企業が生き残りをかけてコスト削減に踏み切る中、解雇は多くの企業にとって避けられない選択となっています。最近では各業界から相次いで人員削減のニュースが伝えられ、社会全体に不安が広がっています。人材サービス大手・智聯招聘(ちれんしゅうしょく)の報告によると、今年は42%を超える企業が「人員削減を計画している」と回答し、2024年から8ポイント増加しました。特に不動産、金融、IT、製造の四大産業は、かつてない就業危機に直面しています。

不動産業界が最初の標的に

 なかでも最も深刻な打撃を受けているのが不動産業界です。2021年以来、中国の不動産市場は低迷を続けており、今年に入っても回復の兆しは見えていません。その結果、多くの不動産会社が資金繰りに行き詰まり、人員整理を余儀なくされています。

 市場の縮小に伴い、業界内の雇用は急速に失われています。多くの従業員が不動産を離れ、別の職に就かざるを得ない状況です。大手不動産企業に10年以上勤務していた元マーケティング部門の責任者は次のように語ります。「会社は一昨年から断続的に人員削減を進めており、私の所属部署は42人から9人にまで縮小した。同僚の多くは業界を離れ、中には配車アプリの運転手として生計を立てる人もいる」

 2024年6月、深セン市のある有名デベロッパーはわずか3時間で全社員を解雇しました。会社側は「経営環境の悪化により事業が困難となり、外部パートナーを導入するため、既存の部門を全て整理しなければならない。解雇された社員には法律に基づいて補償を行う」と説明しました。

 不動産不況の影響は住宅関連産業にも及んでいます。今年上半期、中国全土の建材・住宅設備市場の規模は約12%縮小し、18万軒の建材店が閉店、25万人以上が失業のリスクに直面しました。伝統的な家具・内装・建材などは、不動産市場の低迷とEC(電子商取引)の台頭という二重の打撃を受け、業界再編が急速に進んでいます。

「双減」政策で教育学習塾業界が泥沼に

 「双減政策」と呼ばれる教育改革は、2021年7月に中国で実施された教育政策で、小中学生の宿題負担や校外での学習塾負担を軽減することを目的としたものです。政策施行後、学校や塾は新たな規定に従う必要があり、生徒の学習負担が効果的に抑えられるよう管理が行われています。

 中国教育部のデータによると、今年6月時点で全国のオフライン学習塾の数は「双減政策」施行前に比べ約76%減少し、従事者数も87万人減少しました。

 ある教育業界の関係者は5月3日にこう語っています。
 「3年以内に99%の塾が倒産するだろう。倒産を避けたいなら、まず取り組むべきことは家賃コストを削減することだ。できるだけ低く、できれば家賃ゼロが理想だ」

 また、18年間にわたり児童向け美術教育を続け、12年間独立して絵画教室を運営してきた教師は次のように語りました。
 「先日ついに閉店した。今後3年間は芸術系の学習塾は非常に厳しく、80%が持ちこたえられないだろう。最近、書道の先生2人と美術の先生1人と話したが、彼らはいずれも7〜8年の運営経験を持っている。今年の春期講習ではそれぞれ100人以上の生徒がいたのに、夏期講習では40〜50人にまで減った。生徒数がこうして半分以下に落ち込むと、資金繰りが回らなくなり、閉鎖するしかないだろう」

 オンライン教育も例外ではありません。iResearch(艾瑞コンサルティング)のデータによれば、今年上半期、中国のオンライン教育市場は13%縮小しました。かつて人気を集めた多くのオンライン教育プラットフォームが倒産、もしくは大規模なリストラを発表しています。

 有名教育機関で教鞭を執っていた李先生は次のように語っています。
 「私たちの学校は最盛期には300人以上の教師がいたが、今では50人にも満たない。多くの教師が転職を余儀なくされ、ライブ配信による販売を始める者もいれば、企業の研修講師になる者、さらにはフードデリバリー配達員に転じる者までいる」

雇用の「避難所」とされたIT業界も打撃

 8月4日、マイクロソフトで8年以上勤務していたあるプログラマーが「今日、私はリストラされた」と語り、同社での最後の一日を撮影した動画をティックトックに公開しました。

 中国のビジネス情報サービス企業「IT桔子」の報告によれば、今年1月から7月までに中国のインターネットおよびテクノロジー関連企業で解雇された人数は約14万人に達し、すでに2024年の通年総数を上回りました。

 多くの企業の倒産がリストラに拍車をかけています。今年上半期だけで全国で新たに4万6000社のIT企業が登録取り消され、前年同期比で26%増加しました。かつて大手ショート動画プラットフォームでプロダクトマネージャーを務めていた張さんはこう明かします。

 「私の部署は3か月の間に40%が削減され、多くの同僚はいまだに職を探している。市場には経験豊富なプロダクトや運営の人材があふれており、競争は極めて激しい」

 業界大手も人員体制の見直しを続けています。複数の大手IT企業は、従来の人事評価に基づく「成績下位の社員を強制的に解雇する『末位淘汰制度』」を強化し、淘汰率を従来の5%から10%に引き上げました。中には、部門全体を閉鎖することで実質的にリストラを行い、労働法の制約を回避する企業も出ています。

自動化の波が直撃 伝統的製造業の

 7月22日、ある中年女性がティックトックに動画を投稿しました。内容はこうです。
 「会社の生産ラインが1つ閉鎖され、工場の従業員がすでに解雇された。今は事務部門の人員削減が始まっていて、事前通知もなく、電話がかかってきたらそのまま呼び出され、面談の翌日から出社不要になる。私は今オフィスで緊張しながら待っているけど、次に呼ばれるのは自分かもしれないと感じている」

 中国工業情報化部のデータによると、今年上半期、中国の工業企業の利益総額は3.2%減少し、そのうち伝統的製造業は5.7%の減少となりました。これが直接的に雇用需要の縮小につながっています。

 求人サイト「智聯招聘」の統計によれば、今年第2四半期の製造業求人需要は17%減少し、製造業従業員の平均給与は5四半期連続で下落しました。これは業界全体の不景気を如実に反映しています。

 また、中国ロボット産業連盟の統計によると、今年上半期に中国で導入された産業用ロボットの台数は24%増加し、自動車、電子、金属加工といった分野で特に大きな伸びを示しました。研究によると、産業用ロボットが1台導入されるごとに、平均して3.4人分の雇用が失われると推計されています。

(翻訳・藍彧)