2025年10月10日午前9時43分ごろ、フィリピン南部ミンダナオ島の東部沖でマグニチュード7.4の強い地震が発生しました。震源はダバオ・オリエンタル州マナイ(Manay)町の東およそ27キロの海域で、震源の深さは30〜50キロと推定されています。フィリピン海プレートが西に沈み込む動きによって発生したとみられ、広い範囲で強い揺れを観測しました。

 フィリピン火山地震研究所(PHIVOLCS)によりますと、震中に近いダバオ・オリエンタル州では震度階級Vに相当する激しい揺れが観測され、家屋や家具が大きく揺れ、物が倒れるなどの被害が出ました。ダバオ市やセブ市などでも震度IV〜Vの揺れがあり、住民は「家全体が揺さぶられるようだった」と語っています。

 最も大きな被害が出たのはダバオ・オリエンタル州です。マナイ町とマティ市ではそれぞれ1人が死亡し、多くの住民がけがをしました。地元の高校ではおよそ50人の生徒が転倒や失神などで病院に運ばれました。ダバオ・オリエンタル州立医療センターの建物にも大きな亀裂が入り、約250人の患者が屋外のテントに避難しています。

 地震の影響は広い範囲に及びました。ダバオ市内の複数の大学でも建物の壁にひびが入り、フランシスコ・バンゴイ国際空港では軽い損傷が確認されたものの、運航は続けられています。ブトゥアン市では橋や商業施設の一部が崩壊し、北アグサン州の建物でも壁に亀裂が生じました。中部のタクロバン市でも強い揺れがあり、市役所や病院の職員が避難し、一時的に停電が発生しました。政府はダバオやコタバトなどの地域で学校や官公庁の業務を休止し、住民に自宅待機を呼びかけています。

 地震直後、PHIVOLCSはダバオ・オリエンタル州、ディナガット諸島、スリガオ北部などの沿岸地域に津波警報を発令しました。太平洋津波警報センター(PTWC)は震源から半径300キロ以内で最大3メートルの津波が発生する可能性があると警告しましたが、実際に観測された波は数センチ程度にとどまり、深刻な被害は確認されませんでした。警報はおよそ2時間後に解除されています。

 午後までに180回を超える余震が観測され、そのうち最大のものはマグニチュード5.9でした。専門家は、今後も強い余震が発生するおそれがあるとして、損傷した建物や老朽化した施設には近づかないよう注意を呼びかけています。

 マルコス大統領は声明を発表し、「政府はすでに緊急対応体制を立ち上げ、救援隊と物資を待機させている。安全が確認され次第、速やかに現地へ派遣する」と述べました。国防省民間防衛局は緊急会議を開き、建物の損壊状況や沿岸部の避難指令を確認しました。軍や警察、消防当局も現場に投入され、救助活動と治安維持にあたっています。

 フィリピンは環太平洋火山帯に位置し、年間およそ20回の台風と頻発する地震に見舞われる国です。今回の地震は大規模な津波災害には至らなかったものの、南部地域の脆弱なインフラを改めて浮き彫りにしました。11日前にセブ島で発生したマグニチュード6.9の地震に続く今回の揺れは、多くの住民に深い不安を残しています。現在も救助活動が続けられており、専門家は引き続き警戒を呼びかけています。政府は今回の教訓を踏まえ、防災体制の強化を進める方針です。

(翻訳・吉原木子)