広東省佛山市(ふっさんし)順徳区(じゅんとくく)衛生健康局は7月15日、初めてチクングニア熱の感染を公表しました。報告によれば、7月8日に海外からの輸入症例が確認され、15日時点で区内の確定症例は478人に達したということです。

 中国のニュースサイト「環球網」が7月19日に動画共有サイト「ティックトック」で伝えたところによると、感染者数はすでに1193人に上り、個人レベルでの感染リスクがさらに高まっているとのことです。佛山市の複数の区では「全市民への通知書」を発表し、7月19日・20日にかけて、蚊の繁殖地の除去と成虫の駆除を目的とした衛生キャンペーンを呼びかけました。

 台湾の衛生福利部疾病管制署によると、「チクングニア熱」は蚊に刺されることで感染する急性のウイルス性伝染病で、症状はデング熱に非常によく似ています。しかしデング熱と異なり、一部の患者には数週間にわたる強い倦怠感が残り、関節痛により歩行が困難になり、数か月間続くケースもあります。なお、「チクングニア」とはアフリカの部族語で「痛みがひどく体を丸めてしまう」という意味です。

情報隠蔽に怒る国民

 感染が判明してから公表されるまでに時間を要したことについて、地元住民らは7月17日に順徳区の衛生当局を批判する専用のネット掲示板を開設し、不満を公に表明しました。

 ある住民は次のように疑問を呈しました。「通知では8日に感染を確認したとあるが、11日にはすでに関連部門が楽從鎮(らくじゅうちん)の商業施設にイベントの中止を要請していた。なぜもっと早く防疫措置を発表しなかったのか?なぜ15日になって突然478例を公表したのか?」

 また別の住民はこう指摘しています。「8日に感染が判明してから15日に公表されるまで、7日間もかかっている。これは『伝染病予防法』で規定された24時間以内の報告義務を明らかに超えている。公表される前から同僚に『数日前から感染が広がっている』と聞いていた。どんどん悪化しているのに、(中国)当局は何もしてこなかった。」

 また、別の住民は「私の身近な人間関係は広くないが、それでも多くの人が感染しているのを目にした。それがこの病気の深刻さを物語っている」と投稿しています。

 もっと率直な意見も見られました。「中国当局が感染者数を隠さなかったことなんて、これまで一度でもあっただろうか?地元民として断言できるが、去年のデング熱の流行時も、実際の感染者数と公表された数字には数倍の開きがあった」

 現地の感染者からも証言が得られています。「昨年、私たち夫婦がデング熱に感染したとき、マンションの全フロアで感染が広がっていた。でも中国当局は実際の数字を全く公表しようとしなかった」

 また、「今回公表された人数も信用できない」と語る住民もいます。「なぜなら、楽從区の病院では15日の時点ですでにベッドが満床だった」

 公開された資料によると、チクングニア熱はウイルス性感染症で、人から人へは感染しません。潜伏期間は3〜7日です。症状は高熱、激しい関節痛(動けないほど)、発疹などがあり、悪寒、頭痛を伴うこともあります。現時点ではワクチンも特効薬も存在しません。

 ある医師は、チクングニア熱とデング熱を比較する表を作成し、ネット上で一般向けに情報を発信しています。

女性患者が語る誤診から回復までの経過

 佛山市在住のある女性は、SNSで自身の症状と診断の経過を投稿しました。彼女によれば、7月6日に手足にぽつぽつとした発疹と関節痛が現れ、7日に市内の皮膚科を受診した際には「急性じんましん」と診断されました。しかし9日に発疹がさらに広がり、結膜炎も併発したため再び同じ医療機関を受診しましたが、このときも「じんましん」との診断でした。

 10日には微熱が出て発疹が急激に広がり、関節の激痛が始まったため、市内の発熱外来を受診しました。医師が写真を撮影して佛山市の疾病対策センターに報告し、デング熱の検査を行いましたが陰性でした。その後、採血した血液でチクングニア熱の検査を行った結果、陽性と判定されました。

 この患者は「外来の記録には検査報告書が記載されておらず、病院から電話がかかってきて『陽性だった』とだけ告げられた。薬を処方され、自宅で1週間厳格に隔離するよう指示された」と述べています。

 彼女が最初に症状を訴えたのは6日と述べましたが、疾病管理センターが発表した報告書では8日に輸入性感染症が検出されたと記載されており、現地の患者が提供した情報と明らかに矛盾しています。地元住民の間では「なぜ疫学調査を行わないのか」との疑問も噴出しています。

 その後、患者の発疹は2日連続で全身に広がり、関節痛、38度の発熱、寒気、リンパ節の腫れと痛み、結膜炎も発症しました。16日には症状はほぼ消失したものの、リンパ節の腫れは完全には引いておらず、体力も落ちており、力仕事はできない状態だと語っています。

 また、他の患者からは「痛みでベッドから下りられない」「階段が降りられない」「痛みで眠れない」といった深刻な声も上がっています。

警察が自宅訪問し強制隔離 病院は満床に

 この女性は、自分は初期の感染者だったため、自宅の蚊帳の中で隔離されたと説明しました。しかし、その後の感染者については全員が病院に隔離されるようになり、「入院者が多すぎてベッドが足りていない」と話します。

 広東省のある患者の夫も、「妻が感染するとすぐに病院に隔離された」と証言しています。

 順徳区の別の女性患者は、「自分はすでに回復したにもかかわらず、警察に連行されて病院に隔離された」と訴えています。彼女は7月16日に関節痛・発疹・発熱が出て、すぐに病院で血液検査を受け、薬を処方されました。17日には38.5度の熱が続き、再び病院で解熱剤と注射を受けてその夜には解熱しました。

 「ところが18日の夜、警察官3人が自宅に来て、『検査結果が陽性だったので病院に行け』と言われ、住民委員会に連れて行かれた。市第四病院に行き、検温、血圧測定、心電図検査を受けた。医師や看護師たちは「こんなに元気な人が入院するなんて」と苦笑していた」と語ります。

 この患者はまた、「入院費も自己負担だと聞いて、馬鹿げていると思った。医療資源は本当に必要な人のためにあるべきではないのか」と不満を述べています。

 また、広東省禅城区(ぜんじょうく)のネットユーザーは「家族が数日前に発熱し、血液検査を受けたが、疾病管理センターからの電話を取り損ね、折り返してもつながらない。今はほとんど回復しているが、もし隔離のために警察が来たらどうしようと心配している。まるで悪夢だ」と投稿しています。

 現在、広東省ではチクングニア熱とデング熱が同時に流行しており、医学的にはこの2つのウイルスが同時に1人の体内で感染することも可能です。

 中国のネットユーザーによると、現在広州市の多くの地域でデング熱の予防を呼びかける訪問活動が行われており、天河区(てんがく)や番禺区(ばんぐうく)など各地でも実施されています。

 チクングニア熱の死亡率は低いものの、浙江省中医薬大学附属医院の主任医師は「現在が特に危険なのは、高温と暴雨が同時に発生している時期で、蚊の繁殖が活発化しているからだ」と警告しています。

チクングニア熱の基本情報と予防策

 チクングニア熱はチクングニアウイルスによって引き起こされ、通称ヒトスジシマカと呼ばれる蚊に刺されることで感染します。年齢に関係なく、誰でも発症する可能性があります。

 感染後、通常3〜7日以内に、発熱・激しい関節痛・発疹といった症状が現れます。筋肉痛、頭痛、吐き気、倦怠感などを伴う場合もあります。多くの患者は軽症で、1週間ほどで回復しますが、重症化や死亡例は稀です。

 発熱・関節痛・発疹などの症状が出た場合は、速やかに正規の医療機関を受診することが推奨されます。早期の対症療法によって、不快な症状を緩和することが可能です。

(翻訳・藍彧)