10月7日の夜、G80広昆高速道路の百色〜陽圩区間で深刻な道路の異状が発見されました。約30メートルにわたり亀裂と沈下が確認され、斜面の擁壁が崩落、路面の一部が大きく陥没しました。最も深い部分は2メートルを超えていたと報じられ、全国の注目を集めました。

 現地政府や官製メディアは、原因を「桂西地区の豪雨による剥隘河(水位の急上昇で地盤が浸食されたため」と説明しました。さらに、「極端な天候による自然災害」だと強調しました。しかしネット上では「また人災を天災にすり替えている」との批判が噴出しました。「設計、施工、監視のどこに問題があったのか」「なぜ「起こるはずのない事故」が繰り返されるのか」と疑問が広がりました。

 当局によると、7日午後7時半ごろ点検中の作業員が擁壁のずれを発見し、その直後に路の亀裂と沈下が確認されました。午後8時には交通が全面封鎖され、G69銀百高速道路の永楽〜陽圩区間が通行止めになりました。車両は安全に誘導され、人的被害は出ませんでした。翌朝まで応急処置と安全診断が続けられ、官製報道は「迅速な封鎖で被害拡大を防げた」と成果を強調しました。しかし、国民の信頼はむしろ揺らぎました。

 SNSでは「なぜ毎回『豪雨が原因』で片付けられるのか」「排水設計や地盤強度の検証はどうなっているのか」という投稿が相次ぎ、専門家も「長期的な雨水浸透への耐久設計の甘さ」「排水管の配置不備」「夜間監視体制の緩さ」を指摘しています。暴雨は引き金に過ぎず、構造的な脆弱性こそが根本原因だという見方が広がっています。

 この事故は「孤立した事例」ではなく、中国全土で続発するインフラ問題の縮図でもあります。2025年の大型連休中には各地で交通事故や設備トラブルが相次ぎ、祝日の明るい空気が一転しました。10月4日、湖北省恩施州利川市では車両暴走事故で5人が死亡、8人が負傷。広西玉林市では高速道路で玉突き事故が発生し、2人が死亡しました。さらに湖南省張家界市の天門山ではロープウェーが電気系統の不具合で停止し、観光客が宙づり状態で約1時間取り残されました。幸い全員が救出されましたが、設備老朽化や過負荷運転の問題が浮き彫りとなりました。

 同じ連休中、青海省祁連山やチベット自治区のチョモランマ東坡では暴風雪が発生し、登山客やハイカーなど数百人が山に取り残されました。救助隊の懸命な活動によりほとんどが無事救出されましたが、観光地の危機管理体制の脆弱さが改めて露呈しました。

 こうした事故は単発のトラブルではなく、近年の中国インフラの構造的欠陥を象徴しています。2024年5月1日未明、広東省梅州市の梅大高速道路では豪雨の中で道路が突然崩落し、走行中の車23台が転落・炎上。48人が死亡、30人が負傷する大事故となりました。政府は「極端な降雨と地質構造が複合的に作用した」と説明しましたが、建設からわずか10年足らずの道路が崩壊した事実に、国民の怒りは収まりませんでした。メディアは「手抜き工事」「監督不十分」「責任の所在不明瞭」と伝え、ネット上ではこの言葉が再びトレンド入りしました。

 さらに2020年1月、青海省西寧市中心部のバス停前で地面が突然陥没し、停車中のバスが乗客ごと深さ10メートルの穴に落下しました。続いてガス管が破裂し爆発、10人が死亡、17人が負傷しました。原因は「湿潤性黄土」の地質と老朽化した地下空洞の存在でした。専門家は「急速な都市開発と老朽インフラの放置が重なり、地下の『空洞化』が進む都市は他にも多数ある」と警鐘を鳴らしました。

 これらの事例と今回の百色高速崩落を重ねると、根本的な構図は明白です。極端な気象が引き金でも、本質的な原因は「施工の質と管理の不足」にあります。信頼性の高い排水システム、設計の余裕度、定期的な点検体制――どれか一つが欠ければ「人災」は避けられません。

 中国では「天災」という言葉がしばしば免罪符のように使われますが、「毎回「暴雨」のせいにしても、本質は変わらない」との声がSNS上に絶えません。「高速道路が雨で壊れるのは自然現象ではない。これは監督の問題だ。」という投稿は、多くの国民の実感を代弁していました。度重なる崩落や陥没は、都市インフラの劣化だけでなく行政システムそのものから起きる弊害を映し出しています。極端気象が常態化する今、インフラに求められるのは「耐える力」ではなく、「回復力」です。現場対応の速さを誇るのではなく、事故を未然に防ぐシステムこそが評価されるべきです。

 百色高速に刻まれた30メートルの亀裂は、地面の傷跡ではなく、社会の構造的なひずみを映す「裂け目」です。この裂け目を塞ぐためには、一時的な補修ではなく、「技術・監督・透明性」を柱とした制度改革が必要です。

 「天災」ではなく「人災」を直視する勇気、それこそが、次の連休を再び悲劇で終わらせないための唯一の道ではないでしょうか。

(翻訳・吉原木子)