10月1日は中国共産党のいわゆる「建国記念日」ですが、多くの中国市民の間では「国傷日(国の悲しみの日)」とも呼ばれています。中国共産党の建政から、今年で76年を迎えました。政府は盛大に祝賀行事を行う一方で、一般市民の生活は依然として苦しく、その落差が鮮明になっています。
ネット上に投稿された映像によると、この日、北京では厳重な警戒態勢が敷かれました。長安街の一部は完全に封鎖され、警察官が至る所に配置されました。市民が撮影した動画には、道路に車が一台も走っておらず、天安門東駅や天安門西駅では列車が停車せずに通過している様子が映っています。午前6時10分の時点ですでに多数の警察官が配備され、数メートルおきに警官が立ち並ぶ光景が見られました。
撮影者は「長安街には車が一台もない。人道にも警察が立っている。まるで弔いのようだ。祝日の雰囲気は全くない。共産党が最も恐れているのはこうした記念日だ。悪事を重ねてきたからこそ、心にやましさがあるのだ」と語りました。別の映像には、中国本土のある都市で男性が橋の欄干に並べられた赤い旗を次々と引き抜き、地面に投げ捨てて抗議する姿も記録されています。
一方、共産党上層部は華やかな祝賀行事を演出しました。9月30日夜、新華社は「人民大会堂の宴会場には光があふれ、約800名の国内外の来賓が参加した」と報じました。習近平国家主席も出席し、「民族の復興」「強国の夢」を強調しました。これに対して市民からは、「高官たちの顔はみなこわばっている。王毅は仏頂面、李鴻忠は口を尖らせている。目を閉じる者や、白目をむくような表情を見せる者、奇妙な笑みを浮かべる者、怒りの表情を見せる者までいる。祝賀というより末期的な集まりに見える」といった揶揄の声が上がりました。
天安門広場では例年通り国旗掲揚式が行われ、各地の広場や通りには赤い旗が翻り「繁栄が演出されました。しかし、一般庶民の声は全く異なります。
福州で職探しをしている蔡さんは「ニュースでは統一や復興ばかり強調しているが、私が一番心配なのは連休明けにどこで仕事を見つけられるかだ」と《追光者》の取材に語りました。浙江省温州の劉さん(38)は半年前に部品工場を解雇されました。「100件以上履歴書を出したが、ほとんど返事もない。まれに面接があっても給与は10年前より低い」と話し、「強国や統一を願う気持ちはあるが、今はただ安定した職が欲しい」と付け加えました。
重慶の旧市街で小さな飲食店を営む周さんは「コロナ後も商売は回復していない。国慶節なのに客は少なく、皆節約している。従業員も辞めさせ、私一人で店を支えている。社会保険料の追納を迫られているが、家賃すら払えないのにどうしろというのか。夢など語る余裕はない」と嘆きました。
国内の抑圧的な空気とは対照的に、海外では抗議活動が行われました。9月30日、中国民主党国際連盟の代表である民主活動家、界立建氏は、米ロサンゼルスで行なわれた中国総領事館前でのデモの様子を動画で公開しました。映像には、数十人の参加者が「十一陥落日 中共暴政を終わらせろ」と書かれた横断幕を掲げ、「独裁を打倒せよ! 民主を! 自由を! 人権を!」と声を合わせる姿が収められています。「共産党は必ず滅び、自由は必ず勝つ! 習近平を裁け! 中共のない新しい中国を!」というシュプレヒコールも響きました。
中国共産党は長年にわたり、国内で言論と信仰を弾圧し、異議を唱える人々を迫害してきました。さらには良心の囚人や信仰者から強制的に臓器を摘出するなど深刻な人権侵害も行っています。国外にも手を伸ばし、「秘密警察拠点」を設置し、海外在住の中国人を監視・弾圧しています。こうした行為は国際社会に広く知れ渡るようになり、いまや中共は世界で「街を横切るネズミのように、誰からも嫌われる存在」と呼ばれ、各国から非難の的となっています。
(翻訳・吉原木子)
