最近、中国四川省江油市で発生した少女へのいじめ事件が大きな波紋を呼び、地元当局への不信感と社会への不満が爆発し、大規模な抗議活動へと発展しています。

 問題となったのは、14歳の女子生徒が複数の同年代の女子達から未完成の建物に連れ込まれ、無理やり服を脱がされ、暴言を浴びせられ、集団暴行を受けた事件です。その一部始終が動画で撮影され、ネット上に公開されました。映像は瞬く間に拡散され、全国的なネットユーザー達の怒りを巻き起こしました。

 地元住民によれば、被害者の母親は聴覚と言語に障害があり、娘は以前から継続的にいじめを受けていたといいます。加害者たちは事件後、一時的に派出所に連行されましたが、「未成年」であることを理由にすぐに釈放され、実質的な処罰は下されませんでした。さらに、加害者の中には地元権力者の息女が含まれているとの噂もあり、市民の怒りをさらに煽る結果となりました。

 映像公開後、被害者の家族は繰り返し当局に訴え出ました。しかし、対応は極めて遅く、数日間にわたって何の進展もありませんでした。8月4日、江油市公安局はようやく通報を発表しました。しかし、その内容は「被害者は軽微な怪我」と結論づけ、2名の加害者に「治安処罰」を科した一方、それ以外の関係者については「指導にとどめた」と説明しました。

 この発表に対して、地元の保護者たちを中心に強い反発の声が上がりました。「警察は事件を矮小化し、加害者を擁護している」との批判が相次ぎました。

 その日の午後、数百人の市民が江油市政府庁舎前に集まり、被害者のために公正な処罰を求める抗議活動を開始しました。時間の経過とともに人数は増え続け、一部のネットユーザーは「今の中国では民意が鬱積しており、一つの不公正から社会的爆発に発展しかねない」と指摘しました。

 当初、市政府は一部の抗議者と対話するために、市庁舎の礼堂に誘導するなど、対話姿勢を示す場面も見られました。しかしその後、江油市を管轄する綿陽市から多数の特別警察が派遣された事により、状況は急激に緊迫化しました。

 現地から投稿された映像には、多数の市民が警察により強制的に逮捕され、「豚輸送車」と呼ばれる車両に押し込まれながら公然と連行される様子が映っていました。この行為は市民への侮辱および威嚇行為と受け取られ、さらなる怒りを招きました。

 この事に対して、市民たちは抗議を止めませんでした。その後、特別警察や公安に加えて、私服警察が群衆の中に紛れ込み、孤立した抗議者を次々と連行していく姿も目撃されました。群衆は歌を歌い、スローガンを叫びながら抵抗し、警察は唐辛子スプレーを使用して強制排除を進めました。多くの市民が負傷し、頭部から出血するなどの重傷を負った人もいます。

 深夜0時頃、当局は退去命令を出しました。しかし、多くの市民がそれに応じませんでした。特別警察は群衆に突進し、逃げ遅れた人々を暴行・逮捕しました。抗議者たちは散りながらも他の街区で再集結し、再び歌を歌いスローガンを叫び、逮捕された仲間を救出しようと行動しました。一部の市民は石やペットボトルを警察に投げつけるなど、現場は激しい衝突の場と化しました。

 SNS上には、現地からのライブ動画が多数投稿されており、街全体が混乱に陥っている様子が伝えられています。複数の地区で暴力と逮捕が続き、担架で運ばれる人、地面を引きずられる人の姿も確認されました。逮捕者の正確な人数は不明ですが、少なくとも数十人、多ければ数百人規模にのぼる可能性があります。

 一方、首都・北京では、「迎撃」の問題が再び注目されています。これは、地方から上京し、政府に陳情を行おうとする市民を、地元当局の職員や警察官、さらには雇われた民間人が拉致し、強制的に地元へ送り返すという行為です。

 最近SNSで拡散された映像には、白髪の高齢女性の陳情者が2人の若い男に無理やりバンに押し込まれる様子が映っていました。車内には制服姿の警察官が乗っており、拉致が組織的に行われていることが伺えます。女性は必死に叫び、助けを求めていました。

 周囲にいた他の陳情者たちは車を取り囲もうとしましたが、バンはそのまま走り去りました。一方、陳情者の男性数人が拉致関係者の1人を取り押さえ、警察に通報しようとしましたが、もう1人の実行犯が現場に戻って仲間を救出して逃走しました。

 こうした拉致行為には、地元公安や民間ガードマンが関与しており、地方政府が多額の予算を投じて陳情者の強制排除を行っているとみられます。北京当局は、一部の拉致実行者に対し、形式的な処罰を行い、「法に基づく請願制度」を維持しているかのように装っています。しかし、実際には暴力的かつ違法な対応が常態化しているのが実情です。

 今回の江油市での抗議騒動と、北京での拉致行為は、いずれも現代中国における制度の不全と、市民の怒りが蓄積されている現状を象徴する出来事といえるでしょう。制度内で正当な訴えが無視され、司法が権力の側に立ち続ける中、いじめ事件や拉致といった一見「局所的な不正義」が、社会全体を揺るがす引き金となる可能性は否定できません。

(翻訳・吉原木子)