中国各地で相次いで極端な気象が発生し、河南省許昌市や北京市、上海市では豪雨や雹など災害級の天候に見舞われ、都市交通や生活インフラ、農業生産に深刻な影響が出ました。

 9月10日未明、河南省許昌市は記録的な豪雨に襲われました。気象データによると、当日正午までに許昌市区および禹州市・長葛市など一部地域の累積降水量は160ミリを超えました。許昌国家気象観測所では1時間降水量が58.3ミリに達し、9月としては観測史上最大を記録しました。この「百年に一度」とされた大雨により、市内の主要道路の9割以上が冠水し、水深は一部で1.5メートルに達しました。地下駐車場が完全に水没し、京広鉄路の許昌区間は一時運行を停止、市全体で防汛1級の緊急態勢がとられました。

 暴雨の赤色警報が発令されると、地元当局はただちに救援活動を開始し、11日午前までに延べ3万2千人を緊急避難させ、56カ所に仮設避難所を設置しました。しかし、市内の公共交通は15時間以上にわたって止まり、七一路立交橋では冠水が2メートルに達しました。許昌市中心部の排水システムは時間雨量50ミリにしか対応できず、設計水準が大幅に不足していることが露呈しました。

 停電や断水も深刻でした。市内47の住宅団地で停電が発生し、給水ポンプ場の浸水により約60万人が水不足に直面しました。市内の病院の一部は発電機に頼って診療を続けました。SNSには、自宅のエレベーターが水に浸かった様子や、駐車場の車が浮いてしまった映像が相次いで投稿されました。

 農業への打撃も甚大です。許昌市は河南省の主要な穀倉地帯ですが、鄢陵県や襄城県を中心に秋作物58万ムー、東京ドームに換算して約8,300個分が被害を受け、そのうち9.3万ムー、同約1,300個分が全滅しました。襄城県庫庄鎮では大規模なトウモロコシ畑が水没し、ある農家は契約耕地200ムー、同約28個分がほぼ全滅、損失額は40万元を超えました畜産業にも被害が広がり、複数の養鶏場が流され、約12万羽の家禽が死亡しました。農民は「もうすぐ収穫期だったのに、すべて駄目になってしまった」と無念の声を上げました。

 一方、隣接する鄭州市でも大雨の予報が出ており、市防汛抗旱指揮部は市内全域に厳戒態勢を指示しました。9月11日には非寄宿制の小中学校と幼稚園が臨時休校となり、建設現場やトンネル、基礎工事も全面的に停止されました。

 実際、9月以降、河南省や陝西省南部、山西省南部では雨が続き、累積降水量は平年同期の8割以上増加し、地域によっては2倍に達しています。SNSには「鄭州から許昌に戻って避難したのに、結局避難所に入ることになった」という声や、「許昌はまるでベネチアだ。通勤はボートだ」という皮肉も見られました。

 同じ頃、北京や上海も極端気象に見舞われました。9月9日夜、北京は突発的な暴風雨に襲われ、雷鳴を伴う雨雲が西から東へ移動し、局地では7〜8級の突風が吹き、最大1時間雨量は30ミリに達しました。延慶区、門頭溝区、密雲区、懐柔区では雹が降り、最大で直径2センチを超えるものも観測されました。住民が撮影した映像には、地面一面が白く覆われ「まるで団子を敷き詰めたようだ」とのコメントも添えられました。

 市民の一人は「ベッドで携帯を見ていたら突然激しい音がして、外を見たら雹が降っていて、風と雷で車まで壊された」と驚きを語りました。別の人は「9月に雹なんて信じられない」と話しました。この影響で北京首都空港の多数の便が遅延し、天津に迂回着陸する便も出ました。ある乗客は「3時間も空港に閉じ込められ、最後に欠航を知らされた」と不満を漏らしました。

 その前日の9月8日午後には上海が暴雨に見舞われました。午後4時半、上海気象台は雷電・雹・暴雨・強風の4つの黄色警報を同時に発表しました。黒い雲が急速に広がり、街は真昼にもかかわらず暗闇に包まれました。宝山区や崇明区では短時間に集中豪雨となり、道路が冠水。宝山楊行地区の観測所では1時間雨量が112.5ミリに達し、局地的な記録を更新しました。

 市民からは「水が太ももまで来て、つま先立ちで歩いた」「外灘はもう限界で、足元の水がひどい臭いだった」といった声が上がりました。宝山区北部の月浦では「家の中にまで雨が流れ込んできた」と驚く声もありました。SNSには「車じゃなくて船が必要だ」「配達中に何度も雨に打たれ、まるで空から水を浴びせられているようだった」といった投稿も広がりました。

 さらに、航空機から撮影された映像には上海全体が厚い雲に覆われ、まるで災害映画のワンシーンのような光景が映し出されました。「大上海が大海上になった」という皮肉も広まりました。

 専門家は、これらの一連の極端気象は強い対流活動によるものであり、気候変動の影響によって極端な現象の頻度と強度が増していると指摘しています。許昌のように排水能力不足から大規模浸水に見舞われる都市もあれば、北京や上海のように豪雨や雹で交通や生活が混乱する事例もあり、都市の防災・減災力を根本から強化する必要性が改めて浮き彫りとなりました。

(翻訳・吉原木子)