中国メディア「中国新聞網」の報道によると、7月15日、中国の人力資源・社会保障部(人社部)の公式ウェブサイトは、2025年7月1日時点における全国各省・自治区・直轄市の最低賃金標準を公表しました。
最低賃金とは、労働者が法定労働時間、または労働契約で定められた労働時間内に、正常な労働を提供した場合に、雇用者が法に基づいて支払うべき最低限の報酬を指します。
今年に入ってから、複数の省で最低賃金が引き上げられました。統計によれば、月額賃金の標準では、上海が2740元(約5.9万円)で全国トップ、海南省は2010元(約4.3万円)で最下位となっています。
インスタントラーメンも買えない水準
この発表を受けて、ネット上では不満の声が噴出しています。
「この給料じゃ、毎日インスタントラーメンすら食べられない」
「は?この金額で最低限の社会保険料を払ったら、残りのお金でどうやって生活するの?」
「専門家たちは、この最低賃金で2か月間生活してみてくれ。どうやって生き延びるのか、ぜひお手本を見せてほしい」
「最低賃金って、企業が法の抜け穴を突くための仕組みでしょ。給与がどれだけ高くても、基本給はすべて最低賃金扱いで、残りはすべて業績手当。残業代が出なかったり、出ても最低賃金に基づいて計算されたりするんだよ」
「これはただの食うに困らない程度の賃金でしかない。清掃員はだいたいこの水準の賃金に、廃品回収で得る数百元(数千円)の副収入を加えてやっと暮らしている。多くの工場労働者も同じような給料で、手取りが多くなるのは基本的に残業代のおかげ。土日や夜の残業時間を全部足して、業績手当も少し加えて、ようやく4000〜5000元(約8.7〜11万円)になる。7割の労働者がこの水準で、それ以上となるともっと残業している。たとえばデリバリー宅配なんかは、毎日12時間以上働いていて、まさに競争社会の王者だよ」
深セン市在住のあるネットユーザーは、中国当局が定める最低賃金と台湾の最低賃金を比較しました。
彼女はこう語っています。
「台湾の今年の最低賃金は2万8590台湾ドルで、人民元に換算すると約7000元(約15万円)に相当し、上海や深センの最低賃金の2倍以上にあたる。2015年の台湾の最低賃金は2万台湾ドルだったため、10年間で42.9%上昇したことになる。一方、深センの2015年の最低賃金は2030元であり、10年間の上昇幅はわずか24%にとどまっている」
なぜここまでの差が生じたのでしょうか?このネットユーザーは言葉を濁し、それ以上は語りませんでした。明らかに、中国当局による言論弾圧への恐れから、真実を語ることができなかったのです。
「外国では、労働者がストライキによって賃上げを実現できるのは、労働組合が主導しているからだ。外国の労働組合は労働者のために発言する存在である。だが中国では、労働者が組合費を支払っていても、実際には何の役にも立たない。なぜなら、労働組合は企業の資金によって維持されているからだ」
このネットユーザーは率直に問いかけています。「なぜ中国の一般労働者の賃金はこんなにも低いのか。誰が賃上げを妨げているのか」と。彼は「外国の労働者は労働組合を通じて自らの権益を主張できるが、中国の労働者にはそれができない。その根本的な原因は、政治体制の違いにある」と明確に指摘しています。
彼があえて口にしなかった本音は、「労働者の賃金を抑え込んでいるのは中国共産党である」ということです。
ある労務専門家は、「いわゆる基本給とは、労働者がかろうじて生き延びられる程度のもので、それ以上のことは何も望めない。最低賃金とは、端的に言えば、個人が社会の中で最低限生きていくための生活保障にすぎない。発展のことなど考えず、ただ生存だけを保障するものである」と語っています
最低賃金2420元 北京で生き抜くには「極限生存法則」が必要
2025年現在、北京市の最低賃金は月額2420元(約5.2万円)と定められています。しかしこの金額で首都・北京に暮らすことは、至難の業です。そこでネット上では、民間の知恵による「極限生存術」が共有されています。理想的な環境下であれば、かろうじて収支の均衡が取れるかもしれません。
まずは住居です。北京市内の賃料は高額のため、郊外の昌平区(しょうへいく)や房山区(ぼうざんく)などでシェアハウスを借りるのが現実的な選択となり、家賃は月800〜1000元(約1.7万円〜2.2万円)に抑えられます。光熱費やガス代などを折半すると、追加で150元(約3300円)程度が必要です。
次に食費ですが、混雑する時間を避けて買い物をし、自炊を徹底すれば、月あたりの食費はおおよそ600元(約1万2000円)に抑えられる可能性があります。毎日19時以降にはスーパーの生鮮食品が値引きされ、葉物野菜は1斤(500グラム)で1元(約20円)、肉類は半額になります。食用油や穀物類は市場で購入すれば、スーパーマーケットより30%安くなります。平日に弁当を持参すれば、月の食材費は約400元(約8000円)に収まり、外食も週に1回、人あたり30元(約600円)以内に抑えることができます。
交通手段は、バスとシェア自転車に限ります。バスの運賃は片道0.4元(約9円)、地下鉄は3〜7元(約70〜160円)ですが、極限節約を目指す場合は地下鉄の利用を避け、交通費を月80元(約1700円)にまで圧縮できます。シェア自転車の月額パスは15元(約330円)で、徒歩と組み合わせれば短距離の通勤には対応可能です。ただし、遠郊の物件には適用が難しいという欠点もあります。
日常の消費を割引品や中古市場に限定すれば、月平均200元(約4000円)に抑えることができます。特定のプラットフォームを利用して、使用期限が迫った日用品を買い、ティッシュペーパーや洗剤などをまとめ買いすれば、価格はスーパーの3割程度になります。また、中古品のプラットフォームで古着や小型家電を購入すれば、平均価格は20〜50元(約400〜1000円)ほどです。
医療費を節約するためには、健康保険の継続加入が前提です。軽度の病気であれば、地域の診療所を利用すれば初診料は10元(約220円)程度で済み、大病による経済破綻を回避できます。
月収2420元で北京に暮らすには、極限まで生活を切り詰め、「月光族(給料をすべて使い果たす人)」になるしかなく、わずかな余裕も許されないのが現実です。
最低賃金で生きる人々 希望なき未来と過酷な現実
中国当局は「世界第2の経済大国」であると自称していますが、各地の最低賃金は今なお月2000元(約4.3万円)前後にとどまっています。現代の生活コストを考慮すれば、都市部での2000元の収入は、もはや「生存すら困難」な水準です。
2023年1月の統計によれば、中国人の平均労働時間は週49時間に達し、過去最高を記録しました。無数の現場労働者が、終わりなき残業と疲労の中で働き続けています。
一部の製造業大手では「週5日・1日8時間」の勤務制度の導入を検討していますが、これには多くのライン作業者から反対の声が上がっています。その理由は、基本給が2000〜3000元(約4万円〜6万円)と低く、仮に週5勤務に移行すると、保険や年金の天引き後の手取りが生活費を下回ってしまうからです。そのため、多くの労働者は残業を余儀なくされています。
最低賃金の引き上げは毎年行われているものの、その上昇幅は生活コストの上昇に比べてあまりに小さく、「焼け石に水」の状態です。
たとえば、上海の最低賃金は2740元(約5.9万円)ですが、2015年の時点で、国際的な調査機関は「上海で生活するには月4136元(約8.9万円)が必要」と報告していました。2025年現在では、この金額はさらに上昇し、月5114元(約11万円)が必要だと試算されています。最低賃金と実際の生活コストとの間には、あまりにも大きな乖離が存在しているのです。
(翻訳・藍彧)
