現在、中国各地では猛烈な熱波が続いており、7月に入ってから全国的に気温が急上昇しています。各地で観測史上の記録を更新する暑さが続き、特に陝西省や河南省、山東省などは、今回の熱波の「火炉(かろ)」と呼ばれるほど深刻な状況となっています。人々の生活や健康に深刻な影響が出ています。
陝西省の省都・西安では、複数の地域で気温が40℃を超え、街全体に息苦しいほどの熱気が漂っています。7月15日正午、西安の空にはハロ(日暈)が現れ、太陽をぐるりと囲む光の輪がくっきりと見え、多くの市民がその珍しい光景を写真に収めてSNSに投稿しています。「空を見上げたら、まるで火焔山に来たかと思った」といった声も上がっています。火焔山とは、中国西部にある猛暑で有名な地域です。
中国天気網によりますと、7月15日から16日にかけて今回の熱波はピークを迎える見込みで、河南省や河北省南部、陝西省関中地方、山東省西部、湖北省西部などが特に高温の中心になるとされています。一部地域では最高気温が39℃から43℃に達する可能性があり、過去の記録を更新する恐れもあります。
今回の猛暑は単なる気象現象にとどまらず、人々の暮らしに深刻な影響を与えています。SNSでは「河南にいるけど、焼き鳥になりそうだ」「大連でも暑すぎて、家で育てているサクランボの皮が柔らかくなった」など、各地から嘆きの声が寄せられています。
こうした中、悲惨な事故も相次いでいます。河南省信陽市では、37歳の配達員が40℃近い猛暑の中、配達中に電動バイクの上で倒れ、数時間後に発見されましたが、すでに手遅れだったということです。医師によりますと、典型的な熱射病で「血管が破裂していた」と述べています。中国のメディアによると、倒れた男性は鼻や口から大量に出血しており、一晩中救命処置が行われましたが助かりませんでした。専門家は、熱射病は体温が41℃以上に上昇し、意識障害を伴う非常に危険な状態だと警告しています。また、熱中症の際に冷たい水を一気に飲むのは避けるべきだとも指摘しており、急激な温度変化が胃けいれんや心筋梗塞を引き起こす可能性があると注意を呼びかけています。
SNSには、身近な人が熱射病で亡くなったという投稿も相次いでいます。ある人は「こちらでは火葬場が行列になっている。多くが熱射病で亡くなった人たちだ」と話し、山東省のネットユーザーも「最近、周囲で熱中症で亡くなる人が多い。先日だけで地域内で4~5人亡くなった。村では一日に3人も亡くなった」と証言しています。江蘇省では「義父も熱射病で亡くなった。最近、村でも1人亡くなり、隣の村でも数人が亡くなった」との声もあり、雲南省のネットユーザーは「身内や友人で3~4人が熱射病になったけど、誰も助からなかった」と語っています。河南省では「友人のお父さんが熱射病になり、冷たい水を飲んだあと倒れてしまい、肝不全や腎不全を起こし、もう4日間も意識が戻っていない」と深刻な状況を訴える声もあります。
「天気予報はいつも低めの数字ばかり伝えていて、本当の暑さを隠しているから、こんなことになるんだ」と、気象当局への不満もSNS上で噴出しています。また、「熱射病になるのはみんな底辺の労働者ばかりだ」と嘆く声も相次いでいます。
個人だけでなく、集団での熱中症事故も相次いでいます。6月末には江蘇省蘇州市で、高齢の夫婦が節約のためエアコンをつけず、自宅で亡くなるという痛ましい事故がありました。武漢市では、73歳の男性が連日の高温の中、扇風機だけで過ごしていたところ熱中症で倒れましたが、救命が間に合い一命を取り留めました。温州では、トラック運転手が車内の高温で体温が41℃以上になり意識を失い、救急搬送されています。広州でも同様の事例があり、34歳の男性が高温による熱けいれんを起こし、腎機能障害や横紋筋融解症を発症しましたが、救命処置によって助かっています。
山東省青島市の大学キャンパスでは、宿直室の室温が異常に高かったため、宿舎の管理人が急病で亡くなる事故も起きています。煙台市内の学校では、中学生120人以上が集団で熱中症にかかる騒ぎとなり、煙台南方学院でも学生が熱中症で救急搬送され、死亡したとの情報も一部で伝えられています。被害はさらに拡大している状況です。
北京市も例外ではありません。7月12日から14日にかけて高温黄色警報が発令され、最高気温は35〜36℃を記録しました。高い湿度が加わり、蒸し暑さが一層厳しくなっています。SNSでは「40℃の高温は北京にいる全員への罰だ」「北京では外を歩くと牛に舐められたような感覚がする」など、過酷な暑さへの不満が投稿されています。故宮を訪れた観光客の子どもたちが泣き出す動画も拡散され、子どもたちは「もう二度と北京に来たくない」と泣きながら訴えています。「暑いし疲れるし、物価も高く、宿泊代も異常に高い」といった声も多く、「夏にはもう絶対行かない」という意見も目立ちます。
北方に比べても、河南省の暑さは特に深刻です。昼間だけでなく夜も気温が下がらず、最低気温が30℃前後という異常な状況が続いています。7月14日には、全国の気温ランキングの上位10地点すべてを河南省が占め、鄭州など複数の都市で最高気温が40℃を超えました。中国のメディアによりますと、鄭州では連日40℃を超える日が続いており、夜間でも最低気温が33℃に達する恐れがあり、昼夜を問わず厳しい暑さが続くと見られています。
中国中央気象台や複数のメディアは、7月中旬以降も熱波の勢いが弱まる兆しはないと報じています。華北から華南にかけて広範囲で再び「高温ピーク」に突入するとされ、鄭州や西安などでは歴代最高気温を更新する可能性があるとのことです。
猛暑が続く中、SNSには熱射病による死者の情報や火葬場の混雑の様子が多く投稿され、嘆きや不安の声が相次いでいますが、公式メディアでの報道は非常に少なく、当局が実態を隠しているのではないかとの疑念も広がっています。人々の悲痛な声は、今回の歴史的ともいえる熱波が、中国社会に深刻な影響を与えている現実を示しています。
(翻訳・吉原木子)
