最近、北京や浙江省など中国の複数の省の政府機関や国有企業で、再び減給やリストラが実施されたという情報が相次いでいます。公務員、中央企業のホワイトカラー、民間企業の社員に至るまで、ほぼすべての階層の家庭が財布のひもを締め、「節約生活」を余儀なくされています。

 オフィスから市場まで、収入の急減が連鎖反応を引き起こし、消費への信頼が一気に崩壊しつつあります。ある評論では、中国社会において、深刻な経済・社会信頼の危機が静かに現れ始めていると指摘されています。

 ラジオ・フリー・アジアの報道によれば、経済状況の悪化が続く中、2025年初頭から、中国の一般家庭が感じる生活の重圧はますます強まっています。北京で働く李さんは、中央企業に勤める現場従業員で、6月16日のインタビューでは次のように苦しい胸の内を語りました。
 「これまでは月収6000元(約12万円)でしたが、今では5000元(約10万円)になりました。一部の手当もなくなりました。妻の会社(民間企業)では、給料を減らされた人もいれば、7月末で解雇通知を受けた人もいます」

 北京の国有企業で働く馬さんは、2023年以降、会社がすでに2回の給与削減とリストラを行ったと明かしました。「基本給が減らされ、食事手当や交通手当もカットされました。今年の減給幅は職位によって5%〜20%です。以前は2〜3人でやっていた業務も、今は1人でこなさなければならず、現場は猫の手を借りたいくらい忙しいです」

 生活を維持するために、副業を探すしかない社員も増えています。呉さんは無念そうに語りました。「今は外で仕事を探すしかないのです。でも簡単には見つからず、知人に頼んで企業の外注デザイン業務を紹介してもらっている状況です」

 公開されている情報によれば、2025年から、中金公司(中国国際金融有限公司)や国家開発銀行などの中央企業が相次いで「コスト最適化策」を打ち出し、経費削減に踏み切っています。

 財新網の報道によると、中国ではすでに27の中央金融企業が報酬制限措置を導入しており、対象は主に中・上級管理職と社員の給与です。一部企業では年収の上限が100万元(約2000万円)に設定され、中・上級職の報酬は半減する可能性もあるとのことです。

 中金公司のある社員は、メディアにこう語りました。「うちの会社の社員全員が減給されました。最下位の職位でも5%の減給で、中高層の従業員はさらに大幅な削減が噂されています」

「象徴的」だった公務員の減給、実質的な削減に変化

 公務員も例外ではありません。浙江省諸曁(しょき)市の鄭さんは、同省内の公務員の大多数が減給対象になっていると語ります。「私の友人が公務員ですが、今年は一般職の年収が5〜6万元(約100〜120万円)も下がったと聞いています。課長級以上は8〜10万元(約160〜200万円)、それ以上の役職では15万元(約300万円)近く減らされたと聞きました。2年前にも一度減給されていて、今年は再びの減給です」

 山東省青島市の住民・耿(こう)さんも同様の状況を語っています。「親戚が県の公務員なんですが、ある郷鎮(町村)幹部の給料がカットされていると聞きました。7割しか支給されず、しかも支給が遅れています。今では県の財政も厳しく、派出所(交番)の警察官の福利厚生も以前より少なくなったようです」

 広東省のある法律関係者は、多くの地域で警察官の年収が大幅に下がっていると指摘します。
 「年収は一昨年の30万元(約600万円)から、今では20万元(約400万円)になったケースもあります」

 広東省東莞市(とうかんし)の国有銀行に勤める中間管理職の社員は、「私たちはここ2年間で30%減給され、業績手当もほぼ全額削減されました」と明かしました。

冷え込む消費市場 デフレの波がじわじわ拡大

 企業や公務部門の大規模な給与削減・リストラが進む中、国民の消費能力と意欲が著しく損なわれ、消費市場全体が急速に冷え込んでいます。山東省の孟(もう)さんは、政府が何度も「内需拡大」を叫んでいるものの、実際には効果が限定的だと語ります。「価格競争が多くの小売業者の最後のあがきになっています。例えば、うちの地域では上質なスペアリブが1斤(約500g)でわずか12元(約240円)、生きた豚の買い取り価格は数元(200円未満)です。豚肉価格が暴落し、飲食店も生き残りをかけて必死に値下げしています。これは競争ではなく、共倒れです」

 北京市海淀区の蘇(そ)さんも将来への不安を語ります。「うちの近所のスーパーは、今まさに価格を必死に下げています」

 彼女によると、家庭の消費支出も大幅に削られており、まずブランドを変更し、次に外食や娯楽の頻度を減らしているそうです。「今では家族の外食は毎週土曜に1回だけです。以前は週に2〜3回行っていました」

 中国当局は、2025年第1四半期の経済が「全体として安定している」と発表していますが、各地の財政状況はまったく異なる実情を示しています。例えば、浙江省の公共予算収入は前年比でわずか0.2%の増加にとどまり、税収はむしろ0.3%減少し、非税収入は1.8%増加しましたが、その大部分は罰金や「非通常の収入項目」によるものでした。

社会全体に拡がる「緊縮の連鎖」 信頼危機が拡大

 江蘇省の経済学者・呉勤学(ご・きんがく)氏は、中央企業の減給、民間企業の倒産、小売業者の過当競争の背景には、地方財政の悪化があると指摘しています。彼はこう述べました。

 「政府に人件費を支払う余裕がなくなり、国民はお金を使う意欲を失っています。官僚機構の減給から一般市民の消費崩壊に至るまで、社会全体に上から下へと広がる『緊縮の連鎖』が静かに形作られているのです」

 呉氏はまた、次のように分析しました。「公務員の減給はまだ序章にすぎません。本質的な問題は、民間の消費意欲が失われ、企業の成長意欲も萎縮しており、社会全体の経済的想像力が急速にしぼんでいるという点です」

 取材のなかで、「激しい競争」「デフレ」「減給」「慎重な消費」といった言葉が、いまの中国経済を象徴するキーワードとなっていることが浮かび上がりました。呉氏は次のように警告します。

 「『緊縮生活』が単なるスローガンならまだしも、それが日常となり、さらには『日常すら持てない』状態に変わってしまえば、社会の柔軟性や信頼そのものが極限まで試されることになるでしょう」

 金融大手から地方の公務員、大都市の飲食業者から地方の幹部まで、社会全体に広がるこの「節約生活」は、加速度的に浸透しています。減給・リストラ・デフレの三重の圧力に直面する中、中国経済と国民の信頼の転換点は、まだその始まりに過ぎないのかもしれません。

(翻訳・藍彧)