中国国家統計局が発表した7月の都市部失業率(在校生を除く労働人口)は、前月から3.3ポイントも急上昇しました。ロイター通信や『経済観察報』の報道で明らかになりました。

 北京大学の張丹丹(ちょう たんたん)准教授は、就職をあきらめて家にこもる「寝そべり族」や、親の仕送りに頼る若者など、およそ1600万人を加えて計算すると、2023年3月の実際の若者失業率は46.5%に達し、政府発表の19.7%を大きく上回ると指摘しています。

移民熱の高まり

 経済の減速を背景に、中国では「共産党のいない国に行きたい」という移民志向が強まっています。

 最新の調査によると、2024年には資産100万ドル(約1.6億円)以上を持つ富裕層が1.5万人以上国外へ移住し、過去最多と記録しました。移住先としては、アメリカ、カナダ、欧州連合(EU)、シンガポール、日本、香港が人気です。

 一方、中国国内に残った中間層は、不動産不況やネット金融(P2P)の破綻に直撃され、資産価値の下落や債務超過のリスクを抱えています。将来への不安が増し、消費意欲も冷え込み、暮らし方そのものを見直す動きが広がっています。

 最近ネット上で話題になった「生活小ワザ共有」という記事では、経済的な圧力によって中国人の生活観に五つの大きな変化が生まれており、多くの人がよりシンプルで現実的な暮らしを模索し始めていると伝えています。

第一 若者の健康志向が高まる

 かつて早朝の公園で体操やランニングをしていたのは高齢者が中心でした。定期的に健康診断を受けるのも高齢層の象徴とされてきました。ところが最近は、若い世代の間で健康意識が一気に高まっています。夜更かしをやめ、外食や砂糖入り飲料を減らし、ジョギングなどの運動に積極的に取り組む姿が目立ちます。

 大学生の珠珠(じゅじゅ)さんは、いわゆる「中国流の新しい健康法」に熱心に取り組む一人です。彼女はSNS「小紅書(シャオホンシュー)」で日々の養生法を紹介しています。例えば、朝は五穀を中心としたしっかりした朝食をとり、艾草(よもぎ)で作ったハンマーを使って体のツボを軽く叩いて血行を促す工夫をしています。また、できるだけ自然に触れることを心がけ、何よりも「無駄な人間関係で消耗しないこと」が大切だと語ります。珠珠さんは「心の悩みこそ最も気血を傷つける」と強調しています。

 これまで、若者が水筒にクコの実を入れて飲むと、仲間から嘲笑されることが多かったのです。しかし今では、彼らの水筒にはクコの実だけでなく、バラやナツメ、リュウガンなども一緒に入れるようになりました。「どれか一つでも健康に良ければ」と願いながら、工夫を重ねているのです。

第二 暮らしの工夫力を磨く

 経済的な圧力を背景に、暮らしを自分の手で工夫しようとする人が増えています。

 特に自炊を始める若者が急増しています。外食を控えて家で料理を作ることで、健康面にも経済面にもメリットがあると考えられています。

 また、ちょっとした修理を自分でこなす人も増えています。小型家電の修理は高度な技術を必要とせず、根気さえあれば可能です。水道の水漏れ、エアコンの冷却不良、洗濯機の異音など、これまでは業者に依頼していた問題も、ネット上の動画や記事を参考にすれば自力で解決できることが多いといいます。

 あるネットユーザーは、友人宅のエアコンが突然故障した際、半日かけて一緒に修理に挑戦した体験を投稿しました。「生活の自衛術を身につけたおかげで、業者に払う数千円が浮き、少なくとも一回分の火鍋代は節約できた」と満足そうに語っています。自分の手で生活を支えることで、節約だけでなく達成感も得られると、多くの人が実感し始めているのです。

第三 消費スタイルは「理性重視」へ

 かつては「ブランド=体面」と考え、華やかな見た目や有名ブランドに価値を置き、「買うなら一番良いものを」という姿勢が一般的でした。お金の問題は二の次だったのです。

 しかし今では、若者から中年層まで幅広い世代で「実用性」と「コストパフォーマンス」を重視する意識が広がっています。「必要」と「欲しい」を切り分けるのが新しい消費習慣です。必要なものは複数の店やサイトを比較し、できるだけコスパを追求する。一方で「欲しい」だけのものは買わずに我慢し、その分を食生活の改善など本当に大事なことに回すという考え方が広がっています。

 北京で働く23歳の女性はこう話します。「私は北京で月4万円(2000元)あれば十分。お腹がすけば食材を買って料理し、喉が渇けばお湯を沸かして飲む。移動はバスや地下鉄を利用し、物が壊れなければ買い替えない。今年はお弁当と自家製ドリンクで、なんと20万円(約1万元)も貯まった。節約は特別なことではなく、ただ自然にやっているだけだ」

第四 備えあれば憂いなし 貯蓄志向が強まる

 「手に食糧があれば心配はいらない」という古い言葉が、いま中国で改めて重みを増しています。収入の多少にかかわらず、人々は将来に備えて計画的に貯蓄するようになっています。予期せぬ事態への備えだけでなく、将来の安心材料にもなるからです。

 ネット上には様々な「貯金術」が紹介されています。ある若者は、毎月一定額を定期預金に回し、よほどのことがない限り引き出さないようにしています。こうした習慣を続けることで、無理なくお金を貯めることができるのです。

 この若い夫婦はすでに2000万円(100万元)を貯めました。しかし彼らの夕食は驚くほど質素です。妻はスイカの果肉と皮を分け、果肉はデザートに、皮は薄切りにして唐辛子と炒め物にし、主食はご飯にほうれん草のスープを添えただけです。それでも二人は「普通の家庭が貯金するには、節約しかない」と語っています。

第五 自分への投資熱が高まる

 アメリカの投資家ウォーレン・バフェット氏は「自分への投資こそ最高の投資だ。才能を磨きなさい。それで得た力は誰にも奪えない」と語っています。

 この考えに共感する中国の若者は多く、余暇を利用して新しい知識やスキルを学ぶ動きが広がっています。オンライン講座、図書館、無料セミナーなど、学びの場を積極的に活用しているのです。自分への投資は、最も確実で賢明な選択だと考えられています。

 あるブロガーは若者に向けてこう呼びかけています。
 「あなたを救えるのはあなただけ。あなたの価値を高められるのも自分自身への投資しかない。外見に投資し、健康に投資し、頭脳に投資し、昨日よりも今日の自分を少しでも成長させることが大切だ」

(翻訳・藍彧)