ネパールの首都・カトマンズで9日、民衆による抗議活動が反政府デモに発展し、親中共路線を取ってきたオリ首相が辞任しました。抗議は政府によるソーシャルメディア(SNS)規制や汚職をきっかけに拡大し、共産党政権が事実上崩壊する事態となっています。オリ首相は北京で行われた軍事パレードから帰国したばかりで、中国人ネットユーザーは「中共と手を組む者の末路はいつも悲惨だ」と揶揄しています。
大規模デモ、共産党本部や政府官邸を破壊
8日から始まった大規模デモでは、警察が催涙弾やゴム弾を使用し、少なくとも20人以上が死亡しました。抗議は瞬く間に全国に広がり、「Z世代のデモ」と呼ばれる若者中心の運動へと発展しました。
政府はSNS規制について「偽情報や憎悪表現の拡散を防ぐため」と説明しましたが、多くの若者は「言論統制だ」と反発。特に30歳以下の「Z世代」が抗議の中心となり、首都の主要道路を封鎖しました。
抗議者らは共産党本部に押し入り、共産党の旗を引き下ろして焼却。政府庁舎や国会議事堂、閣僚邸宅も襲撃・放火され、街は混乱に陥りました。SNS上には、閣僚らが暴徒に捕らえられる映像や、現金がばらまかれる様子も拡散されています。
オリ首相は抗議の高まりを受け辞任を表明し、ヘリコプターで空港に移動する姿が確認されましたが、その後の所在は明らかになっていません。
親中共路線の指導者
オリ氏はネパール共産党(統一マルクス・レーニン主義派)の創設メンバーで、通算3度首相を務めました。インドとの関係よりも中国共産党との連携を優先し、習近平の主導する「一帯一路」に参加しています。8月下旬から9月初めには訪中し、上海協力機構(SCO)首脳会議や北京での軍事パレードにも出席していました。
今回の事態について、米国在住の政治評論家・唐靖遠氏は「ネパールの政変は小国の出来事に見えるが、共産党政権が一夜にして崩壊したことは北京にとって衝撃だ」と指摘。SNS規制や汚職、経済停滞といった不満が爆発した点は中国国内の状況と共通する部分があり、中南海(中共指導部)にとって「他人事ではない」との見方を示しました。
ネパールの共産主義政権が崩壊したとのニュースは中国本土のSNSでも話題となり、一部ユーザーは「自由の力が示された」「次は中国だ」と投稿。海外の華人ネットユーザーも「北京での軍事パレードに参加した直後に政権が崩壊した。今頃習近平は恐怖で震えているのではないか」「中共と友達になると碌なことがない」などとコメントしました。
著名な中国人評論家・蔡慎坤氏は自身の番組のなかで、「独裁政権が崩壊するのは、往々にして一瞬だ」と指摘しました。
(高瀬 陽一)
