最近、中国の電気自動車(EV)新興、小鵬汽車(シャオペン)P7+の複数の車主がメディアに対し、この車に重大な欠陥があると訴えました。走行中にステアリングアシストが突然失効するという問題が発生しているとのことです。こうした深刻な安全リスクに対し、小鵬汽車はステアリングに「接着剤で補修する」ことで欠陥を補おうとしています。一部の「強く抗議する」車主にだけステアリングを交換しましたが、いまだにリコール措置は取っていません。

 また、小鵬X9の一部車主は、車両のエアサスペンションに異常な損傷が発生していると訴えています。繰り返し「故障」する状況にもかかわらず、小鵬汽車はこの問題についてもリコールを実施していません。

高速道路でステアリングアシストが突然失効

 中国の『経済参考報』が8月4日に報じたところによると、江蘇省蘇州市の王さん(女性)は2024年12月に小鵬P7+を購入しましたが、2025年7月下旬に「致命的な故障」に見舞われました。ある夜、上海と常州市(じょうしゅうし)を結ぶ高速道路を走行中、突然ステアリングが全く動かなくなり、車線変更ができなくなったのです。王さんは力いっぱいハンドルを回して、ようやく車を非常停車帯に停めました。5人が乗車していたこの車は、危うく重大事故を起こすところでした。

 無錫(むしゃく)市の荊(けい)さんによると、彼は2025年2月に小鵬P7+を購入しました。ところが7月19日、市街地を走行中に突然ハンドルがロックされたように重くなり、操作が困難になりました。同時に大型ディスプレイがフリーズし、メーター表示は真っ白になってしまいました。

 荊さんは電源を切って再起動を試みましたが、ステアリングは依然として正常に作動せず、やむなく車を4S店(正規販売・修理店)に牽引して修理しました。店舗側は「これはシステムのバグであり、品質の欠陥ではない」と説明し、荊さんがステアリングシステムの交換を要求しましたが、拒否されました。

 広東省恵州(けいしゅう)市の李さんは、立て続けに故障に見舞われました。彼は2025年4月に小鵬P7+を購入しましたが、6月中旬に路上を走行中、突然ステアリングアシストが失効しました。4S店で点検を受けたところ、ステアリングシステムの故障と判断され、新品に交換されました。

 ところがその後、今度は別の不具合が発生しました。衝突警報が出ていないのにもかかわらず、突然「爆音」が鳴る現象が頻繁に起こるようになったのです。このため、李さんはこの車に乗ることを怖れているといいます。

 中国の「車質網」が発表した2025年モデル車の苦情ランキングによると、2025年7月だけで小鵬汽車P7+に関するステアリングシステムと運転支援システムの故障に関する苦情は212件に達し、苦情件数ランキングの第2位となっています。

 公開されている情報によれば、小鵬P7+は2024年11月に正式に発売され、これまでに累計で6万7千台が納車されています。

 P7+だけでなく、小鵬X9の一部車主からもエアサスペンションシステムが突然失効する問題が報告されています。一部のX9車主は、車をしばらく駐車した後や走行中に、エアサスペンションが完全に支持力を失い、車高が落ちる現象が繰り返し発生すると訴えています。

 しかし、こうした不具合について車主たちが繰り返し報告しても、メーカー側は「正常な現象である」と説明するのみで、実質的な対応は取られていません。

秘密裏に接着剤で品質欠陥を補修

 多くのP7+車主がステアリングシステム的な故障を訴えており、少なくとも500人と305人の2つの微信(ウィーチャット)グループを作って集団で抗議しています。

 車主たちは、ステアリングの故障は重大な安全リスクであるにもかかわらず、小鵬汽車が原因究明や本格的な対応をせず、後付けで電線や電子部品の接続部に産業用接着剤を一周塗るという奇妙な対策を行っていると指摘しています。この方法では根本的な解決にならず、前出の蘇州市の王さんの車も接着剤処理後に再び故障を起こしました。

 一部の車主は、定期点検の際にこっそり接着剤を塗られていたと証言しており、小鵬汽車自身も、ステアリングに関する不具合が広く存在する安全上のリスクであり、運転者の生命に関わる欠陥であることをすでに認識していると見られます。

 小鵬汽車がステアリングに接着剤を塗布するという処理方法に対しては、多くの車主から嘲笑や皮肉の声が上がっています。

 「小鵬のメーカーはコソコソと接着剤を塗るばかりで、問題に正面から向き合う気はないのか?」

 「小鵬P7+旧型のステアリングには欠陥の疑いがある。交換しなければ、事故を待つしかないのか?」

「抗議の激しさに応じて対応」 いまだリコールされず

 多くの車主が集団で抗議する中、小鵬汽車は車主ごとに異なる対応を取っており、車主たちはこれを「抗議の激しさに応じて対応する」と呼んでいます。つまり、激しく騒ぐ車主ほど、より良い対応を受けられるというのです。

 車主の抗議グループ内で、「深谷長風(しんこくちょうふう)」というニックネームの車主はこう話しています。

 「小鵬汽車はおとなしい客をバカにしている。俺もステアリングを交換してもらう前は毎日電話して怒鳴っていた。1時間ぶっ続けで文句を言ったら、すぐに交換してくれた」

 車主たちは、小鵬汽車が安全上のリスクを解決することよりも、抗議する車主たちへの対応のしかたに力を注いでいると批判しています。

 ある車主は、小鵬汽車のアフターサービス担当者のパソコン画面に、次のような驚くべき資料が表示されているのを撮影しました。

 「P7+ステアリング接着処理車両に関する問い合わせ対応マニュアルおよび話法集」

 その中には、問題を認めず、対応も行わず、ただ「理解しています」「お気持ちは分かります」といった同情の言葉だけを並べるマニュアル文句が多数掲載されていました。

業界関係者「ステアリングコラムの設計に欠陥」

 中国メディア「新黄河」の報道によると、複数の小鵬P7+の車主が、ステアリングの故障は「配線束(ハーネス)の問題」に起因していると述べています。

 車主の王さんは次のように話しています。

 「これは配線の防水性能の問題。小鵬P7+のステアリングシステムにあるコネクターの1つに浸水のリスクがあり、それが原因でステアリングがロックされたのである」

 ある部品供給企業の社員は記者に対し、こう語りました。

 「私自身もP7+の車主だが、個人的に分析するに、おそらくは浸水によって電子部品が故障しているのだと思う。ステアリングシステムの内部そのものに問題があるとは考えていない」

 また、自動車整備に詳しい関係者は次のように述べました。

 「これはステアリングコラムの設計上の欠陥にあたる。ステアリングのコネクターには、防水仕様のものが使われていない」

 2025年3月には、中国の国家市場監督総局が「自動車リコールのユーザー向けガイドライン」を発表しており、その中では、走行中にエンジンが突然停止する、ブレーキが効かなくなる、ステアリングアシストが失効する、あるいは主要部品が破損・脱落するといった現象は「車両の欠陥」に該当し、リコールが必要であると明記されています。

 小鵬P7+のステアリングに関する品質問題について、小鵬汽車は次のように回答しています。

 「2024年に生産された一部の車両において、ステアリングの配線コネクターに嵌合(かんごう)隙間が大きすぎる事例があった」

 しかしながら、当該車種に重大な品質上の欠陥が存在するのか、またリコールを実施するかどうかについて、小鵬汽車はいまだに明確な回答を示していません。

(翻訳・藍彧)