9月3日に予定されている中国共産党の大規模軍事パレードを前に、北京市では警備体制が一段と強化され、天安門広場周辺は厳重な警戒態勢が敷かれています。8月17日未明には、北京市東城区の通りに多数の軍用車両や戦車が並ぶ様子がXに投稿され、注目を集めました。
北京市当局は8月13日に通告を発令し、15日から17日にかけて天安門地区と関連道路で時間帯とエリアを分けた交通規制を実施すると発表しました。さらに、8月20日から23日には天安門広場を閉鎖することも明らかにしました。15日正午以降、天安門周辺の警備は一段と厳しくなり、長安街の道路は封鎖されました。
これに先立ち、8月9日から10日には初の総合演習が行われ、約2万2千人が参加しました。演習には徒歩部隊や装備部隊、空中梯隊などが含まれ、長安街や天安門広場周辺は全面的に交通規制が行われました。この間、天安門周辺の店舗はすべて営業停止となり、王府井の繁華街でも早めに閉店する店が相次ぎました。地下鉄駅の出入口は一部が封鎖され、65路線のバスが迂回運行を余儀なくされました。そのため、自宅に戻れない市民も出るなど生活に支障をきたしました。
交通面の影響はその後も続いています。8月9日以降、長安街や周辺地域では厳しい車両規制が実施され、朝陽路や朝陽北路では夕方のラッシュ時に渋滞が悪化しました。X上では「朝陽区と東城区の交通は完全に麻痺している」「夜になると道路状況は大混乱だ」といった不満の声が多く投稿されています。地下鉄駅の閉鎖やバスの迂回運行は通勤をさらに困難にし、一部の住民は帰宅すらできない状況に追い込まれました。
警備も徹底されています。天安門周辺には多数の武装警察や軍警が配備され、検問所が設けられています。鉄道駅や空港でも検問が強化され、一部の陳情者は帰郷を命じられたり、行動を制限されました。インターネット上でも監視が強まり、敏感な情報は削除され、関連する議論は次々と封鎖されています。出入り制限や公園・地下鉄駅の閉鎖、店舗の営業停止も広がり、王府井のような繁華街も閑散とし、小規模店舗の売り上げは大きく落ち込みました。市民からは「パレードは労民傷財で、庶民を苦しめるだけだ」との批判が出ています。
費用について当局は2025年分を公表していません。しかし、過去の事例から規模を推測することができます。2015年のパレードでは総費用が160億元に達したとされ、工場停止や交通規制、軍事演習、都市美化などの間接的な経費も含まれていました。2019年の建国70周年パレードではさらに規模が大きく、莫大な経費が投じられたと考えられています。物価上昇や装備更新を踏まえると、2025年の直接支出も数十億元規模に達する可能性が高く、周辺地域の工場停止による経済的損失は数千億元に及ぶとみられています。国防予算(約1兆8千億元)と比べれば小さいものの、北京市や周辺地域の短期的な経済への打撃は無視できません。
経済の減速が深刻化する中で、今回の軍事パレードが経済に更に、負担を与えるのではないかとの懸念が広がっています。2025年上半期の中国経済はすでに多くの課題に直面しています。7月の経済成長率は年内最低水準に落ち込みました。小売売上や工業生産の伸びも鈍化し、不動産市場の低迷は消費を押し下げ続けています。経済学者は2025年のGDP成長率を4.7%、2026年には4.3%へ低下すると予測しています。その背景には高い国防貯蓄、貿易摩擦、国内需要の低迷があります。
「本来なら消費刺激や中小企業支援に充てるべき資源が、パレードに浪費されている」と指摘する声もあり、経済的圧力が高まるなか、「庶民に犠牲を強いて、財政を浪費している」という批判はますます強まっています。
(翻訳・吉原木子)
