中共当局が大規模な閲兵式を控える中、重慶大学城の中心地で巨大な反共スローガンの投影が映し出され、「共産党の暴政を打倒し、自由を勝ち取ろう」と呼びかけました。この出来事はインターネット上で大きな反響を呼び、「四通橋事件」以来の民間抗議の延長と見なされ、人々の不満がさらに高まっていることを示しています。

 イタリア在住の作家・李穎氏がSNS「X」で明らかにしたところによれば、8月29日午後10時頃、重慶大学城の熙街にあるビルの外壁に投影機を使って複数の巨大スローガンが映し出され、その光景は50分以上続きました。現場の写真には、「共産党がなければ新しい中国がある」「自由は恩恵ではなく、自ら勝ち取るものだ」「立ち上がれ、奴隷になることを望まぬ人々よ、反抗して自分の権利を取り戻せ」「嘘はいらない、真実を! 奴隷化はいらない、自由を! 暴政の共産党は退陣せよ」といった文言が確認され、このニュースは瞬く間にネット上で拡散しました。

 事件の翌朝には現地の街頭に警察車両が明らかに増えていました。ある異議人士は「こんな重要な時期にこのようなことが起きて、警察は大忙しだ……これは単なる上訪(陳情)よりもはるかに重大な政治事件だ」と語っています。当局が投影現場を突き止めた時にはすでに誰もおらず、現場には手書きの手紙が残されていました。日付は8月16日夜11時と記されており、事前に周到な準備が行われ、その後、投影を実行した人物は家族とともにヨーロッパへ脱出したと伝えられています。

 この勇敢な行動は社会で大きな注目と支持を集めました。多くのネットユーザーが「プロジェクターでの反共は共産党も防ぎきれない!」「いつか天安門に投影されるのを見たい」「共産党が倒れたら三日三晩宴会を開く」といった書き込みを残しています。

 事件現場となった熙街は重慶大学城の中心に位置し、大型ショッピングセンターや歩行者天国、SOHOオフィスが集まるエリアです。周囲には重慶大学、重慶師範大学、四川美術学院など14校の大学や羅中立美術館があり、都市の主要道路や鉄道駅、住宅地にも隣接しています。その立地条件からも人々の注目を集める場所でした。

 今回の出来事は決して孤立したものではありません。近年、中国各地では同様の抗議が相次いでいます。2022年10月13日には北京で「四通橋事件」が発生し、全国に衝撃を与えました。抗議者の彭立発(別名・彭載舟)氏は四通橋に横断幕を掲げ、「核酸検査はいらない、ご飯を!」「文革はいらない、改革を!」「封鎖はいらない、自由を!」「指導者はいらない、選挙を!」「嘘はいらない、尊厳を!」「奴隷ではなく市民になろう」と訴え、タイヤに火をつけて注目を集めましたが、その場で警察に拘束されました。

 この事件は暴政への象徴的な抵抗と受け止められ、その後の「白紙革命」に直接つながりました。同年11月には新疆ウルムチの火災を契機に全国各地で抗議デモが広がり、人々は白紙を掲げて「ゼロコロナ」政策への不満を訴え、最終的に当局は同年末に政策を終了せざるを得なくなりました。

 「四通橋事件」の影響は今も続いています。事件から一年が経過した現在も彭立発氏の消息は不明で、家族は厳重な監視下に置かれています。さらに北京をはじめとする各地では「看橋員」と呼ばれる人々が橋を24時間監視し、百度地図や高徳地図から「四通橋」という名称が削除され、唯一バス停の名前だけが残されています。

 その影響は海外にも及びました。多くの留学生や在外中国人が大学キャンパスや大使館前でポスターやビラを掲げたり、AirDropを通じて画像を拡散したりして、国内の抗議活動に連帯を示しました。

 2023年の全国人民代表大会の前には、山東省済南市の万達広場でも「打倒共産党 打倒習近平」と書かれた電子横断幕が現れました。当事者の柴松氏の恋人や友人二人は逮捕され、現在も消息不明です。柴松氏本人は後に米国へ亡命し、「彭立発事件が示したのは精神そのものだ。彼は自分が何をしているかを理解し、その結果も承知していた。それでも行動した。その勇気と恐れを知らぬ精神が、私にとって最も大きな影響を与えた」と語りました。

 2024年に入ると、同様の抗議が頻発しました。7月には湖南省婁底市新化県の歩道橋に横断幕が掲げられ、「自由を! 民主を! 選挙を! 独裁者習近平を打倒せよ!」というスローガンが拡声器で流されました。行動した方芸融氏は「暴政は恐ろしいが、人々の心までは折れない」と語っています。さらに8月には「壁を壊せ運動」を推進する若者が野外でビデオを撮影し、「中共のネット封鎖と言論統制に反対」「特権はいらない、平等を!」「言論の自由、ネットの自由を!」と訴えました。彼は以前にも「習近平は退陣せよ」と放送したことで指名手配され、機材を没収され、現在は亡命生活を送っています。

 また、4月15日未明には四川省成都の茶店子バスターミナル付近の歩道橋で「体制改革を求める」と書かれた横断幕が掲げられました。8月27日には河北省石家荘市でも「中共は中国ではない、中共は中国人民を代表しない」と記されたスローガンが電柱に掲示されました。

 「四通橋事件」から「白紙革命」、そして今回の重慶大学城での投影抗議に至るまで、中国の民間抵抗はさまざまな形で続いています。監視と弾圧が強まる中でも、なお声を上げる人々は存在し、権力に屈しない姿勢を示しています。重慶での投影事件は、改めて「四通橋精神」の継承を象徴し、自由と尊厳を求める人々の姿を世界に示しました。

(翻訳・吉原木子)