中国では睡眠時無呼吸症候群の患者が急増しており、推計で1億7000万人超が罹患しているとされています。そのうち6000万人以上は中等度から重度の患者で、突然死につながる危険性も指摘されています。新型コロナ禍で有病率は3倍以上に跳ね上がり、若年層の突然死が相次いで報じられるなど、深刻な社会問題となっています。

睡眠時無呼吸症候群とは

 中国の『都市快報』の報道によれば、医学専門家の毛雪鳳(マオ・シュエフォン)は、睡眠時無呼吸症候群とは、「睡眠中に呼吸が止まったり、弱まったりする症状を指す」と説明しています。

 医学的には「10秒間呼吸が止まる」ことを呼吸停止と定義し、7時間の睡眠中に30回以上の呼吸停止が確認されれば、睡眠時無呼吸症候群と診断されます。短期的には睡眠の質の低下、日中の強い眠気、注意力の低下、記憶力の減退などを招き、長期的に続けば心血管や脳血管疾患のリスクを高め、最悪の場合は突然死に至ることもあります。

 現在、睡眠時無呼吸症候群は全身性疾患と広く認識されており、高血圧の主要な危険因子の一つとされています。また、冠動脈疾患、心不全、不整脈、糖尿病とも深く関連しており、突然死や交通事故を引き起こす重要な要因ともなっており、すでに深刻な社会問題となっています。

中国で極めて高い発症率

 国際的な学術誌に掲載された複数の研究によると、30歳から69歳の成人層において、世界全体で約9億4千万人が睡眠時無呼吸症候群に罹患しており、そのうち1億7千万人超が中国の患者であり、世界最多となっています。このうち約6600万人は治療が必要な中等度から重度の患者とされています。

 最近では、54歳の中国の俳優で映画監督でもある黄磊(ホアン・レイ)が、バラエティ番組で睡眠時に持続的気道陽圧呼吸療法装置(CPAP)をつけて眠る姿が公開され、大きな注目を集めました。「黄磊が呼吸機をつけて寝る」という話題はSNSで検索急上昇ワードとなりました。黄磊は長年深刻なイビキに悩まされ、夜間に呼吸が止まる症状があり、人工的に気流を供給する呼吸機の助けを必要としていると明かしました。

 南京市の泰康仙林鼓楼(タイカン・センリン・コロウ)病院の耳鼻咽喉科・頭頸部外科の副主任医師を務める尹宏友(イン・ホンヨウ)は、黄磊のような重度のイビキは「閉塞性睡眠時無呼吸症候群」の典型であると指摘しました。この疾患では、睡眠中に10秒以上の呼吸停止が繰り返され、朝起きたときに口の渇きや頭痛があり、日中の強い眠気を伴うのが特徴です。長期間にわたる脳の低酸素状態は高血圧、心臓病、脳卒中を引き起こす危険があり、夜間突然死のリスクも高めます。呼吸機を使用していることから、黄磊の症状がかなり深刻であることがうかがえます。

 黄磊は長年イビキに苦しみ、年齢を重ねるにつれ睡眠時無呼吸のリスクを懸念していました。呼吸機は気流を持続的に送り込み、呼吸を安定させることで脳の酸素不足や心臓への負担を防ぎます。歌手の胡海泉(フー・ハイチェン)、王栎鑫(ワン・リーシン)、元体操選手の楊威(ヤン・ウェイ)も同様に呼吸機を使用して眠っていることを明かしています。

 2023年10月12日には、オリンピック体操金メダリストの楊威(当時44歳)が「最近イビキをかくようになり、医師からは呼吸道に異常があり空気が取り込めていないと言われ、睡眠時には呼吸機が必要だ」と告白しました。楊威は「睡眠中に6分間息ができなかったことがあり、とても危険だ。もしあと少し長く息が止まっていたら命にかかわっていたかもしれない」と語っています。

 女優の陳喬恩(チェン・チャオエン、46歳)もまた、イビキのため検索ワードに上がったことがあります。彼女は「自分は深刻な睡眠時無呼吸症候群で、深い眠りの間では1時間に25回も呼吸が止まり、1回が50秒以上続くこともあるため、手術を受けざるを得なかった」と打ち明けました。

 ネット上では次のような声が相次ぎました。
 「黄磊まで呼吸機を使い始めたのか。本当に怖い。イビキが大きいのは熟睡しているのではなく、窒息死の危険があるということ。睡眠障害はもっと重視すべきだ」
 「私の夫も睡眠時無呼吸症候群で心肥大を併発し、毎晩呼吸機をつけて寝ている」
 「私も35歳で呼吸機を使っている。もう1年になる」
 「父は去年、睡眠時無呼吸症候群が原因で亡くなった」
 「自分も寝ていると突然呼吸が止まって目が覚める。いつか本当に死ぬのではと不安だ」

新型コロナ禍で中国患者が急増

 2025年5月に発表された医学研究によると、中国における閉塞性睡眠時無呼吸症候群の有病率は、2000年から2005年の8%から2021年から2024年には27%へと上昇し、3倍以上に増加したとされています。

 こうした背景から、中国のネットユーザーの中には「劣質な新型コロナウイルス(COVID-19)ワクチンが患者急増の原因ではないか」と疑念を抱き、「今は寝ている間に亡くなる人が以前より増えた。ワクチンを接種したせいだ」との書き込みも見られます。

若年層の突然死が社会問題に

 現在、中国のSNS上には「若い世代の突然死が増えている」という情報が数多く出回っています。中国メディア『閃電新聞』の最近の報道によると、中国で毎年発生する突然死のうち、43%が若者だといいます。

 動画投稿アプリ「ティックトック」の配信者「淄博殯葬公墓陵園老劉(ズボー・ビンザン・コウムー・リンユエン・ラオリウ)」は7月25日に公開した動画で「火葬場が今一番受け入れているのは誰だと思う?老人ではなく、80年代生まれや90年代生まれだ!夜勤は突然死や徹夜、長時間労働で亡くなった若者ばかりを迎えに行っている。次はお前かもしれない!突然死はニュースではなく、毎日燃やしても追いつかない若者だ!」と強い口調で語りました。

 同じくティックトック配信者の「李建軍(リー・ジエンジュン)」は5月14日の動画で「今は心血管や脳血管が原因で突然死する人がどんどん増えている!20代の若者から60代の高齢者まで珍しくない。公園を散歩していて、歩きながら突然倒れて亡くなる人もいれば、麻雀卓で遊んでいてそのまま亡くなる人もいる。夜眠っていて、そのまま帰らぬ人になる人もいる」と述べています。

 睡眠時無呼吸症候群の有病率急増には他の要因も関与している可能性があります。例えば人口の高齢化や肥満率の上昇などです。新型コロナワクチン接種と睡眠時無呼吸症候群、あるいは突然死増加との間に実質的な因果関係があるかどうかを証明するには、厳密な疫学調査が必要です。現時点では、そのような高品質の研究結果は公表されていません。

(翻訳・藍彧)