中国各地で、俗に「食脳虫(脳を食べるアメーバ)」と呼ばれるバラムチア・マンドリラリスによる感染例が相次いで報告され、淡水域に接触した複数の子どもが命を落とし、社会的に大きな注目を集めています。
報道によれば、現在までに全国で累計40例以上の感染が確認されており、この原虫によって引き起こされる中枢神経系の疾患は致死率が98%に達するとされています。また、現時点では有効な治療法が確立されていないことも指摘されています。
上海で6歳男児が水遊び後に死亡
上海在住の6歳の君君(ジュンジュン)は、最新の報道で明らかになった被害者の1人です。6月、君君は学校で同級生と水遊びをした後に発熱や頭痛などの症状が現れ、上海の復旦大学附属病院に搬送されました。脳脊髄液の検査結果から、彼が感染していたのは稀少なバラムチア・マンドリラリスであることが判明しました。
その後、君君は集中治療室で1か月以上にわたり治療を受け、国産のニトロキソリンを含む複数の薬剤による療法が試みられました。しかし、病状の悪化を食い止めることはできませんでした。8月11日、君君の母親がソーシャルメディアで、子どもが亡くなったことを公表しました。
感染経路を振り返り、家族は「子どもは普段、野外の水域に触れることはほとんどなかった。6月6日の学校での水遊び、そして4月13日に公園で魚をすくった時が、感染につながった可能性が高い」と語っています。
福建省や貴州省など各地で子どもの感染が相次ぐ
上海の事例は孤立したものではありません。今年6月、福建省で5歳の女の子が水泳や温泉に入った後に頭痛、微熱、嘔吐の症状を示し、その後、急速に昏睡状態に陥りました。6月27日の検査結果で、彼女がバラムチア・マンドリラリスに感染していることが判明しました。子どもは集中治療室で45日間闘病し、一時は極めて危険な状態に陥りました。両親がソーシャルメディアを通じて助けを求めたことは、多くのネットユーザーの心を揺さぶりました。
また、貴州省では、地元の15歳の少年が長期間にわたり池や川で泳いでいたことから、バラムチア・マンドリラリスに感染しました。初期の病変が見られてから救命措置もむなしく命を落とすまで、わずか半年ほどの期間でした。
新浪財経の報道によれば、杭州市でも子どもの感染例が確認されていますが、現在の治療の進展については公にされていません。
専門家「発症は急で進行も速く、1週間以内に致命的となることも」
「脳を食べるアメーバ」の学名はバラムチア・マンドリラリスであり、肉眼では見えない単細胞生物です。
ウィキペディアの資料によれば、このアメーバは1986年に初めて発見されました。当時、研究者がサンディエゴの動物園で死亡したマンドリルの脳から検出したのが最初の事例です。その後、少数ながら人間の感染例が報告されるようになりました。
首都医科大学附属北京友誼医院・北京熱帯医学研究所の主任医師である王磊(ワン・レイ)氏によると、このアメーバが人体に侵入する経路は主に2つあるといいます。1つは農作業中に皮膚の傷口から侵入する場合、もう1つは川や池での遊泳、あるいは汚染された水で鼻をすすいだ際に鼻腔から中枢神経系へ入り込み、急速に増殖して脳炎を引き起こす場合です。
医学的にはこの病気は「原発性アメーバ性髄膜脳炎」と呼ばれ、初期症状は頭痛、発熱、吐き気、嘔吐などですが、その後急激に悪化し、麻痺や昏睡に至り、最短で1週間以内に死亡することがあります。潜伏期間が短く、発症も急激であることから、医学界では極めて危険な寄生虫疾患とみなされています。
王磊氏は「現在、世界の医学界はいまだにアメーバに有効な対処法を持っていない。複数の薬剤を組み合わせて治療しても、成功率は極めて低い」と強調しました。
中国で40例以上が確認 すでに複数の省や都市に拡大
中国の公式メディア・央视网の報道によれば、これまでに確認された症例の分布から、バラムチア・マンドリラリスの感染は内モンゴル自治区、海南省、山東省、山西省、湖北省、浙江省など、複数の地域に及んでいることが明らかになりました。これは、中国の淡水域における分布の広さを示しています。これまでのところ、海水環境での感染例は確認されていません。
注目すべきは、世界的には水道水を通じた感染例が1件報告されたことがあるものの、中国で報告されたすべての症例は淡水での活動に関連しているという点です。
専門家は、この寄生虫が人体に対して極めて高い致死性を持つと指摘しています。これまでに中国で報告されたバラムチア・マンドリラリスの感染例は40例余りにとどまりますが、致死率は約98%に達し、治癒例はほとんど報告されていないのが現状です。
医師と国民の不安
「バラムチア・マンドリラリスが再び確認された」と杭州市第一人民医院の牛誠(ニウ・ジェン)医師は、ソーシャルメディアの動画でこう警告しました。「最近2人の幼児が相次いでバラムチア・マンドリラリスに感染し、1人は死亡、もう1人はいまだ昏睡状態にある。感染者はいずれも例外なく、不衛生な水源に接触していた」
この動画は瞬く間にネット上で大きな議論を呼びました。江西省のネットユーザーは「こんな確率の低いことが、まさか自分のかつての教え子に起きるとは。子どもはまだ小学4、5年生だった」とコメントしました。
一方で「自分たちが子どもの頃は毎日のように川で遊んでいたが、こんな病気は聞いたことがない。今はどうしてこうなったのか」と疑問を呈する声もありました。
また、多くの保護者が「今では公園や遊園地の人工池でさえ、子どもの安全が心配になる」と不安を吐露しています。
社会的反響と防止への提言
最近、子どもたちの感染事例が相次いで報道されたことで、中国の国民の間では不安が一層高まっています。保護者たちは、学校や社会全体に対して水域の安全管理を強化するよう呼びかけるとともに、公衆衛生教育を充実させ、子どもたちに河川や池など不明な水域にむやみに近づかないよう注意を促す必要があると訴えています。
一部の専門家は、夏季には子どもが天然の淡水域で泳いだり遊んだりするのを避けるべきだと提案しています。また、疑わしい水源を使用する場合には、鼻や口に水が入らないよう注意すること、原因不明の発熱や頭痛が現れた場合は速やかに受診し、医師に最近淡水と接触した経験を伝えることを勧めています。
また、医学界の一部からは、希少寄生虫感染症に対する薬剤開発や臨床研究を加速させ、これ以上の悲劇を防ぐべきだとの声も上がっています。
バラムチア・マンドリラリスが中国各地で確認されたことは、公衆衛生上の脅威がウイルスだけでなく、あまり知られていない寄生虫からも生じ得ることを人々に思い起こさせました。致死率が極めて高いこの病気に対して、現時点で最も有効な対策は、やはり予防を徹底することにあります。
(翻訳・藍彧)
