米国の経済専門家アンソニオ・グレースフォ(Antonio Graceffo)氏は、最近英語版『大紀元』に寄稿し、中国若年層の失業率が上昇する中で「寝そべり族」「投げやり」「地下ネズミ人」「専業子女」といった現象が次々と生まれていると指摘しました。多くの若者が職場から逃避したり家庭に依存したりするようになり、その結果、社会全体の活力が低下し、中国の将来の経済や世界的な野心に影響を及ぼす可能性があるとしています。
「失われた若者」と四つの「隠れ失業」
中国の若年層失業率の上昇、さらに「寝そべり族」「地下ネズミ人」「専業孫」などの風潮の広がりは、中国共産党の習近平が掲げる「民族復興」と、働く意欲を失った、あるいは働けない若い世代との間に広がる深刻な隔たりを映し出しています。
人々が中国の「失われた若者」や「失われた世代」と語るとき、多くの場合、人口減少と高齢化の危機を指します。これらの問題は数十年にわたる一人っ子政策と、その後の生活費の急激な上昇から生じました。就職市場での競争が激化し、住宅価格が高騰する中、多くの若者が結婚を先延ばしにし、社会に出る前にさらに長く学業に費やすことを選んでいます。
しかし、人口問題が悪化する一方で、さらに懸念される「失われた世代」が形成されつつあります。一部の若者は完全に社会や労働市場から離脱し、また別の若者は働く意思があっても、中国経済の減速により職を得られない状況に直面しています。
この「失われた若者」現象には、「仕事しているふりをする若者」「寝そべり族」「地下ネズミ人」「専業孫」といった姿が含まれています。彼らは人口の中で重要な一部を占め、「隠れ失業」を象徴しています。つまり、16歳から24歳の若者における実際の失業率は、主流メディアが報じる14%から16.5%を大きく上回っている可能性が高いのです。
「仕事しているふりをする若者」
中国の厳しい就職市場の中で、仕事探しの重圧が新たな現象を生み出しました。それは、失業中の若者が金を払って「仕事があるふり」をするというものです。職を得られない現実を隠すため、一部の人は毎日約600〜1000円を支払い、「ニセ出勤会社」のようなシェアオフィスでデスクを借りています。そこでは机やパソコン、ネット環境が整っており、時には食事も提供されます。若者たちはこの場所で就職活動をしたり、個人プロジェクトに取り組んだり、単にオフィスの社交的な雰囲気を楽しんだりしています。
ある若者にとっては、金を払って「ニセ出勤」することが、自尊心を保ち、家庭への心理的負担を和らげ、あるいは大学のインターンシップ要件を満たす手段となっています。この動きは、就業機会の少なさや、教育と労働市場との深刻な乖離を浮き彫りにしています。多くの「仕事しているふりをする若者」は依然として職を探す意思を持っていますが、中には完全に職探しを諦め、「投げやり」に流れていく人も少なくありません。
「投げやり」と「地下ネズミ人」
「投げやり」は、2021年に広がった「寝そべり」の流れから派生しました。それは午前9時から午後9時まで週6日勤務する「996」と呼ばれる長時間労働、高騰する生活費、そして職業上の昇進機会の欠如を拒絶する若者たちの姿勢から生まれたのです。中低所得層の若者にとって、キャリアアップはほぼ不可能に見えます。「投げやり」は、現実への対処であると同時に静かな抵抗でもあります。高圧的な高給職を目指すのではなく、最低限の労働だけで生活を維持することを選ぶのです。
「地下ネズミ人(老鼠人)」は「寝そべり文化」のさらに極端な派生です。終わりのない社会競争、学業の重圧、教育制度や職場が押しつける効率至上のライフスタイルを拒否する生き方を意味します。2025年には過去最多の1200万人の新卒者が、すでに飽和状態にある就職市場に参入する中、多くの若者は将来に希望を持てず、この流れはさらに拡大しています。
「地下ネズミ人」は、失業や不完全就業に直面するミレニアル世代やZ世代に広がっています。昼夜逆転し、低エネルギーで閉じこもった生活を送り、まるでネズミの習性のように日光を避け、家に籠もり、社会の周縁で静かに暮らしています。ベッドに横たわったまま一日を過ごし、ネットサーフィンをしたり、デリバリーを頼んだり、小紅書(RED)やティックトックといったプラットフォームに自嘲的な「日常ルーティン」を投稿するのです。
「寝そべり」にはまだ個人の趣味や関心を追求する余地がありました。しかし「地下ネズミ人」は、自律や社会的期待を意図的に拒絶し、「努力を強調するインフルエンサー」の華やかな生活とは真逆のスタイルを選びます。投稿されるのは、午後4時になってもベッドから出ない動画であり、午前4時にジムで鍛える動画ではありません。
この流れを支えているのは、親世代です。親は中国の初期の経済成長の恩恵を受けており、子どもに経済的援助を与えられるため、若者が長期間失業状態にあっても生活できるのです。中には注目を集めるために誇張された投稿もありますが、専門家はこれが若者層に根深い幻滅感を反映していると指摘します。
「専業子女」と「専業孫」
もう一つの現象が「専業子女」です。これは親から生活費を受け取り、家庭に留まって家事や親の世話を担う若者を指します。職場での激しい競争から逃れるために辞職や退学する人もいれば、就職に失敗してやむなく故郷へ戻る人もいます。
これに似た現象が「専業孫」です。失業した若者が実家に戻り、祖父母の専属介護役となるものです。祖父母に寄り添い、感情的な支えや日常の助けを提供し、「専業子女」よりも孝行心が強いと見なされることもあります。多くの若者は祖父母の年金に支えられて生計を立てるため、その分、全力で介護に注げるのです。
中国共産党は、こうした若者の消極的な態度を経済成長への脅威と捉えています。これは習近平が呼びかける「民族復興」への貢献とは相反します。彼は戦時中のプロパガンダ用語を復活させ、「長征(紅軍の大行軍)で示された苦難に耐え抜く精神」や「朝鮮戦争の長津湖の戦いで示された、命を懸けて戦う精神」を掲げ、台湾をめぐる衝突や米国との対立に備えるよう国民に訴えています。
しかし、高止まりする青年失業率とこれらの否定的な社会現象は、中国共産党が掲げる軍事動員の目標と、習近平が10年以内に米国を超えることを目指す経済的野心との間に広がる乖離を浮き彫りにしています。中国共産党は「失われた世代」への責任を認めることはありませんが、経済と社会に対する締め付けを強めた結果、中国経済は減速し、多くの若者が失望感に沈み、労働市場に関わりたくても関われない、あるいは関わろうとしない状況が広がっています。これは結果的に中国の発展の勢いを鈍らせ、党が掲げる世界的な覇権獲得の野心を揺るがす可能性があるのです。
(翻訳・藍彧)
