中国・貴州省で深刻な集団食中毒事件が発生し、100人を超える学生が被害を受けました。患者の一部は発熱や下痢にとどまらず、肝腎機能の損傷、結石、腎盂拡張、さらには吐血や血便といった重い症状を示しています。当局が情報を封鎖したため、患者の親族は「神様(中国語で老天爺と呼ばれる存在)、どうか子どもたちを救ってください」と涙ながらに訴える映像をネットに投稿しましたが、その一部は削除されたといいます。

 事件は貴州省遵義市習水県で起きました。インターネット上に拡散した動画には、地元の食品チェーン「美加楽(メイジャーレ)」で販売されたサンドイッチを食べた後、体調を崩して病院で点滴を受けている子どもたちの姿が映っています。

 保護者によると、子どもたちは入院から数日経っても症状が改善せず、逆に悪化しました。結石や腎盂拡張、吐血といった深刻な症状が出て、肝腎機能の障害が確認されたケースもあるといいます。発生直後、保護者は地元政府に助けを求めましたが、迅速な対応は得られませんでした。やむなく動画をネットに投稿し、社会に助けを求めたものの、一部の映像は削除されました。

 ある保護者は動画の中で「神様、誰がこの子どもたちを救ってくれるのですか?」と涙ながらに訴えました。別の保護者も「どうか皆さん助けてください。私たちにはどうしたらいいのかわかりません。習水全体でサンドイッチによる食中毒が100人以上出ていますが、誰も対処してくれません」と語っています。

 事件がネット上で大きく広まる中、9月21日になってようやく中国共産党の機関紙・新華社が「疑似食中毒事件」として報道しました。しかし報道では「貴州省遵義市習水県で発生」とだけ記され、具体的な発生時点には触れていませんでした。記事によれば、入院患者は「習水県麦可美加楽食品工場」が製造したサンドイッチを食べた後、肝腎機能の異常などを示したとされています。

 この食品工場は習水県内に複数の店舗を展開しており、問題のサンドイッチは200個あまり販売されました。そのうち一部は回収されましたが、多くはすでに消費者の手に渡ったといいます。現在、患者の多くは習水県人民医院に入院しており、症状の重い患者は遵義市や重慶市の病院に転送されています。

 インターネット上の目撃情報によれば、「すでに透析が始まった患者がいる」「このような中毒は肝臓や腎臓が直接やられる」「昨日、市の病院で吐血や血便をしている子どもを見た。本当にかわいそうだ」といった声が上がっています。さらに「これほど深刻な事件が省外で報道されないのはなぜだ」「当局はなぜ重大事件を公表しないのか」と政府の情報統制を批判する投稿もありました。また「残っている原材料が隠される前に、工場に行って全て記録し保存すべきだ」という呼びかけも出ています。

 9月21日、遵義市食品薬品安全委員会事務局は事件について公式通報を発表しました。その内容は次のとおりです。
 「9月17日夜9時30分、習水県政府は県衛生健康局からの報告を受け、患者が『最近サンドイッチを食べてから発熱、腹痛、下痢などの症状を呈した』と訴えていると知りました。調査の結果、患者が食べたサンドイッチは『習水県麦可美加楽食品工場』が製造したもので、9月15日から17日にかけて県内の直営店で販売され、100人を超える人が購入し、実際に食べていたことが確認されました。」
 「遵義市委員会と市政府は9月17日夜に即座に作業チームを立ち上げ、医療救護と調査を進めました。病院では緊急対応ルート(緑の通路)を設け、市と県の合同医療専門家チームを組織して診療にあたりました。また、該当サンドイッチを食べた全員に連絡を取り、診察を受けるよう促しました。9月21日午後5時現在、100人以上が入院して観察・治療を受けており、その多くは学生や児童です。症状は発熱、腹痛、下痢であり、体調は安定していると説明しています。」

 ただし、公式発表の「体調は安定」という説明とは裏腹に、保護者の証言は事態の深刻さを物語っています。

 「極目新聞」の取材に応じたある母親は、16日夜にケーキ店で購入したサンドイッチを子ども2人が食べ、翌朝から腹痛や下痢を発症したと語りました。長男はその日のうちに高熱で入院し、午後には39度を超える熱を出しました。長女も同じ症状で入院し、下痢は1日20回以上に達し、オムツを使用せざるを得ない状況でした。幸い長女はサンドイッチの卵を嫌って一口で吐き出したため、症状はやや軽かったといいます。

 別の母親・李さんは、子どもが習水県人民医院から遵義市第一人民医院に転院し「食中毒」と臨床診断されたと明かしました。検査では高感度CRPが基準値を大幅に上回り、胆のうに複数の結石と腎盂拡張も確認されました。李さんによれば、20日午後にはさらに複数の子どもが転院し、そのうち数人は腎盂拡張を確認され、1人は吐血と血便を起こしました。医師から手術を勧められたため、李さんはその日の夜に子どもを重慶市児童病院へ転院させました。21日朝には息子も血便を伴い、嘔吐と下痢を繰り返していたといいます。

 李さんは「習水県人民医院にいたとき、県の幹部、疾控センター、ケーキ店の責任者が病院に来ました。疾控センターの職員は写真を撮って記録を残し、店の責任者は治療費を全額負担すると言いました」と証言しました。しかし同時に、地元当局の幹部は彼女にSNS投稿の削除を求め、実家にまで電話して両親に削除を迫らせたとも述べています。さらに「21日の午後には政府、教育局、学校の関係者が私と面会し、『心配しなくていい、政府が処理する』と言いながら、再び動画削除を求めました」と話しました。

 今回の事件は、中国国内で改めて食品安全体制と情報公開の問題を浮き彫りにしました。当局は「症状は安定」と繰り返し強調していますが、家族やネット上の証言からは実際にははるかに深刻な被害が進行していることがうかがえます。保護者たちにとって、これは単なる食中毒事故ではなく、子どもたちの命と制度への信頼をかけた闘いになっています。

(翻訳・吉原木子)