毎年9月は中国で新学期を迎える季節です。しかし今年は、広東省や雲南省をはじめとする南部5省の多くの農村地域で、両親が都市に出稼ぎに出て、農村に残された大勢の「留守児童」と言われる子供たちが、学校に通えない事態に直面していると伝えられています。やむお得ない状況の中、街頭では、子供たちが抗議の声を上げる姿が見られ、中共統治下で最も幼い世代による「権利を訴える行動」として注目を集めています。

 9月5日に拡散された映像には、2日、広東省廉江市のある小学校校門前に、大勢の保護者と子供たちが集まる様子が映っていました。閉鎖された校門の前で、子供たちは声をそろえて「学校に行きたい!」と叫んでいます。ある保護者は「もう9月1日で新学期が始まっているのに、まだ門が開かない」と不満を口にしました。こうした光景は、最近では広東・雲南・貴州・広西・福建の各地にある少なくとも14の農村小学校で繰り返されています。中には、保護者に伴われて地方政府や教育局に出向き、就学を訴える子供もいます。本来なら勉強に専念すべき年齢でありながら、教育を受けたくても教育を受けられない社会の厳しさに直面せざるを得ない状況です。ネット上では多くの批判が噴出しました。「書類には“施設設備を最適な配置にする。”と書かれているが、実際には、施設設備の最適配置により子供たちが“教育を受ける権利を訴える立場”に追い込まれている。教育強国を掲げながら、最も弱い存在すら守れないのか」「農村人口の多くはすでに市街地(県城)へと移され、残っているのは取り残された人々ばかりだ。共産党は自ら火遊びをして、やがて滅びるだろう」また、日本の実話を引き合いに出す声もありました。日本のある小さな鉄道駅では、わずか一人の通学児童のために廃止が数年間延期され、その子が卒業するまで学校が存続したという話です。

 さらに多くの人々は、学校閉鎖の背景には都市化の加速、農村の空洞化、そして人口減少が深く関わっていると指摘しています。コロナ禍以降、出生率は急落し、農村の教育施設設備は急速に縮小されています。「改革開放から数十年が経っても、教育、医療、出稼ぎ農民の問題はいまだに解決されていない」というコメントも見られました。

 いわゆる「子供が農村に残留守児童」とは、両親の一方または双方が都市に出稼ぎに出て、され、祖父母などに預けられて長期間親と離れて暮らす子供を指します。報道によれば、中国本土の子供のおよそ5人に1人が留守児童とされ、その数は2013年の当局の調査時点で6,000万人を超えていたと推計されています。

 出生率の低下に伴い農村小学校は急減し、多くの留守児童は高齢の祖父母に頼りながら、遠い学校まで徒歩で通わざるを得ません。しかし都市部の学校は、親が都市戸籍を持たないため受け入れを拒否します。政府からの十分な配慮もないまま、子供たちは教育を受けられない状況と生活を強いられています。

 ラジオ・フリー・アジアは2018年1月、「留守児童問題は悪夢のように続き、悲劇は繰り返されているが、当局はいまだ目覚めていない」と題する記事を掲載しました。わずか1週間の間に雲南省昭通市と四川省叙永県で立て続けに2件の悲劇が起き、7人の子供が死亡、4人が重傷を負ったといいます。事件後、現地政府は速やかに言論統制を敷き、真相を伝えようとした記者やボランティアは次々と弾圧されました。

 これは氷山の一角にすぎません。多くの留守児童は深刻な被害を受けても、学校や地方政府、農村社会の圧力によって沈黙を強いられています。公益活動家の李知能氏は、「辺境の農村や郷鎮小学校では留守児童の割合が80%に達する場合もある。」と指摘しました。また、この様な状況の中、また、留守児童に対する性的虐待が極めて多発しています。しかし、当局の統計は存在せず、民間による調査も難しいと述べています。

 この事に対し、著名な芸術家の崔広廈氏が発言し、「特に女子の留守児童が深刻な危険にさらされている。」と強調しました。また、「彼女たちは農村の独身男性や隣人からの性的被害に遭うことが多いのです。しかし政府の長年にわたる無策の下、子供たちが両親と暮らせる機会はほとんどありません。女子留守児童の被害に関する公式データは存在せず、民間の調査も必ず弾圧される。」と訴えました。草の根の人々へ基本的権利を顧みない当局の姿勢は、すでに常態化しているのです。

(翻訳・吉原木子)