7月8日午前5時ごろ、中国とネパールの国境に位置するジロン国境検問所付近付近で土石流が発生しました。これまでに中国側で11人が行方不明となり、ネパール側でも中国人建設作業員6人の行方が分かっていません。現地からは、中国とネパールを結ぶ重要な交通ルート「友誼大橋」が洪水で流されたとの情報も伝えられており、被災地の状況は深刻です。
災害発生後、中国本土のSNSではこの話題が大きな注目を集めました。あるネットユーザーは投稿動画で、土石流の発生時には豪雨と氷河の融水が重なり、国境地域の脆弱な防護線が一瞬で崩壊したと指摘しています。今回の災害は「一帯一路」建設に従事していた中国人作業員17人の命を脅かしており、行方不明者の中には、卒業したばかりの若い技術者から豊富な経験を持つ現場責任者まで含まれているということです。
一部のネットユーザーからは、地質リスクが分かっていながら、なぜ豪雨の到来前に作業が続行されたのか疑問視する声も上がっています。また、災害警報が「最後の1キロ」にまで届かなかったのではないかと、地質災害への警戒体制の不備を批判する意見も出ています。
さらに、同じユーザーは、ネパール側で行方不明となっている6人の中国人作業員のうち2人は、中国から到着したばかりの若い技術者で、本来は建設プロジェクトに貢献するはずだったと伝えています。わずかな時間で家族と永遠の別れを強いられたことを思うと痛ましい限りです。ブロガーは「彼らは決してただの数字ではなく、それぞれが大切な命だ」と訴え、「インフラ建設という名の下で、再び尊い命が犠牲になるような状況は繰り返すべきではない」と呼びかけています。
一方、チベットのネットユーザーの投稿によると、ジロン国境検問所付近に架かる「中ネ友誼橋」はすでに流失し、ニェラム(聶拉木)からジャンム(樟木)へ向かう道路も洪水で寸断されているとのことです。ネパールへ自家用車で向かう人々に対しては、交通状況や災害情報を細かく確認するよう注意が促されています。
今回の土石流に限らず、近年中国本土では極端な気象が頻発しており、各地で土石流や洪水が相次いで発生し、深刻な人的被害や経済的損失をもたらしています。
たとえば、7月5日には四川省雅安市天全県の龍尾大橋付近で土石流が発生し、3人が死亡、2人が行方不明になりました。また、7月4日には同省丹巴県巴底鎮の沈足溝で土石流が発生し、約15棟の住宅が押し流され、4人が行方不明になっています。同時期、中国各地では記録的な高温や洪水も続き、山東省では連日の40度超の猛暑で熱中症になる人が相次ぎ、貴州省や湖北省では広範囲にわたる洪水が発生しました。特に一部地域では川に遺体が流れる悲惨な状況も確認されています。こうした中、政府が発表する死者数が実際より少ないのではないかとの疑念が広がっています。
南方から北方にかけて、現在も大雨が続き、洪水の影響はさらに拡大しています。
広西チワン族自治区の玉林市や柳州市、桂林市などでは連日の豪雨により深刻な山洪が発生し、北流市では一部地域が大きな被害を受けました。北流市羅江鎮では水位が警戒水位を1.23メートル上回り、2015年以来最悪の洪水となりました。主要道路の多くで土砂崩れが発生し、停電も相次いでおり、農作物や養殖場は甚大な被害を受け、市街地の交通はほぼ麻痺状態です。住民の間では「7億元を投じた排水工事が一度の大雨でまるで役に立たなかった」と嘆く声もSNSに投稿されています。
四川省も記録的な豪雨と洪水に見舞われ、7月6日以降、広元市や涼山州などで豪雨が続き、多くの地域で山洪警報が出されています。岷江上流の増水により、成都にある紫坪鋪ダムは緊急放流を余儀なくされ、市街地での浸水被害が深刻化しました。丹巴県や九寨溝でも土石流が相次ぎ、交通インフラが大きな被害を受け、多くの道路が寸断されています。
東北部の遼寧省も例外ではありません。7月初めから大連市、丹東市、本渓市などで豪雨が続き、大連市では1951年以来最多となる降水量が観測され、市街地では深刻な浸水被害が発生しました。旅順地区では一晩で7,649回もの落雷が観測され、市内の排水システムが瞬く間に機能しなくなり、被害は深刻です。
また、山西省太原市でも激しい豪雨と珍しいほどの雷雨があり、市民の一人は「30年以上生きてきて、これほど激しい嵐は初めてだ」と話し、都市のインフラが改めて大きな試練に直面している現状を語っています。
注目すべきは、洪水被害の一部が豪雨だけでなく、上流のダムや水力発電所の放流によって悪化しているとの指摘が出ていることです。貴州省榕江県や湖南省懷化市托口鎮などでは、住民たちが「上流の放流が頻繁すぎて、下流の洪水が深刻化している」と訴えています。
それにもかかわらず、中国の中央政府高官は現地視察に訪れず、災害への対応に関する重要な声明もいまだ発表していません。洪水や災害対策を担当する張国清副総理も7月初めには湖北省で製造業の視察を行っていましたが、洪水被害については一切言及せず、政府の対応の遅れに対する不満が一層高まっています。
(編集翻訳・吉原木子)
