中国四川省と青海省を結ぶ川青鉄道の建設区間である尖扎黄河特大橋において、8月22日未明に鋼索が断裂する事故が発生し、公式発表によれば12人が死亡、4人が行方不明となりました。この事故は、中国鉄路工程総公司(中鉄集団)が手がける工事の品質と施工安全性に、あらためて厳しい視線を向けさせています。

 新華社の報道によりますと、事故は22日午前3時10分ごろに起きました。尖扎黄河特大橋は合龍を目前に控えた重要な段階で鋼撚線の張力作業を行っていましたが、突然鋼索が断裂し、108メートルの鋼桁アーチが一気に崩落しました。当時現場には施工作業員15人とプロジェクト責任者1人の計16人がおり、轟音とともに橋体が落下、同時に塔頂部の張力プラットフォームも崩れ、全員が転落しました。目撃者によれば「地震のような衝撃音」が響き渡り、橋体が黄河に落ちる瞬間には火花が散り、数十メートルの橋桁が斜めに河面へ突き刺さったといいます。

 事故直後、現地には「8・22」事故処理指揮部が設置され、7つの作業班が救援に投入されました。午後2時時点で救助車両91台、舟艇27隻、ヘリコプター1機、救助ロボット5台、救援要員806人が出動し、周辺6つの病院が緊急搬送を受け入れる体制を整えました。青海省政府の幹部や国家応急管理部が現場に入り、国務院安全委員会も調査チームを設置しました。

 施工元である中鉄大橋局は、事故原因は塔頂部に設置されたアンカービームが断裂したことにより、鋼撚線が支えを失って連鎖的に崩落したと説明しました。浙江工業大学土木工程学院の彭衛兵教授は「原因としては鋼索自体の腐食や品質欠陥、あるいは施工誤差による荷重の偏りが考えられる」と指摘しました。特に風の強い高地環境や低温条件下では、鋼索は脆性的に断裂する危険性が高く、モニタリング技術やBIMシステムを導入していたとしても限界があると強調しました。

 尖扎黄河特大橋は青海省黄南チベット族自治州尖扎県と海東市化隆回族自治県の境界に位置する川青鉄道の制御性工事で、全長1596.2メートル。141メートル+366メートル+141メートルの三径間連続鋼トラス系桁アーチ橋であり、主径間は366メートルです。世界最大の支間を誇る二線式連続鋼トラスアーチ鉄道橋であり、中国で初めて黄河を跨ぐ鉄道鋼トラスアーチ橋とされています。工期は当初2025年7月に合龍予定でしたが、8月に延期され、進捗を急ぐため施工班は昼夜を問わず作業を続けていた矢先の惨事でした。

 事故後、中国中鉄は声明を発表し、12人の死亡と4人の行方不明を認め、遺族に謝罪しました。しかし同時に「契約総額は約4億3600万元であり、今回の事故は全体業績に大きな影響を及ぼさない」と記したことで、ネット上では「人命より業績を優先している」と強い反発を招きました。

 実際、中鉄集団は近年海外案件を含めて重大な事故を繰り返しています。今年3月、ミャンマーで発生したM7.7の地震では、遠く離れたバンコクで中鉄十局が建設した高層ビルが倒壊し、92人が死亡、4人が行方不明となりました。調査の結果、使用された鋼材が耐震基準を満たしていないことや、監督書類に偽造署名があったことが判明しました。さらに2024年11月には、セルビアのノヴィサド駅で屋根が崩落し、16人が死亡。この工事は中鉄国際有限公司と中国交通建設が手がけており、現地で大規模な抗議デモが発生しました。腐敗と管理不行き届きへの批判が集中したのです。

 国内でも同様の事故が相次いでいます。今年6月3日、河北省石家荘市長安区で下水管道改修工事の作業中に基坑の壁面と路面が崩落し、作業員3人が生き埋めとなり、全員が救出されたものの死亡しました。6月には貴州省の高速道路橋が連日の豪雨で山体が崩れた影響を受けて崩落し、貨物トラックが宙吊り状態になり、運転手が辛うじて救助されました。4月には南京市の高層建設現場で80フィートのクレーンアームが23階から落下する事故も発生し、作業員が間一髪で逃れる事態となりました。これらの事例は尖扎黄河特大橋事故ほどの規模ではないものの、中国の建設現場に潜む安全管理上の脆弱さを浮き彫りにしています。

 ネット上では「なぜこんなに工期を急ぐのか」「安全帽や安全ベルトでは崩落事故から命を守れない」といった声が噴出しました。急速なインフラ整備の裏で、層層分包、無理な工期短縮、そして安全意識の欠如が積み重なり、大きなリスクとなっているのです。尖扎黄河特大橋事故は、中国のインフラモデルと中央企業の責任を問う重大な警鐘となりました。

(翻訳・吉原木子)