今年の夏、中国各地では極端な気象が相次ぎ、全国的に甚大な被害が発生しています。南部や西南部では記録的な豪雨や竜巻が発生する一方、西北部や黄河流域では洪水や土石流が頻発しています。中国応急管理省によれば、2025年上半期(1〜6月)の自然災害による直接的な経済損失は5411億元に達し、被害の深刻さが際立っています。

 このような背景の中、8月7日午後、広東省肇慶市高要区の金利鎮・金盛工業区で、極めてまれな竜巻が発生しました。強風はわずか2〜3分間でしたが、その光景は現場の人々に強い衝撃を与えました。映像には、建物の屋根にあった鉄板や木材が突風で吹き上げられ、空中を旋回しながら舞い上がる様子が映し出されています。耳をつんざくような風の音とともに、破片が空を覆い、風が通り過ぎた後には看板や金属板などが地面に散乱していました。工場の屋根は大きくめくれ上がり、構造の一部が深刻な損傷を受けたということです。

 地元の男性は、「ちょうど店先に立っていたら、自分の店の看板が竜巻に引きちぎられ、目の前で車に叩きつけられた。こんなすごい風は生まれて初めて見た」と振り返ります。別の住民も、「家の前の鉄の柵がぐちゃぐちゃに壊された。こんな強い風は見たことがない」と話しました。金利鎮の副鎮長によりますと、被害は主に工場の屋根部分に集中しており、周辺の企業には安全点検を実施するよう指示したということです。

 翌8日には、肇慶市高要区気象局と仏山市竜巻研究センターが合同で現地調査を行い、この竜巻は7日午後3時12分ごろに発生したことを確認。初期分析では、中国の竜巻4段階分類の中で最も弱い「弱竜巻」に該当するとしています。

 一方、西南地区の四川省では、8月9日夜から10日未明にかけて激しい雨が市民生活を直撃しました。四川盆地を中心に強い雨が降り、成都、徳陽、楽山など広い地域で暴雨から大暴雨に達しました。成都市内では深夜、激しい雷鳴とたたきつけるような雨で多くの住民が目を覚まし、成都気象台は10日午前5時30分に暴雨黄色警報を発令。市民に対し不要不急の外出を控えるよう呼びかけました。

 観測データによりますと、成都市内の一部観測地点では6時間降水量が80ミリを超え、短時間の強い雨と雷が重なって低地が急速に冠水しました。通勤時間帯には道路の多くが通行困難となり、車を押して水を渡る人の姿も見られました。徳陽市では局地的に1時間40ミリを超える大雨が降り、綿竹や什邡などの一部町村では水深30センチ以上の浸水が発生しています。

 楽山市では10日朝、岷江の水位が数時間で1.2メートル上昇し、川沿いの遊歩道が水没しました。防護柵沿いには警戒線が張られ、職員が常時巡回して警戒にあたっています。眉山市東坡区の古い住宅地では雨水が建物内に逆流し、地域スタッフが住民の家財を移動させる手助けを行いながら、ポンプ車を投入して夜通し排水作業を行いました。四川省気象台は、8月12日まで盆地の広い範囲で強い雨が続く見込みで、一部では風速8級以上の暴風を伴う可能性があると警告しています。

 さらに西北部の甘粛省では、8月7日夕方から榆中県で12時間にわたる極端な大雨が降り、洪水と土石流が発生しました。水は滝のように山全体から流れ落ち、巨石や泥、折れた木々を巻き込みながら村を飲み込みました。

 榆中県城に住む王林(仮名)さんは、「家や車が一瞬で流されていくのを見て、言葉を失った。真っ先に思い浮かんだのは馬坡郷馬蓮灘村に住む祖母のことだったが、何度電話してもつながらず、通信が途絶えたと悟った」と話します。「洪水は一方向からではなく、山全体から押し寄せてきた。破壊力は想像を絶するものでした」とも語りました。

 城関鎮に住む趙さんは、「その夜は7階にいたのに、建物全体が揺れているように感じ、怖くて外に出られなかった」と証言しています。近隣の村は被害が特に深刻で、通信が今も回復していない地域もあります。

 最も甚大な被害を受けたのは馬蓮灘村新窯湾社で、村は一夜にして土石流に飲み込まれました。26歳の村民・張克輝さんは、「夜中に突然停電し、山から大きな轟音が響いた。翌朝、山を越えて見ると村は巨石と洪水に覆われ、家屋は倒壊し、行方不明者の数もわからない」と話します。生き延びた住民によると、暗闇の中必死に高台へと走った人もいれば、木にしがみついて助けを求めたものの、濁流にのまれた人もいたということです。

 被害は新窯湾社だけでなく、同村の他の二つの集落にも及び、10キロ以上離れた興隆山景勝地も壊滅的な被害を受けました。省級文化財である「握橋」は洪水で流失し、園内の建物も損壊、多くの車両が流され、一部観光客は一時孤立しました。

 甘粛省当局によりますと、8月9日午前6時30分時点で、この洪水災害により15人が死亡、15人が負傷、28人が行方不明となっています。被害は5つの郷鎮に及び、道路102キロ、橋5本が破壊され、37の村で停電、通信基地局114基が停止。1万人以上が連絡不能になり、飲料水施設や堤防も被害を受け、2万4千人の飲み水が影響を受けました。農作物の被災面積は3,620ムーに及び、住宅2,540戸以上が損壊、被災人口は3万人を超えています。9日未明の時点で災区の4割が依然として停電状態にあり、51本の道路が寸断されていて、復旧作業と捜索救助が続けられています。

 広東の竜巻、四川の豪雨、甘粛の洪水と土石流——わずか数日の間に相次いで発生したこれらの極端気象は、各地の生活に大きな打撃を与えました。頻発する異常気象の中、防災・減災への備えと対応力を高める重要性が改めて浮き彫りになっています。

(翻訳・吉原木子)