2025年7月5日の夜、広東省深圳市龍崗区の布吉街道・長青路付近で集団抗議が発生しました。「X」によると、その夜、複数の女性の露店商が街頭で城管(都市管理執法隊)に乱暴に排除され、突き飛ばされたり、警棒で殴られてケガをしたと伝えられています。
この出来事はすぐさま周辺の露店商たちの間に怒りを呼び起こし、家族や知人を含めた多くの人が現場に駆けつけました。抗議に加わった人は数百人にのぼり、現場を取り囲む市民の数も千人を超えたとされています。激しい言い争いや小競り合いが繰り返され、道路は一時的に完全にマヒしました。対立は翌未明の2時頃まで続きましたが、最終的には両者が一旦矛を収め、政府機関で話し合いを行うことになり、群衆も徐々に解散したということです。
現場にいた市民によると、今回の衝突の背景には「保護費(事実上の上納金)」の問題があったといいます。布吉街道の住民によれば、露店商は営業を許される代わりに「保護費」を支払う慣習がありました。しかし、当局が急に露店営業を禁止したことで、商人たちの間で怒りが爆発し、説明を求める動きに繋がったとされています。
別の市民は「城管は上からの指示で動いているが、露店商も生活がかかっているのに、取り締まりがあまりに乱暴だ。城管は小さな権限を大きく振りかざし、権力を振るっていると感じる人は多い」と話しています。こうした対立の背景には、単なる取り締まりの問題だけでなく、経済の低迷も関わっているとみられています。中国経済の減速で失業率が上がり、多くの失業者や低所得者が生計を立てるために露店営業に頼らざるを得ない状況になっており、そのため城管との衝突が頻発しているのが現状です。
実際、今回のように城管による暴力的な取り締まりがきっかけで起きた衝突は、以前から中国各地で繰り返されています。今年5月にも、深圳市龍崗区横崗街道の悦民路で同様の事件がありました。露店商のひとりは、自分の三輪車を押収されそうになり、車の前輪の下に身を投げ出して抵抗しました。この行動がさらに多くの露店商たちを呼び寄せ、抗議に発展したといいます。
同月には、再び深圳市内で事件が起き、女性の露店商が数人の城管職員から嫌がらせを受けました。城管は彼女の商売を妨害するだけでなく、公衆の面前で折りたたみ椅子を蹴飛ばして嘲笑するなど、挑発的な行為が市民の怒りを買いました。こうした取り締まりは表向きは街の景観維持のためとされていますが、実際には城管と社会の底辺層の間に長年蓄積してきた緊張や対立を浮き彫りにしています。
過去10年以上を振り返っても、城管による暴力的な執行が原因で大きな衝突が何度も起きています。2008年には湖北省天門市で「魏文華事件」が発生しました。市民の魏文華さんが城管の乱暴な取り締まりを撮影していたところ、複数の城管に暴行され、搬送先の病院で死亡しました。この事件では24人が拘束・起訴され、城管局の局長が免職されています。
2011年6月には広東省増城市新塘鎮で、妊娠中の女性・王聯梅さんが露店営業をめぐって城管と衝突し、暴行を受けたことがきっかけで、地元で数万人規模の抗議が起こりました。警察車両や救急車が焼かれ、武装警察が催涙弾や放水車で鎮圧に当たりました。当局は死者はいないと発表しましたが、事件に関連しておよそ11人が起訴されたとされています。
2013年には湖南省臨武県で「スイカ売り事件」が起きました。露店でスイカを売っていた鄧正加さんが城管と衝突し、秤の分銅などで殴られて死亡した疑いが持たれました。この事件でも多くの市民が抗議に集まり、警察が介入する大規模な衝突へと発展しました。関与した城管の複数人が拘束され、一部の幹部が免職処分を受けています。
同じく2013年には、瀋陽市で「夏俊峰事件」が発生しました。露店商の夏俊峰さんが城管の暴力的な取り締まりに抵抗し、刃物で反撃した結果、城管2人が死亡、1人が重傷を負いました。夏さんは正当防衛を主張しましたが、死刑判決が確定し、同年に刑が執行されました。この事件は城管の取り締まりの在り方や社会の底辺層の生存権をめぐり、全国規模の議論を呼びました。
近年も同様の事件は後を絶たず、2022年6月には河南省済源市東添漿村で城管が高圧放水銃を使い、露店商を強制排除する様子が大きな批判を浴びました。世論からは「暴力的な取り締まりは許されない」「文明都市の建設を口実にすべきではない」といった声が上がっています。
今回の深圳の抗議も、単なる街の管理の問題にとどまらず、経済的な困窮や権力の乱用、基層での腐敗といった複雑な社会問題が背景にあると見られています。経済が減速する中、こうした矛盾は一層深刻化しており、市民の間には城管への不満や不信感が強まっています。一度事件が起きると、それがすぐに集団抗議や大規模な社会問題へと発展しやすい状況にあり、今回の事件もその危うさを改めて示したと言えるでしょう。制度改革や透明性の向上が進まなければ、同様の衝突は今後も繰り返される可能性が高いとみられています。
(翻訳・吉原木子)
