中国の若者の失業率が高止まりし、夫婦そろって失業するケースも出ています。中には親に頼って生活したり、「寝そべり族」になったり、「仕事に行くふり」をする若者もいますが、多くは高額な負債を抱えているため、生き延びるために必死で職探しをし、体面ある生活を諦めざるを得ません。

住宅ローン車ローン出産の三重苦

 上海のネットユーザー「采采(ツァイツァイ)」は大学卒業から10年目の今年、夫婦そろって失業しました。彼女は投稿で、上海市奉賢区(ほうけんく)で購入した240万元(約4800万円)のマイホームが100万元(約2000万円)も値下がりし、資産価値は半減したと述べています。また、「牛馬三点セット」と呼ばれる住宅ローン、車ローン、子孫繁栄にがんじがらめにされているといいます。

 「采采」によれば、毎月7000元(約14万円)の自動車ローンを払っているのは、当時の金利が低く、経済の先行きに楽観的だったため購入を決めたそうです。現在、夫は必死に仕事を探し、彼女自身も数えきれないほどの履歴書を送ったものの適職は見つからず、今は専業主婦として子育てを専念しています。

 深セン市のネットユーザー「暖猫咪(ヌアンマオミー)」も、自身の家族の現実を語っています。38歳で仕事を失い、夫も失業して収入がゼロ、二人の幼い子どもを抱えています。狂ったように履歴書を送り続けても、35歳を超えて失業すると、できるのはフードデリバリー、配車アプリの運転手、家政婦などの仕事ばかりで、体面と尊厳を保った生活は困難だと言います。

 深セン市のネットユーザー「Amber(アンバー)」は7月24日の投稿で、「広州市など一線都市には失業者があふれている」と述べました。「月曜に私が失業し、水曜には夫の会社が倒産すると言われ、今は退職金交渉中。深セン市では家賃、実家には住宅ローンがあり、プレッシャーがとても重い。経済がこれほど悪いと、この先の生活を想像するのも怖い」と訴えています。

 ネットユーザーたちの投稿では
 「夫婦のどちらかが公務員や国有企業にいれば、それが一番安全」
 「月給5万元(約100万円)の友人も解雇された」
 「月給10万元(約200万円)の人も解雇されている」
 「大企業のリストラは部署ごと廃止することもあり、中間管理職も一緒に職を失う」
などの声が相次いでいます。

 重慶市のネットユーザー「潇潇(シャオシャオ)」は、昨年から「寝そべり」状態で仕事を探し続けてきたといいます。「求人はどれもブラックで、月給2000元(約4万円)台で、1日十数時間勤務、週休1日、社会保険なし。少し条件がいい4500元(約9万円)の仕事は、高い営業成績が求められる」

 ネットユーザーの間では、中国の中年失業者が就ける仕事は、体力的に厳しく賃金の低い宅配便、フードデリバリー、配車アプリ運転手の3つくらいしかなく、または警備員、清掃員、家政婦といった職種に限られるといわれています。

 また、「国内市場はすでに荒廃し、30歳以上で未婚でもまともな仕事は見つからない。複数の職務を兼任させられても給料は一人分しか払われないか、年齢・経験・学歴を理由に選考で落とされるだけ」といった厳しい現実も語られています。

北京で奮闘する若い夫婦が共に失業

 36歳の晴草(チンツァオ、女性)は、2021年に失業してから就職活動を経験し、夫は2022年8月に失業しました。かつては順調だった結婚生活が「離婚すべきか」という迷いに変わり、両親が相次いで病に倒れ、自分はずっと北京に暮らしていてもよそ者のままだったことに気づきました。昨年8月、彼女は北京を離れ、故郷の石家荘(せきそう)へ戻る決断をしました。

晴草が語る自分の物語

 私は建築設計院でインテリアデザインを担当していましたが、2021年に設計部門が丸ごと廃止されました。その後、スタートアップ企業で総合デザインを担当し、共同経営者のように自己責任で経営し、収入は非常に不安定でした。一方、夫は「底辺に落とされたような」トラウマを経験しました。

 夫はUIデザインを担当しており、勤務先はかつて自社ビルを購入し、上場寸前まで行きました。しかし、ある日突然「会社は人員削減を始め、私たちはシェアオフィスへ移転した」と告げられました。

 失業後の彼は、給与が合わない、仕事内容が受け入れられないなどの理由で求職がうまくいかず、試用期間で終わることが続きました。当初は私も理解していましたが、2022年以降は就職活動で失敗が続け、まるで放物線を描くように落ち込み、精神的に崩れていきました。就職の話題になると壁を叩いて取り乱し、「生きていても良いことなんてない」とつぶやくこともあり、私は恐ろしくて何も言えませんでした。

 離婚を考えた理由は、夫が無職だからではなく、私への態度がひどすぎたからです。しかし、当時2〜3歳の息子がいて、その笑顔を見ると「もう少し耐えてみよう」と思いました。

 昨年4月、生活を変えなければ自分も鬱になりそうだと感じました。ちょうどその頃、母が病気で手術を受け、父も血管が重度に詰まっていることが判明しました。両親は北京まで来て子育てを手伝ってくれていましたが、病気になっても助けてくれる人はおらず、夫は両親の通院、子どもの世話、自分の求職活動に追われ、目が回るような日々でした。

 北京では自動車の利用が厳しく制限されており、北京のナンバープレートがなければ車で通院できず、子どもには北京の戸籍がないため高校受験は地元に戻らなければなりません。夫は高給の職を失い、私の収入も安定せず、まるで郊外に家を構えたかのように、私たちの暮らしは常に「城門の外」にありました。

 昨年6月、業務の不安定さからスタートアップ企業が解散しました。友人の会社が石家荘市に支社を設立し、技術と営業両方が分かる人材を求めていたため、純粋なデザイン畑だった私も思い切って応募しました。

 石家荘市での給与水準は北京の3割程度でしたが、90平米の部屋を借りても家賃は月2〜3千元(約4万〜6万円)ほどです。夫は地元で3つ目の仕事に就いたとき、ようやくプライドを捨て、生活の軌道に戻りました。

 後になって彼と失敗の日々を振り返ると、お互いの人生観が変わっていたことに気づきました。夫は「自分の上限はどこなのか、40歳で再び失業したらどうするのか」と考えるようになっていました。

中若年層の大量失業 中国経済が不況に突入

 中国の弁護士・呉氏は大紀元の取材に対し、現在の失業はあらゆる伝統産業に集中しており、新興分野や新しい生産力分野ではわずかに雇用が増えているが、40〜50代で失業すると、再就職の機会はほとんどないと述べました。

 呉氏は若者に対し、住宅ローンを組まないこと、大きな負債を抱えないこと、支出を減らすことを勧めています。すでに借金がある場合は返済の方法を考えるべきであり、「経済の不調は1〜2年ではなく、10年、20年続く」と警告しました。

 また、「大卒直後の若者なら寝そべりや親への依存、結婚や出産を避けることも可能だが、30〜50代で家庭や子どもを持ち、負債がある人は寝そべることはできない。生活の質や基準を引き下げ、例えば娯楽費など可変支出を3〜5割減らすしかない」と述べています。

 米国エイケン商学院の謝田教授も、「どの国にも失業問題はあるが、正常な国では夫婦同時失業は景気大恐慌時くらいしか起こらない。中国経済はすでに不況期に入り、衰退は非常に深刻だ。中国共産党がいくら粉飾しても失業は隠せない」と指摘しました。

 謝教授によれば、中国の問題は、若い失業者の多くが極めて高額な負債を抱えていることです。月収8000〜1万元(約16万〜20万円)で、平気で数十万〜百万元(約2000万〜2億円)ものローンを組んで住宅を購入するが、これは正常な国ではあり得ないそうです。米国では住宅ローンの上限は年収の約3倍程度です。

 中国では高い不動産価格と中国当局の宣伝により、国民は経済が好調だと盲信し、不動産は今後も上昇すると考え、高額なローンを組むことをためらわなかったといいます。

 2023年6月、中国当局は初めて若年層の都市部失業率が21.3%に達したと発表しました。しかし民間では、この数字は都市部に住む在学中でない若者のみを対象としており、実際の失業状況を大幅に過小評価しているとの見方が強いです。北京大学経済学の張丹丹准教授は、就職を諦めた人や求職活動をしていない人も含めると、若年失業率は46.5%に達する可能性があると強調しています。

(翻訳・藍彧)