2025年10月1日、中国では「8日間の大型連休」が始まりました。全国各地の観光地は例年以上ににぎわいを見せ、延べ8億人以上が旅行に出ると見込まれています。しかし、連休初日から高地の観光地で大雪が降り、高速道路では深刻な渋滞が発生するなど、旅行者や観光地の運営側に大きな試練が押し寄せました。新疆・カナス湖、チベット・ナムツォ、青海・日月山などでは紅葉シーズンのはずが一転して「雪国」と化し、一方で全国の高速道路出口の交通量は過去最高を記録しました。通常9時間で移動できる行程が21時間に延びる例もあり、電気自動車の充電スタンドには長蛇の列ができました。異常気象と車両増加が重なり、連休の安全な移動が社会的な焦点となったのです。

 新疆のカナス湖は例年、秋の紅葉が観光客を魅了しますが、今年は連休初日に思いがけない大雪に見舞われました。9月30日正午からアルタイ地区の阿禾公路で雪が激しく降り出し、一面が真っ白に覆われ、複数の自家用車が路面凍結で立ち往生しました。陝西省から訪れた旅行者は「突然の大雪で車が動けなくなり、翌日午前2時にようやく市街に戻れた」と語ります。午後8時半時点で積雪は足首まで達し、凍結した道路には百台以上の車が列をなし、待機中には追突事故も発生しました。幸い大きなけがはありませんでしたが、カナス湖景区公安はただちに阿禾公路の通行を禁止し、すべてのトレッキングルートを封鎖しました。景区管理側は「今年は予想以上に冷え込みが早く、一部の高リスク区域を事前に閉鎖していた」と説明し、スタッフは除雪作業に追われました。類似の雪害はサイリム湖にも及び、夜間に雪で車が次々に滑走、除雪車が出動し交通規制が敷かれました。

 チベットのナムツォ湖畔(標高4718メートル)でも、10月1日朝から大雪が降り続きました。湖周辺の山々は白銀に覆われ、車は減速しながら慎重に走行しています。景色は「仙境のようだ」と評されました。雪は午前中いっぱい降り、積雪は数センチに達し、気温は氷点下まで下がりました。強風により高山病の症状が悪化する人も多く、景区は医療スタッフを増派。過去の大型連休ではほとんど雪が降らなかったことから、今年は異常気象によって「冬の到来」が早まったとみられます。雪景色を喜ぶ観光客がいる一方、防寒装備の不十分な人の中には軽度の凍傷を負う例も出ました。通行止めは行われませんでしたが、防寒着が必須となりました。

 青海の日月山では「秋の初雪」が観光客を迎えました。前夜からの小雪は翌朝まで続き、草原に薄く雪が積もり「雪の中秋」を演出しました。気温は数度まで下がったものの路面に積雪はなく、交通は順調でした。スタッフによれば降雪は営業に影響せず、観光客数は平日の1.3倍に増加。ショールやアウトドア用の防寒具は飛ぶように売れ、観光客は「美しくて感動的」と語りました。翌日には雪が溶け再び緑が戻ると予想されています。

 東北の黒河市でも10月1日に霙(みぞれ)が降り、街の各所で初雪が観測されました。地元では霜害と寒波の警報が発令され、最高気温は6〜8℃、最低気温は氷点下3℃に達しました。市民は「黒河は秋を飛ばして冬に入った」と冗談交じりに語り、「朝は厚着しないと鼻水が出る」と笑っています。中露国境観光で人気の地域ですが、寒さのため屋外活動は縮小され、室内観光へのシフトが目立ちました。

 一方、高速道路の渋滞も深刻でした。交通運輸部の統計によると、10月1日の全国高速道路出口の交通量は528.9万台に達し、前年比12.5%増で10月大型連休史上を更新しました。連休全体では日平均5650万台、自家用車が9割を占める見込みです。10月1日から8日までの「無料通行政策」が出行を刺激しましたが、その分渋滞を悪化させました。深圳の市外へ向かうルートでは7時間の行程が15時間を超えても省境を越えられず、広州白雲区では1時間経っても市外に出られませんでした。長三角の京滬高速(北京と上海を結ぶ幹線道路)では杭州から泰安まで通常9時間の行程が21時間に延び、臨沂サービスエリアは「臨時キャンプ場」と化しました。江蘇全域でも流量は限界を超え、崇明トンネルでは5時間以上立ち往生。電気自動車ユーザーにとっては「充電不安」が一層深刻化し、国家電網の充電スタンドでは4時間待ち、500キロの行程に11時間かかる例もありました。SNS「X」にはリアルタイムで渋滞動画が投稿され、「高速道路が駐車場化した様子」や「原因不明の渋滞」が拡散されています。

 さらに南方では豪雨や台風の影響が残り、「氷と火の二重局面」となりました。陝西中南部や四川盆地、重慶などでは豪雨が相次ぎ、土石流や地質災害のリスクが高まり一部道路は寸断。黄淮から江淮北部でも大雨が続き、黄山や九寨溝の観光客は大幅に減少しました。華南沿岸は台風「台風20号」の余波で、海南や広西沿岸におおよそ秒速21〜33メートルの強風が吹き荒れ、航空便の遅延も発生しました。北方の大部分は晴天に恵まれましたが、気象局は「連休の天気マップを確認し、旅行保険をかけるように」と呼びかけています。

 こうして2025年の国慶中秋連休初日、中国各地はまさに「寒さと暑さの両極端」となりました。北方では観光客が思いがけない雪景色に感動し、南方では豪雨や台風、長時間の渋滞に苦しみました。この大移動は市民の忍耐力を試す一方で、インフラや緊急対応力の脆弱さも浮き彫りにしました。

(翻訳・吉原木子)