広東沿岸では、超大型の台風18号が、刻一刻と接近しています。中央気象台の最新予報によれば、24日午後から夜にかけて、広東省台山から、湛江にかけての沿岸に上陸する見込みで、その勢力は依然として、強い台風クラスに達するとされています。風速は最大で17級(秒速58メートル)に及ぶとされ、すでに現地では、台風の前触れのような不安と緊張が、空気を覆っています。
23日夜以降、広東省防災当局は、防風緊急対応を最高レベルのⅠ級に引き上げ、休校、操業停止、工場の生産中断、公共交通の運行停止、商業施設の営業停止といった措置を、一斉に実施しました。街の生活は突然中断され、都市機能は一時的に凍りついたような状態です。省内ではすでに100万人以上が、安全な場所へ避難させられ、各地の緊急対応チームや排水ポンプ設備、非常用発電機が待機しています。水資源を管理する当局は、降雨の合間を狙い、ダムの放流を行い洪水のピークに備えていますが、「風・雨・潮・洪水」が同時に襲来する、複合災害への警戒が、繰り返し呼びかけられています。沿岸の低地では高潮や内水氾濫の恐れが、現実味を帯びてきました。
街の光景も一変しました。広州や珠海、陽江などの都市では、高速道路や都市間道路が次々と封鎖され、広州や深圳の地下鉄、都市間鉄道も夜には運行を停止しました。海南島と本土を結ぶ、瓊州海峡の三つの港もすでに全て閉鎖され、船舶は一隻も出港していません。空港では大規模な欠航が相次ぎ、広州白雲国際空港では大量の便がキャンセルとなり、広大なターミナルは一時的に人影もなく、静まり返った空間が広がりました。一方、深圳宝安国際空港では職員たちが台風に備え、駐機中の航空機の車輪をロープで固く縛り付ける作業に追われていました。巨大な台風の前に、空港は異様な緊張感に包まれています。夜が更けると市内は急速に静まり返り、車の数は減り、商店のシャッターは次々と下ろされ、貼り紙には「台風のため休業」とだけ簡潔に書かれ、風に揺れていました。
一方で、市民たちは自らの方法で備えを進めています。広州の天河地区や天河北地区のスーパーでは、野菜や米、乾物などが次々と棚に並べられ、住民たちは買い物カートを押しながら、列を作って精算しています。深圳の市場では明らかに購買量が増えました。各家庭では窓枠の隙間をチェックし、ベランダの植木鉢や家具を室内に移動させ、モバイルバッテリーや懐中電灯、飲料水や乾パンがテーブルの上に整然と並べられています。
海辺ではさらに緊迫感が漂っています。潮風は湿気を含み、しょっぱい匂いが鼻をつき、並木は強風にあおられて、不規則に揺れています。漁港では全ての漁船が帰港し、漁師たちはロープを幾重にも結びつけて船体を固定し、静まり返った港には波が突き上げる音だけが響いていました。沿道の商店は急いで看板や提灯を外し、ガラス窓には大きなテープに貼られ、次の一撃に備えていました。
夜になると、街全体が息を潜めたかのような緊張に包まれました。ビルの間を吹き抜ける風の音が絶え間なく響き ます。街灯の下には誰もおらず、静まり返った道路にただ風が吹きつける音だけが残りました。SNSには「窓の外の樹が狂ったように揺れている。吹き付ける風の一瞬一瞬を数えている自分がいる」、といった書き込みが投稿され、遠くの灯台の光や赤く点滅する、警告灯の映像も共有されています。
台風18号は人を待たずにやって来ます。今この瞬間の広東沿岸は、抑えきれない不安と希望の狭間で、呼吸を止めたかのような状態にあります。避難所へ向かう群衆の列、閉ざされた窓、暗くなった街道――その一つひとつが台風に抗う最後の砦となっています。誰もが嵐の到来を前に身を固め、ただひたすらその瞬間を待ち続けています。
(翻訳・吉原木子)
