大学に学生がいなければ、それは果たして大学と言えるのでしょうか。7月、中国の多くの大学が学費を値上げした後、再び深刻な「学生不足」の問題に直面しました。広東省にある20校以上の私立大学のうち、14校が追加募集を余儀なくされました。3回の追加募集を経てなお、多くの大学が「定員割れが続いている」状態が続いています。
3度の追加募集でも定員に届かず
例えば広東省の湛江(ざんこう)科技学院では、本来の予定は7500人の募集でしたが、最初に集まったのはわずか1200人にすぎませんでした。三度目の追加募集を終えても、なお約2900人もの「欠員」が残っており、その不足の深刻さが浮き彫りとなっています。
注目すべきは、広東省のように経済的に豊かな地域でさえ、学生を確保するために三度目の追加募集ではなんと36点も合格ラインを引き下げたことです。それでもなお、広東省の14校の私立大学は定員を満たせず、合わせて3万1000人以上の学生が不足しました。
例年であれば、私立大学がどんなに苦境にあっても「体面」を保とうとし、定員割れを覚悟してでも基準を下げないことが多くありました。仮に追加募集で基準を下げても20点以内に収めるのが通例で、今年のような大幅な引き下げは異例です。今年はついに持ちこたえられなくなり、合格ラインが雪崩のように崩れ落ちました。広東でこの有様なら、他の地域も良い状況ではないことは容易に想像できます。
保護者たちも大いに悩んでいます。一方では、大学の学費が年々高騰し、年間およそ60万円を超えるところも珍しくなく、なかには160万円に達する大学すらあり、とても通わせられないと感じています。もう一方では、子どもが苦労して4年間学んでも、卒業後に就職先が見つからない現実があります。
ある保護者は我慢の限界に達し、次のように問いかけました。
「あなたたちは学校を運営しているのか、それとも金貸しをやっているのか」
しかも、このような募集難は広東省に限った話ではありません。全国の多くの地域で、同じように入学者を集められずに苦しんでいます。教師たちは夜遅くまで残業し、合格通知の電話をかけても誰も出ません。
こうした現象が起こる理由は理解できます。保護者が冷静に計算し、この投資が割に合わないと判断すれば、当然、損をする役回りを引き受けようとはしないのです。
学費は高騰の一途、教育の質は停滞
一部の私立大学は利益を優先するあまり、就職に役立たない流行だけの「名ばかりの学科」を次々に設置しています。学生たちは苦労して4年間学んでも、卒業すれば就職市場で「売れ残り」扱いにされるのが現実です。それでいて、これらの大学の学費は決して安くありません。
私立大学の年間平均学費は約60万円とされ、4年間で生活費などを含めれば総費用はおよそ400万円を突破します。これは多くの省都や地方都市で住宅の頭金に相当する金額です。
学費は高額なだけでなく、年々値上がりを続けています。ネット上のデータによれば、2025年には全国の数十校で学費が引き上げられました。
例えば上海のある華僑系の職業技術大学(技能教育を重視する4年制大学)では、2025年に芸術系専攻学科の年間約16万円値上げされ、短期大学芸術系の専攻学科でも年間約14万円の値上げとなりました。
学費がこれほど高騰する一方で、就職市場は冷え込みが続いています。そのため保護者たちは「コストパフォーマンス」をより重視するようになっています。実際、公立大学の学費は年間10万~20万円程度にとどまり、特に地方の公立大学が新設する実践的な応用型学科は、学費が私立大学の3分の1にすぎません。さらに就職の安定性も比較的高いため、多くの学生が公立の職業系短大や高等職業学校を選ぶようになっています。
保護者が教育費を「投資のリターン」として計算し、企業が「紙の学歴」ではなく「真の実力」で人材を見極めるようになったとき、バブルで生き延びてきた学校は正体を現すでしょう。
少子化がもたらす大学生源の不足 それは第一波の寒風にすぎない
現在、存続が難しくなっているのは、学費収入に依存し、拡大路線で利益ばかりを追求してきた私立大学が中心です。保護者や学生たちはすでに選ばないことで意思を示しています。
適齢期の学生が減少し続け、大学教育そのものへの信頼も揺らぐ中、結果は明らかです。もはや「学生が大学に入れてほしいと願う」のではなく、「大学が学生に来てもらうよう必死に頼み込む」時代になっています。
注目すべきは、業界関係者の予測によると、2034年までに大学生の募集人数は40%急減するという点です。これは、大学の運営目的が単に保護者の懐から学費を搾り取ることだけであるならば、少子化の影響が本格化した時、質的保証と特色に欠ける私立大学が真っ先に閉鎖の窮地に陥ることを意味しています。
私立大学はどう転型すべきか
求人サイト「智聯招聘」の報告によれば、私立大学の卒業生が得る初任給は公立大学卒業生よりも22%低く、昇進までの期間も1.5年から2年長いとされています。これが「学歴の価値が下落している」という認識をさらに強めています。もともと就職市場で不利な扱いを受けている中、こうした現実にどう対処すべきでしょうか。
ここで参考になるのが、ドイツの実践型技術大学です。こうした大学は、学生の実践能力や職業スキルの育成に重点を置き、卒業後にスムーズに社会へ出られるよう準備させています。さらに、ドイツの技術系大学の就職率は非常に高く、ある学科では30%以上の学生が科目を落とすものの、卒業生は企業に直接引き抜かれるほどです。
したがって、中国の私立大学がこのまま沈んでいく現状を変えるには、転型を急ぐ必要があります。学生たちも「大学に入学できた」ことを成功と考えるのではなく、入学後に「どのような教育を受けるのか」にこそ注目すべきなのです。
大連の大学で全教職員の給与が停止
最近、大連科技学院(だいれんかがくがくいん)が全教職員への給与支給を停止したことが明らかになり、大きな注目を集めています。
発端となったのは、学院が出した「全教職員への一通の手紙」でした。その中で、学校のすべての関連口座が、大連市中級裁判所によって、いかなる法的文書や通知も受け取らないまま凍結されたことが明かされました。その結果、7月分の給与は支給されず、新学期の運営自体が危機に直面しているのです。
ネットユーザーの中には「教育の公益的な性質が資本の利益追求によって侵食され、犠牲になるのは最終的に教師と学生の権益である」と批判する声もあります。
公開資料によると、大連科技学院は理工系の私立大学です。企業情報サイト「天眼査」のデータでは、同学院には現在2件の債務者情報があり、執行総額は約46億円(2.3億元)を超えています。さらに、過去の履歴では35件もの債務者記録があり、その執行総額は約700億円(35億元)を上回ります。直近では8月4日に「執行再開」情報が追加され、執行対象額は約26億円(1.3億元)、執行を担当するのは遼寧省大連市中級裁判所とされています。
それにもかかわらず、学校は新入生の学費を引き続き徴収しており、さらに2025年度の採用計画を公表し、専任教員、学科リーダー、学生指導員など42名の募集を行っています。
保護者が「水増しされた教育」に高額の学費を支払うことを拒み、社会が中身の乏しい大学の学位を認めなくなり、大学の財務状況が悪化すれば、本当の意味での淘汰はこれから始まるでしょう。
(翻訳・藍彧)
