この夏以降、中国では広西チワン族自治区から甘粛省にかけて、複数の省で記録的な豪雨が相次ぎ、洪水が各地で猛威を振るっています。都市や農村で住宅の倒壊や道路の寸断が続き、多くの住民が避難を余儀なくされています。
広西チワン族自治区百色市隆林県では、7月2日早朝、新州鎮の村で、河川沿いに建てられていた5階建ての鉄筋コンクリートの建物が、急激に増水した川の流れで基礎部分を削られ、「ガシャッ」という大きな音を立てて、全体が折れ曲がり、そのまま川へと崩れ落ちました。住民たちは倒壊の危険を警戒し、道行く人々に注意を呼びかけていましたが、惨事を防ぐことはできなかったということです。
湖北省咸豊県でも、6月30日夜から7月1日未明にかけて猛烈な豪雨が降り、最大で264ミリの降水量が記録されました。町全体が一夜にして濁流と化し、道路は泥色の川となり、自動車がひっくり返りながら流され、ネオンの光が水面にちらちらと反射する光景がSNSに投稿されています。
現地住民の黄さんは「県城の三分の二が水に沈みました」と語り、突然の豪雨で当局の警報が間に合わず、商店街はすべて浸水したと話しています。SNSの動画では、道路沿いの商店が深刻な被害を受ける様子や、洋服店の商品が水没し、靴屋のガラスが割れて靴が洪水に流される光景が映し出されています。
7月1日正午、水がやや引いた後も、街中には大量の泥やがれきが散乱し、住民たちは、片付けに追われました。「今年はただでさえ生活が苦しいのに、こんな天災まで起きるなんて」と嘆く声も聞かれます。洪水が引いた後も、多くの場所で大きな石が堆積し、車が石に埋もれ、車の屋根だけがかろうじて見える状態です。湖北省当局は「死傷者は無し」と発表していますが、黄さんは「実際には犠牲者がいる」と証言し、「ロマンティック荘園で夫婦が亡くなり、負傷して入院している人もいます」と話しています。
河南省南陽市西峡県でも、恐怖の夜に襲われました。ました。6月30日夜9時から夜0時までのわずか3時間で、太平鎮、二郎坪鎮では208.3ミリの豪雨が降り、累積降水量は225.3ミリに達しました。蛇尾河の水位が急上昇し、洪水が発生しました。老界嶺景勝地にいた観光客の郭さんは「夕方7時ごろから雨が降り始め、9時には豪雨に変わりました。民宿が停電し、携帯電話もつながりにくくなりました。夜10時ごろには道路が冠水し、車が立ち往生して中から子どもの泣き声が聞こえました。友人とロープで助けましたが、あっという間に水かさが増して車が流されてしまいました」と振り返っています。
翌7月1日朝7時、郭さんたちが山を下りようとしたところ、主要な道路はすでに流され、車も人も通れない状態になっていたといいます。老界嶺景勝地の出入口では、100人以上の観光客が救助を待つ事態となりました。近くの民宿の経営者は「下山ルートの道路が完全に断たれました。うちの民宿は上り道沿いだったため被害は比較的少なかったですが、景勝地の手前では道路が土石流で崩れ、車も流されました」と話し、景勝地が一時閉鎖されたことを明らかにしました。
当局の発表によりますと、7月1日午後7時半までに行方不明だった5人が発見されましたが、全員が亡くなっており、さらに3人が行方不明のままだということです。隣接する白雲山景勝地も、豪雨や土石流の影響で道路が封鎖され、同日朝から閉園を発表しましたが、被害に遭った観光客の具体的な人数は公表されていません。
貴州省榕江県でも、洪水が「瞬く間に町を水没させる」事態が起きました。榕江県は、6月24日と28日の短期間に二度の豪雨に見舞われ、特に28日にはわずか7分間で町の各所が浸水したといいます。榕江県は柳江、寨蒿河、平永河の三つの河川が交わる地点に位置し、周囲を山々に囲まれているため、「天然の遊水池」と化しやすいとされています。今回の降雨量は平年6月の平均の2倍に達し、4万人以上が避難しました。
甘粛省陇南市でも、7月2日から3日にかけて局地的に激しい雨が降り、徽県では街が冠水し、山間部では土石流が発生しました。建設現場では作業員2人が命を落としました。陇南市武都区では最大220ミリの降水が観測されました。気象当局は警戒レベルを警報から特別警報へ引き上げたということです。中央気象台は7月3日も引き続き暴雨警報を出し、4日には甘粛省東部、四川盆地北西部、吉林省東南部、遼寧省東部などで100~180ミリの大雨が予想され、雷雨や突風などの強い天候への警戒が呼びかけられています。
(翻訳・吉原木子)