2025年6月3日、モナコの海運企業ZM(ゾディアック・マリタイム)社の貨物船「モーニング・ミダス」号が太平洋を航行中に突然激しい火災に見舞われました。同船には中国製の一般車両を含めた電気自動車が約3000台が積まれており、中国の山東省煙台港を出港後、メキシコのラサロ・カルデナス港へ向かっていました。ところが航行中、船尾付近から黒煙が立ち上り、電気自動車が積まれた甲板から出火したことが判明しました。22名の乗組員は緊急脱出して救命艇で避難し、付近を航行していた商船に救助されたため、幸い人的被害はありませんでした。
しかし火災は悪天候による影響もあり、消火活動が難航しました。さらに船体に大量の浸水が発生し、「モーニング・ミダス」号は6月23日にアラスカ沖のアリューシャン列島付近の国際水域で沈没してしまいました。ZM社とアメリカ沿岸警備隊が事故の原因調査に乗り出しましたが、船が深海に沈んだため、正確な出火原因の特定は困難になっています。現在、米沿岸警備隊は現場付近で油漏れや海洋汚染の監視を続けています。また、積荷であった3000台の自動車が沈没したことによる環境への影響が懸念されています。
同時期、中国国内でも電気自動車の発火事故が相次いでいます。
同日6月23日、中国の安徽省で電気自動車の所有者が突然の事故に見舞われました。この日、徐さんは購入後わずか1年の五菱製「ビンゴ」(缤果/ビングォ)という電気自動車を自分の店の前に停め、仕事をしていました。しかし午前11時頃、近隣の人から「車が燃えている!」という声を聞きつけ慌てて店外へ出たところ、車の左前輪付近から煙と炎が勢いよく噴き出していました。徐さんは消火を試みましたが、炎は瞬く間に車全体に広がり、車内にあった現金や重要書類も含めすべてが灰と化しました。現在のところ、製造元である五菱から明確な調査結果は出ていません。
また同日夜には、広東省広州市越秀区でも同様の火災事故が発生しました。駐車場に停車していたメルセデス・ベンツの電気自動車「EQシリーズ」が突如炎上し、深夜にも関わらず爆発音が響き渡りました。現場には激しい火の手が上がり、消防隊の迅速な対応にもかかわらず、車は骨組みを残すのみとなりました。実は、EQシリーズでは今年4月に充電中のEQAモデルが発火しました。1月にも走行中に火災が起きるなど、事故が相次いでおり、消費者の間ではメルセデス・ベンツ製の電気自動車に対する安全性への不安が広がっています。
さらに、このような電気自動車の火災は安徽省や広東省だけでなく、江西省や江蘇省蘇州市でも最近頻発しています。5月14日には江西省の住宅地地下駐車場で電気自動車が突然発火しました。隣接する16台の車両を巻き込み、一帯は黒煙と炎に包まれました。また、先月25日には蘇州市の工業園区内の駐車場でも、停車中の電気自動車が突然燃え上がり、周囲の複数の車両が巻き込まれました。防犯カメラの映像では、停車中の車両が突然燃え始め、周囲に急速に炎が広がる様子が確認されています。地域住民からも不安の声が上がっています。
中国製電気自動車でこのような発火事故が多発する背景には、「リチウムイオン電池の熱暴走」という現象があると指摘されています。電池内部で異常な熱が発生すると短時間で激しい火災に至り、消火も難しくなります。これらの事故は経済的損失のみならず、周囲に暮らす人々の生命や財産にも深刻な影響を与えています。
今回、太平洋上で起きた「モーニング・ミダス」号の事故は、中国製電気自動車の安全性に対する国際社会の懸念をさらに強めました。人的被害こそありませんでしたが、巨額の経済損失と環境への影響は無視できない規模です。こうした事故は、長期的には「中国製品」全体に対する国際的な評価にも影響を与える恐れがあります。
中国内外で続発するこれらの火災事故は、電気自動車産業における安全性の課題を鮮明に示しています。専門家は、企業が短期的利益を追求するばかりでなく、電池の品質の向上や安全設計の徹底を図ることが不可欠であると指摘しています。これらを怠れば、消費者の信頼を失いかねません。
いずれの事故も私たちに警鐘を鳴らしています。電気自動車は未来への大きな可能性を秘めた技術です。しかし、安全性が確保されなければ、常に重大なリスクが伴います。企業と規制当局の真剣な取り組みにより、消費者が安心して利用できる環境が整備されることが望まれます。
(翻訳・吉原木子)