広東省の複数の都市でチクングニア熱の感染が広がり、当局は蚊の駆除作戦に乗り出しています。住宅地の封鎖や家庭への立ち入り消毒、住民への採血検査、感染者の現地隔離など、かつて新型コロナの流行時に見られた光景が再び繰り返されています。さらに深刻なのは、家庭菜園がセメントで覆われたり、緑地帯の草木が一斉に刈り取られたり、衛生基準を満たさない工場が取り壊されたりする事態です。ある住民は「広東の蚊の駆除はあまりにも大げさで、蚊どころか人間のほうが先に追い払われてしまう」と不満を漏らしています。
湛江や珠海ではとくに厳しい防疫措置がとられています。8月17日に湛江市で撮影された映像には、住民が強制的に採血を受けさせられ、家庭内に防疫員が押し入って薬剤を散布する様子が映っていました。街の両側や住宅地は白い煙に覆われ、まるで戦場のような光景です。防護服を着た職員はソファや棚の隙間まで細かく調べながら消毒を行っていました。その夜は多くの住民が薬局や検査場に並び、薬を購入したり検査を受けたりしていました。同日午前には湛江で感染者が確認され、市内全体が封鎖されました。
珠海でも16日に大規模な採血検査が実施されました。こうした方法は、4年前の新型コロナ流行時を思い起こさせ、ネット上では「当局のやり方はもはや取り憑かれたようだ」と皮肉る声も出ています。
発生源とされる仏山市では、連日、広範囲に薬剤が散布されています。蚊は水たまりに卵を産むので、少量の水でも発生源になります。そのため防疫の職員が家庭を訪ねて水たまりの有無を徹底的に調べています。菜園はセメントで固められ、植栽も大規模に刈り取られました。
専門家は、「広東の蚊は従来の殺虫剤にすでに耐性を持っており、従来の方法では効果が期待できない」と指摘しています。そのため薬剤の使用量を増やすしかないとされています。しかし、広州市の住民からは「毎日のように記録や検査ばかりで本当にうんざりだ。街全体が大混乱で、まるで何のためにやっているのかわからない」との声も上がっています。
仏山市では警察が住宅を訪ねて鉢植えに水が溜まっていないか確認し、街路の緑地帯は一斉に刈り取られました。ある住民は「蚊の駆除があまりにも大げさで、戦時中のようだと感じた。人間の方が追い払われてしまいそうだ。薬剤が本当に人体に安全なのかもわからない。煙が立ちこめ、まるで古いドラマの撮影現場のようだった」と語りました。
また、ある女性は「いまは広東へ旅行すべきではない」と警告しています。女性は「山や海で2〜3日遊んだだけで全身180か所以上刺され、帰宅後に感染した。」と訴えています。「このウイルスには特効薬がない。関節の痛みは人生を疑うほど激しく、発熱と解熱を繰り返す。重症になれば麻痺や死亡に至ることもある。患者の20%は慢性関節炎に移行し、数年にわたり痛みが続き、行動力を失う可能性がある。」と話しました。
中国メディア「央広網」によりますと、広東省疾控局は8月10日から16日の間に省内で830例の現地感染を確認したと発表しました。内訳は仏山644例、広州85例、湛江22例、深圳と恵州がそれぞれ16例、そのほか珠海、潮州、東莞、清遠、中山など10例未満の地域も含まれます。
現在、中国全土のチクングニア熱の確定症例は9,000例を超え、マカオ、香港、台湾にも広がっています。内陸部でも、北京、湖北、湖南などで、感染者が確認されています。当局は感染を小さく見せようとする傾向があるため、実際の感染者数はさらに多い可能性があります。
最近、中国疾控局は流行リスクをⅠ類からⅣ類までの4段階に区分しました。浙江、福建、広東、広西、海南、雲南はⅠ類の高リスク地域に指定され、集団的な流行が起きる可能性が高いとされています。上海、江蘇、安徽、江西、山東、河南、湖北、湖南、重慶、四川、貴州はⅡ類の中リスク地域に分けられました。
同時に、新型コロナウイルスの感染状況も依然として深刻です。中国疾控局の公式サイトによりますと、今年4月から7月までの間、全国の乙類感染症で発症数が最も多かったのは4か月連続で新型コロナでした。7月にはオミクロン株の新たな変異型「PQ.2」やその亜系統も確認されています。河北省の医師は7月20日に「最近、新型コロナの陽性率が急上昇している」と明らかにしました。
(翻訳・吉原木子)
