最近、中国国家統計局が最新の失業率データを公表しました。それによりますと、8月の全国都市部における、学生ではない16歳から24歳の若者の失業率は18.9%に達し、7月の17.8%から1.1ポイント上昇しました。これは、若者5人に1人が失業している計算で、2023年12月に統計局が新たな基準で公表して以来、最も高い水準となりました。若年層の雇用環境が一段と悪化している実態が改めて明らかになりました。

 こうした傾向は突発的なものではありません。今年4月の春季就職シーズンでも失業率は改善せず、その後も上昇が続いており、中国全体の雇用市場に不安が広がっています。25歳から29歳の失業率も7月に6.9%へ上昇しており、30歳から59歳は比較的安定しているものの、雇用の圧力は幅広い世代に及んでいます。

 国家統計局は2023年末から調査基準を見直し、学生を除いた年齢層ごとの失業率を公表しています。16〜24歳、25〜29歳、30〜59歳の区分に分けることで、若者の就業実態をより正確に反映できると説明しています。教育部によれば、2024年の大学卒業生は1179万人に達する見込みで、前年から十数万人増えて過去最多を更新するとされます。この膨大な人数が一斉に労働市場に参入することで、雇用難が一層深刻化しています。

 にもかかわらず、当局や公式メディアは報道において、慎重な姿勢を崩していません。失業率の悪化が社会的関心を集めるなか、多くのメディアは数値を淡々と伝えるにとどめ、詳しい分析を避けています。これは最近強化されている「経済悲観論」への取り締まりと関係しているとみられます。

 そうした状況下で注目を集めたのが、市場で廃棄された野菜を拾って持ち帰り、食費を切り詰めようとする若者の姿です。広西チワン族自治区の柳州市にある海吉星市場では、夜9時から10時頃になると若者が集まり、商人が捨てた野菜を持ち帰る様子が動画に投稿され、大きな反響を呼びました。北京の新発地市場など大規模な青果市場でも、長距離輸送トラックのそばで廃棄された果物を拾う若者の姿が見られています。こうした行動は中国語で「拾菜(捨てられた野菜を拾うこと)」と呼ばれ、SNSでは「節約生活の新しいスタイル」として話題になりました。当初、公式メディアはこれを「節約になるだけでなく友人もでき、環境保護にもつながる若者の新しいライフスタイル」として称賛していました。しかし、現実を実際より良くみせているとの批判が広がり、関連動画は「不適切な内容」として削除される動きに変化しました。当局はまた、商人に対し廃棄された野菜を速やかに処理するよう指導しました。これらの事から、拾菜が失業問題との結びつきに発展することを避けたい当局の思惑が浮かび上がってきています。

 一方、秋季の就職シーズンを迎えた各地の大学では、厳しい就職活動が繰り広げられています。遼寧省や黒竜江省ハルビンでは、数十万人規模の学生が数百人の求人枠を争う状況が見られました。北京の華北電力大学では就職説明会が始まると、わずか30分で千人収容の講義室が満室になる様子も報じられています。就職活動は「宝くじを引くようなもの」と揶揄されるほど不確実性が高まっており、若者の不安は増しています。

 そうしたなかで「全職子女」と呼ばれる新しい生き方を選ぶ若者も登場しています。これは実家にとどまり、両親の生活や介護を担う代わりに毎月一定の生活費を受け取るというものです。SNS「小紅書」には全職子女の日常を発信する投稿が増え、「親を安心させられるし、自分も無収入ではない」と肯定的に語る若者がいる一方、「高齢者の定年延長や、企業が求める労働力と、働きたいと考える人々の極端な不均衡による必然的な産物だ」と批判する声も上がっています。専門家は、新型コロナ禍以降に拡大した現象だと指摘し、家庭に経済的余裕があれば親が子に生活費を与えてでも同居を望み、生活を支え合う傾向が強まっていると分析しています。また定年延長政策で中高年が労働市場にとどまり続けており、若者の雇用機会が削がれていることも背景にあるとみられます。

 社会では、こうした「全職子女」を中国の雇用難の象徴と見る声が多く、若者のキャリア形成や社会保障制度によってもたらされた悪影響として、映し出されてしているとの指摘があります。「親への依存だ」と批判する見方もあれば、「従来のニートとは違い家庭で役割を果たしている」と理解を示す見方もあります。いずれにせよ、失業率が過去最高を更新するなか、「市場で廃棄された野菜を拾う若者」や「全職子女」といった現象は単なる個人の選択ではなく、経済不況と、若者が失業するという社会構造がもたらした必然的な結果として注目を集めています。

(翻訳・吉原木子)