7月8日、中国南京市にある人気のザリガニ料理店が、強い腐食性を持つシュウ酸を使ってザリガニを洗浄していたことが発覚し、ネット上で大きな騒ぎとなっています。

  ネットユーザーの間では「下水道を掃除するような薬品を、食材を洗うのに使うなんて信じられない」「腐食性が強すぎて怖すぎる」といった声が相次いでおり、衝撃が広がっています。中国メディア極目新聞の報道によると、問題となっているのは「兄弟ザリガニ仙鶴門店」という店で、デリバリーアプリ上では評価が4.9点と高く、月に千件以上を売り上げるほどの人気を誇っていたそうです。しかし、関係者の話によれば、この店ではシュウ酸を使ってザリガニを洗浄していたということです。

 記者が潜入取材を行ったところ、店内の通路で従業員が強い酸臭を放つ溶液を使ってザリガニを洗っている様子が確認されました。監視カメラの映像には「シュウ酸AR分析純」と書かれた白い粉を洗浄用の水槽に投入する従業員の姿も映っていたそうです。従業員は「ザリガニ150斤(約90キロ)のうち、すでに100斤(約60キロ)は洗った」と話し、水道水で洗っていると主張しましたが、記者が「なぜ水からこんなに強い臭いがするのか」と問い詰めると、「何の臭い?ザリガニを2、3日水に漬けておくと生臭い泥の匂いがするものだ」と言い訳をしました。

 さらに取材によれば、この店では数日間にわたり同じ溶液を繰り返し使い続け、交換する様子はなかったといいます。酸臭が強い水で常にザリガニを洗っていたとされ、衛生管理のずさんさが浮き彫りになっています。店舗のホールは現在改装中ですが、販売には影響がなく、調理済みのザリガニはデリバリーで販売が続いているとのことです。

 7月9日、封面新聞の記者がこの店の常連客である王さんに話を聞きました。王さんは「初めて注文したときから味が良く、ザリガニもきれいで新鮮で、柔らかすぎずちょうどよい食感でした。梱包もしっかりしていて、何度もリピートしました」と語っています。また、「自分のアカウントで6回、家族のアカウントで1回、合計7回注文しました。妊娠中にお腹を壊したことがあり、体調のせいだと思っていましたが、今日このニュースを見て、もしかしたらザリガニに原因があったのかもしれないと感じています」と話しています。

 シュウ酸は本来、実験用の試薬で、中程度の強酸性を持ちます。金属のサビ取りや、トイレや排水管の洗浄などに使われますが、食品の洗浄には使用が禁止されています。専門家によると、シュウ酸はザリガニに含まれるカルシウムと結合し、摂取すると腎臓にダメージを与え、深刻な場合には腎結石を引き起こす恐れがあるそうです。

 このニュースは中国のネット上で大きな反響を呼び、多くのネットユーザーからは「シュウ酸なんて怖すぎる!服に飛んだだけで色が落ちるのに、それを体に入れるなんて信じられない」「本当に悪質だ!」など、怒りや恐怖の声が上がっています。

 一方、業界内からも証言が寄せられています。「私は6年間、料理人をしているが、規模の大きい店で1日に50斤以上のザリガニを扱うところは、ほとんどがザリガニを洗う為に粉洗剤を使っている。湖で獲れたザリガニは軽く洗えば済むが、田んぼで獲れたものは泥臭くて、徹底的に洗わないと商品にならない」と話す料理人もいます。別のネットユーザーも「正直、デリバリーのザリガニなんてどこも似たようなものだ。市場で買う白くてきれいなレンコンだって、同じようにシュウ酸で洗われているのが現実だ」と指摘しています。

 実際、中国における食品安全の問題は今回に始まったことではありません。2017年には広州の海鮮市場で、ザリガニやカニを白く見せ、生臭さを取るために「ザリガニ用粉末洗剤」や粉末漂白剤を使う業者が摘発されました。こうした粉末洗剤の多くはシュウ酸や亜硫酸塩を含み、一時的には見た目をきれいにできますが、人体に有害な残留物が残る恐れがあるとされています。

 また2018年には、重慶の有名な火鍋チェーンが、客が使い終わった火鍋の油を濾過・沈殿させ、新しい油と混ぜて再利用していたことが報じられました。この「古い油」は多いときで20回以上再利用されることがあり、過剰摂取によってアフラトキシンが体内に蓄積され、肝がんのリスクが高まる可能性が指摘されています。

 2019年にはCCTVの「3·15晩会」で、一部の火鍋店が辣油やタレに工業用パラフィンやケシ殻の粉末を不法に混入していたことが明らかになりました。ケシ殻には微量のアルカロイドが含まれており、長期摂取すると神経系に悪影響を及ぼす可能性があるといいます。

 さらに、2014年には浙江省温州市で大規模な「地溝油」事件が摘発されました。犯罪グループは飲食店や食品工場から回収した廃油を簡単に処理し、再び飲食業者に販売していました。この油は学校や中小の飲食店など数百店舗に流通していたといわれています。

 今回の南京のザリガニ店によるシュウ酸洗浄事件は、こうした食品安全問題の氷山の一角にすぎないといえます。ネット上では「中国で食べるものには、もう全部問題がある気がする」「薬以外のものはすべて薬漬けなのではないか」「どの業界も命を脅かしているように思える」といった悲観的な声も上がっており、消費者の不安は日増しに高まっています。今回の事件は、企業が利益を優先するあまり監視の目をかいくぐり、消費者の信頼を裏切る現実を浮き彫りにした形となりました。

(翻訳・吉原木子)