先駆者は2019年に中国に参入したドイツ発祥のアルディで、欧米では「庶民のスーパー」と位置づけられ、郊外立地・簡素な店舗設計・高比率の自社ブランド商品によって低価格を実現しています。

厳しいバランス

 ニールセン社の報告によると、中国の消費者の25%がディスカウント店を利用する頻度を高めており、消費市場は「コストパフォーマンス優先」の段階に入りました。しかし、サプライチェーンのコスト削減も、効果は次第に小さくなっていきます。理論的には「絶対的低価格・高品質・合理的な利益」の三つを同時に実現するのは不可能です。信達証券のリサーチによれば、ハードディスカウント小売の粗利率は10%から15%であり、スーパー業界の平均を下回っています。つまり、ハードディスカウント型スーパーはサプライチェーンの安定と消費者体験を両立させながら、長期的にかろうじてバランスを取っているにすぎません。

 以上の4つの方向性にはそれぞれ特徴がありますが、共通しているのは消費者ニーズに基づく選品と「少なくても質の高い商品」を追求する点、そしてコスト削減と効率向上によってサプライチェーンから利益を確保する点です。

 ひとつの業態が転換を迫られるのは、多くの場合、技術革新や経済環境の変化が原因です。現代の世代も依然として「スーパーに並ぶ豊富な商品」に幸福感を期待していますが、その構成要素は変わりつつあります。かつては「安くて品質が良い」「品揃えが豊富」「交通の便が良い」ことが重要でしたが、今では「ヒット商品」「気分的な満足」「ライフスタイルの提案」が求められるのです。

 したがって、スーパー、ひいては小売業全体の未来の経営戦略は「安く売る」ことではなく、「高くても納得できる理由を提供する」ことになるのかもしれません。

(翻訳・藍彧)