中国では、負債がすでに一般国民の生活の一部となっています。中国人民銀行と国家統計局のデータによると、2024年末時点で全国の負債人口は8億人を超え、さらに4億人以上がローン返済の延滞に陥っています。負債の中心は若者であり、80年代・90年代生まれが全体の85%を占めています。

庶民の負債実態 安定した暮らしから「ブラックリスト」入りへ

 ますます多くの一般国民が、SNSを通じて負債によって崩壊した生活の実態を語っています。

 河北省唐山出身の37歳のシングルマザーはこう話しています。
 「私はこれまで誠実に生きてきて、数百元を借りたとしてもその日のうちに返すような人だった。まさか起業の失敗で多額の負債を背負うとは思わなかった。負債は180万元(約3600万円)にもなった。数か月のうちにブラックリストに載せられ、口座に残っていた数万元も凍結された。水道光熱費でさえ隣近所に借りるしかない羽目となった」

 彼女はアルバイトで返済しようと考えましたが、「信用失墜者」に指定されたため、工場にすら就職できませんでした。屋台を出して生計を立てようとしても、信用問題によりQRコード決済も凍結されていました。「負債が始まったと同時に、生活が凍り付いたのだった」

 35歳のブロガー「燕子」は、80万元(約1600万円)を超える負債を背負っており、アリペイ、銀行、個人からの借り入れすべてが延滞しています。「毎日数十件もの取り立て電話がかかってきて、精神的に追い詰められた。会社は倒産し、家も失った。外で働いてもリストラされ、今は全てを失った。昔助けた人に500元(約1万円)貸してほしいと頼んでも、誰も貸してくれなかった」

 あるブロガーは動画でこう語っています。「中国には現在9億2000万人が負債を抱えており、そのうち4億5000万人が返済不能に陥っている。つまり、街を歩く人々のうち、お年寄りや子どもを除けば、ほとんど全員が負債を抱えているということになる。2人に1人は返済に困っている。負債によって信用を失い、精神的にも追い込まれてしまう人もいる。皆に言いたいのは『天が崩れても、背の高い人が支えてくれる』という言葉だ。でも皮肉なことに、十数万元の負債を抱える人よりも、億単位の負債を抱える大物たちのほうが、よほど自由気ままに暮らしている」

起業家から深夜帰宅の労働者へ

 ブロガーの「薇澜」さんは、運営していたEC会社が倒産し、180万元(約3600万円)の負債を抱えています。「3年以内に返済して再起する」と誓い、動画でダイエット、美容、動画編集、ライティングなどさまざまなスキルを学んで自ら発信を始めましたが、50本以上の動画を投稿しても反応は芳しくありませんでした。

 「その後はライブ配信を始めたが、すべてを一人でこなして体力が尽きた。容姿も良くなく、話術もなく、営業能力もない。自分は本当に無学・無能な人で、この仕事は到底続けられないと感じた」

 4か月間収入がない状況で、仕方なく労働者に転身し、収入は家族4人の最低限の生活を支えるのがやっとでした。

 彼女はこう回想している。「毎日未明に帰宅し、冬には電動スクーターで冷たく暗い路地を走っていた。何度も走りながら泣き、絶望し、助けもなく、未来がどこにあるのか分からなかった。毎月ゼロから始まりゼロで終わる。このままでは、一体いつになったら負債を返済できるのか」

若者の負債は「塵も積もれば山となる」

 データによれば、中国人の1人あたりの平均負債額は14万元(約280万円)から20万元(約400万円)に達しています。そのうち60%以上は住宅ローンで、次いでクレジットカードや消費者ローンとなっています。クレジットカードの債務不履行額だけでも2000億元(約4兆円)を超えています。

 ある投稿者は、友人の姪が日常的な消費で数十万元のネットローン地獄に陥ったことを語っています。
 「ここ2年間、彼女(友人の姪)の生活は基本的に30元(約600円)程度のデリバリーや10元(約200円)のタピオカミルクティー、それにライブ配信での少額かつ高頻度の買い物で占められていた。でもこうした少額・高頻度の支出が、気づかぬうちに数十万元の負債へと膨れ上がったのだ」

 投稿者はその仕組みをこう説明しています。
 「例えば、1万元(約20万円)を1年分割で借りた場合、毎月の返済は1000元(約2万円)。これは毎日1回のデリバリーの金額とほぼ同じである。それなら払えると思うかもしれない。しかし2か月後、家賃の支払いがやってきて、返済できない。その時どうするか?また別のプラットフォームで新たに借りて、古い負債を返すのだ。こうやって借金で借金を返す生活が始まり、ある日突然、どのプラットフォームからも借りられなくなる。その瞬間、過去の返済記録を見て『この人は返済能力がない』と判断され、負債の連鎖が一気に崩壊する」

法律的視点 負債の最悪の結果とは?

 数億人もの負債者を前に、ある弁護士ブロガーは法律上の結果について解説しています。彼によれば、3年から5年返済できなかったとしても、最悪の結果は「刑務所行き」ではなく、子どもの就学や就職にも影響は出ません。
主な影響は以下の3点です:

取り立て電話が「連絡先を爆撃」

 電話に出ないと、貸付アプリ(金融サービス事業者)は債務者を「連絡不能」と見なして、違法覚悟で家族や友人、勤務先などにも電話をかけ、社会的な圧力をかけてきます。この行為は違法であり、証拠を集めて通報することが可能です。

信用破たん

 延滞すれば信用情報が損なわれ、今後は住宅ローンや自動車ローンが組めなくなります。ただし、返済を完了すれば5年後に信用情報は回復します。

裁判所からの訴訟

 長期間返済がない場合、裁判所により「信用失墜者(ブラックリスト)」として登録され、新幹線や飛行機の搭乗、ぜいたくな支出が制限されます。しかし、拘束されることはなく、子どもの学業や就職にも影響は及びません。

負債延滞者が語る「絶望からの対処術」

 260日間延滞しているネットユーザーが、自身の「落とし穴を避ける経験談」を共有しています。

・家族名義で新しい電話番号を取得し、それを仕事や日常生活用に使い、元の電話は着信音を消すのが望ましいです。できる限り負債と日常生活を切り離し、取り立ての電話で精神的に影響を受けないようにすることが大切です。

・延滞に陥る前に、必ず家族に正直に事情を打ち明けておく必要があります。なぜなら、一度延滞が発生すると、電話帳に登録されている人々に高い確率で取り立ての電話がかかってしまうからです。
「私の場合、アリペイが7日間延滞した時点で祖父に電話がかかった」
「長年連絡を取っていなかった中学時代の同級生にまで、取り立ての電話が届いた」

・よく使う預金口座の連携を解除し、貸付アプリ(金融サービス事業者)による自動引き落としを防ぐことも重要です。

・自分名義で多額の現金を保有しないようにし、今後の支払いには、家族に頼んで新しいウィーチャットのアカウントを登録してもらうのがよいとされています。

 負債とは単なる数字ではなく、抜け出せない人生の罠でもあります。この全国規模の債務危機は、もはや単なる金融問題ではなく、数億人の現実の生活を縛る社会的な災厄となっているのです。

(翻訳・藍彧)