新しい家とは、本来であれば安心して暮らせる「生活の拠点」であり、人生の節目にふさわしい場所であるはずです。しかし今の中国では、その夢が簡単に崩れ去る現実があります。入居して間もないのに雨漏りが始まり、壁がひび割れ、苦情を申し立てても管理会社や開発業者が誠実に対応してくれない――そんな「悪夢のような日常」を送っている人たちが、いま全国各地に存在しています。

 重慶市渝北区の「芙蓉公館」に住む竇さんのケースは、まさにこの問題の象徴的な一例です。引き渡しからまだ2年も経っていないにもかかわらず、主寝室の天井からは常に水が滴り続けており、睡眠にも支障をきたしています。彼女はやむを得ず、天井に貼った吸水用のナプキンやおむつを毎朝交換するのが日課になっていました。施工会社に何度も修繕を依頼したものの、塗装を塗り直すだけで根本的な防水構造には手をつけず、問題は何ひとつ解決しないままです。

 この異常事態がネット上で拡散され、「新築住宅で2年間おむつ生活」という皮肉な話題がSNSを賑わせ、多くの共感と怒りの声が寄せられました。しかし、その詳細を伝えた記事はほどなくして削除され、情報統制の存在を感じさせる結果となりました。

 似たような被害は、他の都市でも続出しています。たとえば上海市浦東新区の明康雅居で新居を購入した蔡さんは、入居からわずか2か月のうちに、寝室やリビング、キッチンなど複数箇所で漏水が発生しました。台風の際にはキッチンの窓枠に溜まった雨水が下の階にまで染み出し、隣人宅に被害を与える事態にまで発展しています。

 開発業者である「上海周康不動産」は、屋上の貯水タンクの不具合や排水溝の詰まりが原因だと説明し、部品の交換と清掃を実施したと報告しました。また、キッチンの水漏れについては「給湯器の排気口から雨水が入り込んだだけで、設置が完了すれば問題ない」と回答しましたが、蔡さんは「一時的に止まっているだけで、またどこかから水が出てくるのではないか」と不安を口にし、内装工事を延期しています。

 こうした問題は西安市でも報告されています。陳さんが購入した大手不動産会社の「精装住宅(内装付き分譲住宅)」もまた、外観は美しいものの、実際の居住環境は散々でした。浴室の壁からの水漏れに始まり、キッチンの天井から雨水がポタポタと垂れ、ガス管を伝ってコンロに流れ込むという危険な状態が続きました。何度も苦情を申し立てましたが、「外壁の防水処理がされていなかった」と言われるのみで、再発防止策は一切取られませんでした。

 販売時には「1平方メートルあたり1000元で、環境に優しく五年保証付き」とうたわれていたものの、その実態は低品質な材料とずさんな施工に満ちたものでした。モデルルームで使われていた豪華な素材も、実際の施工ではまったく異なる廉価品に置き換えられていたことも珍しくありません。

 南寧や河南省駐馬店市などでも、同様の精装住宅トラブルが続出しています。未仕上げの床下、サビだらけの水道管、床のたわみなど、信じられないような欠陥が放置されたまま引き渡されるケースが後を絶ちません。

 北京市内で住宅監理を専門とする趙氏は、「トイレの床下に建設廃材を詰めていた例もあり、時間が経てば悪臭や浸水、沈下のリスクが出てくる」と指摘します。彼によれば、開発業者はモデルルームにだけ高級素材を使い、実際の施工ではコスト削減のために粗悪な材料を使用することが常態化しているといいます。

 そもそも精装住宅という形態そのものが、価格規制を避けつつ利益を最大化するための仕組みとなっているのが現状です。「高品質」をうたいながら実態はコストカット――これが今の住宅業界の現実なのです。

 さらに問題なのは、被害に遭っても住民側が泣き寝入りせざるを得ないことが多いという点です。中国では現在、新築物件が中古物件よりも安くなっている「価格逆転現象」が広がっており、多くの人が「買えただけでもありがたい」と感じ、明らかな欠陥があっても声を上げづらい状況にあります。しかも、責任の所在が不明確で、証拠を集めるのも難しく、苦情手続きも煩雑であることが問題の解決を一層困難にしています。

 内装業者の張さんは、「建物そのものの質が悪ければ、内装をどれだけ丁寧にしても意味がない。けれど、私たちは施工だけを請け負っているので、それ以上のことには口を出せない」と吐露します。

 専門家たちは、契約書には使用材料のブランドや等級、環境基準、保証内容を明記し、引き渡し時には第三者専門家とともに現場を細かくチェックするよう強く勧めています。後に争いが起きた際に、こうした記録が損害賠償請求の根拠となるからです。

 しかし現実には、多くの購入者が工事の内情を把握することなどできず、夢を託して購入した新居で、天井におむつを貼って暮らすという皮肉な状況に追い込まれているのです。華やかな広告の裏で、見えない問題を抱えた住宅が今も増え続けています。

(翻訳・吉原木子)