「この2年でご飯すら食べられない人が出てきた。」上海で配車サービスを運営しているあるドライバーは、車内でそう嘆きました。中国経済が下落し続ける中、新たに市場に参入する場合に障害となる要因が低く、労働量の度合いが高い「プラットフォーム経済」の仕事――例えば配車サービス、フードデリバリー、宅配業は、大量の失業者や地方からの出稼ぎ労働者にとって最後の選択肢となっています。しかし、供給量が爆発的に増加したことで業界の利益は大幅に削られ、多くの従事者がかつてない存続の危機に直面しています。車両をまとめて管理する人から、かつてスポーツ選手だった人まで、配車サービスのドライバーたちの実情は、経済困難の時代を象徴し、最も生々しく映し出されています。
あるネットユーザーは9月28日、タクシーを利用した際にドライバーと交わした会話の動画を投稿しました。ドライバーは、この2年で商売が著しく悪化したと語ります。昨年の旧正月期間には、友人と運営しているタクシー会社の数十台の車のうち半数の営業を休止せざるを得なくなり、わずか1か月で420万円(20万元)近くの赤字を出したといいます。以前なら1台あたり月に4万2000円(2000元)の利益があったのに、今年はそれすらなくなり、逆に損失を自腹で補うしかない状況だと打ち明けました。
さらに彼は、地方から上海に出てきた人々の中には、持参した6万3000円(3000元)ほどの生活資金をすぐに使い果たしてしまい、車を貸してほしいと跪いてまで頼む人もいると話しました。その人たちは故郷へ帰るための交通費すらなくなり、上海で生き延びるしかないのです。こうした社会の片隅に潜む現実は、多くの人に分かりにくいものだと訴えました。
別のネットユーザーによれば、上海でタクシーを運転する出稼ぎ労働者の多くが、寝泊まりも食事も車の中で済ませ、1日十数時間運転し続けているといいます。なぜなら、彼らには部屋を借りるだけの余裕すらないからです。彼らは「たとえ1時間でわずか3百円(15元)しか稼げなくても、故郷で仕事がないよりはましだ」と口にします。さらに、一部の悪質な仲介業者は「部屋を借りる手伝いをする」と偽って、わずかな所持金を騙し取り、警察に訴えても取り合ってもらえないケースが多いといいます。
また9月28日には、別のネットユーザーが自身の体験を語りました。彼が購入した原付バイクを、30代半ばの配車サービスのドライバーが自宅まで運んでくれた際に、道中でさまざまな話をしたそうです。ドライバーは、毎日12時間ほど働いていると話しました。しかし貨物輸送の正式な許可証を持っていないため、度々、罰金を科され、2021年以降すでに数十万円相当(数万元)を支払っているというのです。そのドライバーは古いスマートフォンを使っていて、ナビゲーションが頻繁に誤作動を起こすとこぼしました。
このようなエピソードは決して珍しくありません。配車サービスやフードデリバリー、宅配といったプラットフォーム経済の仕事は、経済不況とリストラの波のなかで、多くの人にとって唯一残された逃げ道となっています。低い参入障壁や自由な労働時間が魅力である一方、仕事の重労働で、保障は少なく、収入も不安定で、長期的には身体や生活を消耗させるのが現実です。
9月27日には、さらに別のネットユーザーが、一人の元スポーツ選手の転身を紹介しました。その男性は「氷果193」という名前でネット活動をしていました。しかし、実は、上海男子バレーボールの元選手で国家一級の選手資格を持ち、かつてチームが全国優勝を果たしたこともある人物でした。身長193センチという体格は、バレー選手としては突出した強みではありませんでしたが、センタープレイヤーとしてプレーし、輝かしい経歴を持っていました。
しかし、引退後の道のりは険しいものでした。彼によると、全国優勝経験を持つ選手でさえ、引退後は銭湯で客にマッサージをして生計を立てることがあるといいます。これまでに、マクドナルドの店長や広告会社の営業などの職を経て、自ら開業したチェーン店も失敗に終わりました。どん底の時期にタクシー会社の仕事を見かけ、「車の運転が好きだから」と始めてみたものの、それは長く続けられる仕事ではありませんでした。
その後も職を転々とし、コロナ禍中には失業。封鎖解除後に配車サービスを始め、夜間のシフトを選んで仕事し、ほかにも、昼間はライブ配信活動をして生計を補っています。
企業経営者から日雇い労働者へトップアスリートから夜勤ドライバーへ――異なる背景を持つ人々が、同じように生活のためにプラットフォーム経済に流れ着いています。彼らの現状は、単なる個人の転落や選択ではなく、経済が低迷する中での社会全体の弱さと無力感を浮き彫りにしているのです。
(翻訳・吉原木子)
