世界保健機関(WHO)の新型病原体起源科学諮問グループ(SAGO)は2025年6月27日、最新の報告書を発表しました。
報告では、新型コロナウイルス(COVID-19)の起源について、すでに多数の研究が存在するものの、依然として重要なデータや情報が不足しており、実験室からの流出の可能性も排除できないとしています。すべての仮説について徹底的な調査が必要であるとし、テドロス事務局長は「すべての仮説が成立し得る。特に人獣共通感染症の外部伝播や実験室流出を含む」と強調しました。SAGOは世界各国から選出された27人の独立した専門家で構成され、2022年以降52回の会議を重ね、膨大な学術文献や監査報告、諜報や各国政府の報告書を審査し、現地調査やインタビューも行ってきましたが、報告書では多くの重要な証拠が共有されていないことを指摘しています。例えば、中国の感染者から得られた遺伝子配列、武漢海鮮市場の動物サンプルのデータ、武漢ウイルス研究所における生物安全に関する記録などは、いまだに全面的には公開されていません。WHOは声明で「SARS-CoV-2の起源を解明するための調査は完了していない。あらゆる証拠の提供を歓迎する。SAGOは新たな情報の審査を続けていく」と述べています。
一方、今年4月18日、ホワイトハウスは改訂したCovid.govのウェブサイトを公開し、COVID-19パンデミックは中国の「研究所からの流出」が「真の起源」であると明確に示しました。新たなウェブサイトでは、研究所流出説の根拠として、第一に新型コロナウイルスが自然界に存在しない生物学的特性を持つこと、第二に全ての感染例が一つの人間感染を起点としており、従来のパンデミックのように動物から人間への複数の「スピルオーバー」が確認されていないこと、第三に武漢が中国の「最先端のSARS研究所」の所在地であり、同研究所で生物安全が不十分な中、ウイルスの感染力を高める「機能獲得研究」が行われていたこと、第四に華南海鮮市場で最初の症例が確認される数か月前の2019年秋、すでに武漢ウイルス研究所の研究者がCOVID-19に類似する症状を示していたこと、そして第五に自然起源であるなら科学的基準に基づきすでに証拠が出ているはずだが、現時点でもその証拠がないという点を挙げています。
ホワイトハウスのウェブサイトは、2024年12月に米議会下院の新型コロナ・パンデミック特別調査委員会が発表した520ページに及ぶ報告書も引用しています。この報告書は2年間をかけ、連邦政府と州政府のパンデミック対応やワクチン体制、ウイルスの起源調査を網羅的に行ったもので、「新型コロナウイルスは研究所、あるいは研究関連の事故によって発生した可能性が非常に高い」と結論づけています。また、米国立衛生研究所(NIH)がパンデミック発生前に中国の武漢ウイルス研究所へ「機能獲得研究」への資金提供を行っていた事実も明らかになっており、調査委員会は25回の公聴会、30回以上の証言記録、100万ページを超える文書を精査し、研究所起源説に対する高い信頼を示しています。
WHOはパンデミック初期、中国政府に対し感染者の遺伝子配列データの共有や、武漢海鮮市場で販売されていた動物に関する情報、武漢ウイルス研究所の業務や生物安全に関する資料提供を求めましたが、中国政府はこれらの情報をSAGOやWHOに提供していない状況です。テドロス事務局長は「中国政府やCOVID-19の起源に関する情報を持つすべての国々に対し情報公開を呼びかける。これは将来の大規模感染症から世界を守るために必要だ」と訴えました。SAGOの議長マリエッティ・ヴェンター氏も「これは単なる科学の問題ではなく、倫理と道徳の試練でもある。SARS-CoV-2の起源と、それがパンデミックを引き起こした経緯を解明することは、将来のパンデミックを防ぎ、命と暮らしを守り、世界中の苦しみを減らすために極めて重要だ」と述べています。
新型コロナウイルスは現在も一定の範囲で流行が続き、新たな変異株が次々と出現しており、人体への影響が拡大しているため、引き続き警戒が必要です。今年4月には中国各地で「目の充血」「異常な分泌物」「視界のぼやけ」などの症状を訴える人が急増し、新型コロナによる新たな感染形態ではないかとの不安が広がっています。中国当局からの公式発表はないものの、SNSでは感染を訴える国民や医師の投稿が相次ぎ、あるユーザーは「新しい変異株の兆候だ」と指摘しています。都市部の病院はすでに患者であふれ、専門家からは「ウイルスの感染力が再び高まっている」との警告も出ています。中国のSNS「ティックトック」などでは、4月下旬以降「喉の痛みと結膜炎のような症状が同時に出た」との投稿が急増し、甘粛省のあるネットユーザーは4月29日の動画で「27日から左目に黄色い分泌物が出始め、翌日には目が赤く腫れ、29日には右目にも同じ症状が出た。喉も激しく痛み、夜になると症状が悪化し本当につらい」と訴えています。
5月23日には河北医科大学第二病院の眼科医・崔莉医師が「最近『新型コロナ眼病』の患者が急増しており、従来の細菌性結膜炎とは明らかに異なる」と警鐘を鳴らしました。崔医師によると、こうしたウイルス性の目の病気は新型コロナ感染によって引き起こされ、結膜炎や角膜炎、さらに網膜障害をもたらす恐れもあり、目の充血やかゆみ、涙目、分泌物の増加、視界のぼやけや目のけいれんが見られ、重症化すると急性網膜神経障害(AMN)に至るケースもあるといいます。
中国工程院の李蘭娟院士も2023年時点で「新型コロナウイルスは依然として世界的に流行しており、変異の可能性も十分にある」と指摘しており、医療界では新型コロナが呼吸器にとどまらず、眼や神経系、心血管系にも影響を及ぼす可能性があるとの認識が広がっています。2022年に中国の『中華眼科雑誌』に掲載された研究でも、新型コロナウイルスが涙液や結膜を介して眼組織に侵入し、ウイルス性結膜炎を引き起こすことが確認されており、この見解は国際的な医学論文でも裏付けられています。
(翻訳・吉原木子)
