7月27日、北京市とその周辺地域では記録的な豪雨の影響により、広範囲で洪水や土砂災害が発生しました。北京市密雲区、懐柔区、平谷区などでは、少なくとも9つのダムが同日に放流を実施し、山間部に設けられた352本の洪水用水路がすべて閉鎖されました。

 懐柔区の山間部では、多くの村が断水・停電に見舞われ、ある村の周辺では5カ所で土石流が確認されています。北京市は現在も「地質災害気象リスク特別警報」を発令し、住民に警戒を呼びかけています。
 
 延慶区、懐柔区、密雲区では、26日から27日にかけて激しい雨が続き、26日夜には「暴雨特別警報」が出されました。密雲ダムでは27日午後3時から放流が始まり、当初は毎秒80立方メートルだった放流量が、午後4時には400立方メートルまで引き上げられました。この放流と豪雨が重なったことで山間部では鉄砲水が発生し、流木や泥水が村々に流れ込んだと伝えられています。
 
 特に懐柔区にある大地村では被害が深刻で、道路が多数封鎖され、通信も途絶えた状態となりました。現地では「2023年に房山区を襲った豪雨災害に匹敵する」との声も上がっており、住民の間に不安が広がっています。
 
 北京青年報によると、大地村付近では5カ所で土石流が発生したほか、懐柔区と密雲区の境界にある青龍峡ダムでも同日朝に放流が行われ、周辺の道路が冠水しました。懐柔区では27日だけで、懐柔ダム、北台上ダム、大水峪ダムの3つが同時に放流を実施しています。
 
 SNS上では琉璃廟鎮と連絡が取れない、通信塔が倒壊しているなどの投稿が相次いでいます。懐柔で災害復旧に従事する作業員の家族によれば、「27日未明から雨が激しくなり、夫も現場へ向かった。懐柔では昨晩から多数の地質災害が起きている」とのことです。
 
 27日夜、ある旅行ブロガーは「懐柔の山間部では特大の豪雨が続き、現在は通信も遮断され、京加路や四宝路は土砂崩れで通行止め」と注意を呼びかけています。また、「北京方面に急ぐ場合は、宝山寺検問所から灤赤路、劉干路、香龍路を経由するルートが通行可能」としています。
 
 一方、平谷区では同日、海子、西峪、黄峪、楊家台、花峪の5つのダムが同時に排水作業を行いました。北京青年報は通常の「放流」ではなく「排水作業」との表現を使用し、異例な事態を報じています。平谷区水務局は「上流からの水量が急増し、区内の河川では水位が急激に上昇している」と説明しています。
 
 また、豊台区や房山区を流れる永定河の上流に位置する官庁ダムでも放流が開始され、午後5時には再び強い雨が降り出しました。SNS上では「門頭溝河の周辺住民は直ちに警戒を」との呼びかけが広がりました。
 
 北京市当局は27日午後7時、再び地質災害特別警報を発令し、懐柔区、延慶区、平谷区、密雲区を対象地域としました。房山区と昌平区には警報、海淀区には注意報が出されています。中国中央テレビも、市内の9つのダムが同時に放流しており、352本の山間用水路が封鎖されていると報じています。
 
 さらに、北京市の下流に位置する河北省でも被害が深刻化しています。阜平県では山崩れにより2人が死亡、2人が行方不明となり、灤平県では4人が死亡、8人が行方不明と伝えられています。承徳市では洪水が家屋の屋根に達するほどの勢いで、隆化県張三営鎮通事営村では断水・停電・通信遮断の状態が続いています。
 
 ある住民は「庙宮水庫の放流によって、周辺の農地やビニールハウスが水没し、多くの村人が一斉に避難した」と語っています。この住民によれば、「橋が流され、張太営の広大な稲作地帯も完全に浸水した。私自身は現在、県都に避難しているが、農村部の被害は甚大だ」と述べました。
 
 また、「密雲ダムは北京市の重要な水源だが、その上流にある庙宮水庫の管理が不十分だ」と懸念を示し、「北川、唐三営、張三営、龍潭后、辛店など、流域の多くの村が浸水した」と話しました。
 
 庙宮水庫は、承徳市囲場県の県都から南へ約30キロに位置し、伊遜河の本流上にある多機能型ダムで、災害防止、灌漑、発電などを目的とした大規模水利施設です。

(翻訳・吉原木子)