中国南部を中心に猛威を振るった台風6号の影響が、各地で深刻な被害をもたらしています。7月20日に広東省へ上陸した台風6号は、その後も暴風雨を伴いながら広範囲にわたって移動し、山東省では集中豪雨による土砂災害が発生しました。特に山東省済南市莱蕪区では、大雨によって2人が死亡、10人の行方が分からなくなっており、救助活動が続けられています。

 中国メディアによりますと、莱蕪区では7月22日午前0時から5時にかけて、最大で364ミリの豪雨が観測されました。この雨により、大王荘鎮の石屋子村や朱家峪村周辺で山津波が発生し、19棟の住宅が倒壊または損壊しました。現在も地元の救助隊が、行方不明者の捜索を続けています。

 こうした被害を受け、SNS上では現地住民から不安の声が広がっています。「朱家峪村の人たちとはまったく連絡が取れない」「上流で放流されたとき、ちゃんと通知したのか」「莱蕪の平均降雨量は80ミリ程度だったのに、大王荘では251ミリ、最大で427ミリも降った。あまりにも異常だ」といった投稿が相次ぎ、被害の甚大さが浮き彫りになっています。

 一方で、山東省内でも地域ごとに気象条件に大きな差があり、豪雨に見舞われた済南とは対照的に、他地域では深刻な干ばつが続いています。「畑のトウモロコシは葉が巻き、落花生の葉も裏返ってしまっている。雨がなければ全滅だ」「莱蕪から40キロ離れた新泰市では、ほとんど雨が降っていない」といった声もあり、極端な気象の偏りが農業にも打撃を与えています。

 台風6号は、20日午後5時50分に広東省江門市の沿岸に最初の上陸を果たした後、同日午後8時15分には陽江市の海陵島付近に再上陸しました。中心付近の最大風速は、それぞれ12級(約33メートル)、10級(約28メートル)に達したとされています。その後、台風は西部沿岸を時速約25キロで移動し、次第に勢力を弱めながら内陸部へ進みました。

 広東省では同日午前8時から午後5時までに、23の鎮や街道で100ミリを超える降雨が観測され、119の地域で50〜100ミリの雨量が記録されました。中西部沿岸や海上では平均風速10〜14級、最大15級、東部では8〜10級、最大12級の強風が吹き荒れました。

 さらに、深圳市では台風による被害の一環として、配達中のフードデリバリー配達員が倒木の下敷きとなって命を落とす事故が発生しました。この悲劇はSNSで広まり、多くのネットユーザーに衝撃を与えました。暴風の影響により、広東省内の企業や工場の一部では一時的に操業停止の措置が取られています。

 香港でも台風6号の接近により、市内全域が激しい風雨に見舞われました。20日午前9時20分、香港天文台は最高警戒レベルの「シグナル10」を発令し、2023年の台風以来の対応となりました。午前11時時点で、台風の中心は天文台の南東約60キロの地点にあり、今後1〜2時間以内に急接近し、南約50キロを通過する見込みであると発表されました。市民に対し屋内待機と警戒を呼びかけました。

 その後、堅尼地城近くの海上では3階建ての観光船「海龍明珠号」が高波により流され、埠頭に衝突する事故も起きました。船体は一部が大きく損傷しましたが、幸い負傷者は報告されていません。この様子はSNS上にも拡散され、「遊園地のバンパーカーかと思った」と皮肉を込めた投稿も見られました。

  ビクトリア・ハーバー周辺では、歩行者が風雨の中で動けなくなる場面も確認され、街路樹の倒壊や飛来物による被害が相次ぎ、街は一時ゴーストタウンのような様相を呈しました。香港病院管理局によりますと、午前10時までに男性2人が負傷し、救急外来で手当てを受けたということです。消防局と政府のホットラインには、倒木に関する通報が多数寄せられています。

 台風と集中豪雨の影響は全国に広がっており、水害への懸念が強まっています。中国水利部の発表によれば、7月21日から22日にかけて、吉林省の渾江や遼寧省の鴨緑江支流、山東省の黄河支流など全国48本の河川で警戒水位を超える洪水が確認されました。その中でも、大羅圈河では1972年以降で最大規模の洪水が発生し、複数の中小河川でも保証水位を大きく超える深刻な状況となっています。

 また、新疆ウイグル自治区では、猛暑による雪解け水の増加により、タリム川の一部で警戒水位を超える洪水が報告されました。中国水利部は、内モンゴル自治区や遼寧省など10の省・自治区に対し、洪水や山間部での鉄砲水、ダムの安全管理などに警戒を促す「一省一単」(各省 ごとに個別の対策リストや命令を出すこと)の通知を出し、各地での迅速な対応を求めています。

 異常気象が続く中、当局は今後も警戒体制を強化し、災害への備えを進めるよう呼びかけています。

(翻訳・吉原木子)