6月25日(火)、中国南西部の貴州省榕江県では再び激しい豪雨に見舞われ、いわゆる「30年に一度」とされる大規模な洪水が発生しました。河川の水位は急速に上昇し、県全域が水に浸かる深刻な被害が確認されています。

 同日午前には、厦蓉高速道路の格都区間に位置する猴子河特大橋が突然崩落し、複数の車両が橋の下へ転落しました。赤い大型トラックの運転席は宙吊り状態となり、運転手が命の危機に晒される事態となりました。現地では携帯電話の通信が遮断されており、救助要請もままならない状況が続いていたといいます。現場にいた住民は「全く信号が繋がらない」と声を荒らげ、別の住民も「命が助かって本当に良かった。危険すぎる。消防の到着を待つしかなかった」と語っています。

 事故は広西チワン族自治区から貴州省方面へと続く高速道路上で発生しました。長時間の大雨により地盤が緩み、山崩れが起きたことで橋の構造が損傷したと見られています。現地メディアによると、トラックの運転手は運転席後部の小窓から荷台に這い出し、最終的に地上へと降ろされました。しかし、救出時には極度に衰弱しており、自力で立つこともできなかったと伝えられています。

 この事故に対し、SNS上では「手抜き工事の典型だ」「見た目だけのGDP至上主義が招いた惨事だ」「犠牲者数を公表すべきだ」など、当局への批判が相次いでいます。

 今回の豪雨は榕江県内にとどまらず、下流の従江県にも影響が広がりました。住宅の浸水、停電、通信障害が各地で発生しています。榕江県のある住民は取材に対し、「特に被害が大きかったのは場壩街周辺です。実家のある大河口や楊家湾では、わずかの間に水が3階まで到達しました。両親とは連絡が取れず、水も電気も止まっています。幸い、隣家の4階に避難したようです。私の住むマンションも24階建てですが、1階が完全に水に浸かり、家具や家電はすべて使えなくなりました」と話しています。

 中国の報道によると、6月20日から21日にかけて榕江では連日の豪雨が続き、河川の水量の急増によって道路の崩落、農地の冠水、住宅の浸水など深刻な被害が発生しました。インターネット上では、現地で人気のサッカー大会が行われる榕江サッカー場は完全に水没した映像も拡散されています。ピッチは水深2メートルに達し、関係者は「週末の試合は中止を決めた」とコメントしています。スタジアム近くの飲食店の店長は「朝9時ごろ店の様子を見に行こうとしたが、周囲の道路が水で封鎖されていて入れなかった。遠くから見ると、店の前で冷蔵庫が浮いていた」と語りました。

 榕江県の別の住民は「榕江の市街地は治水ダムよりも地盤が低く、一度水が流れ込むと排水が難しい。下水道も泥で詰まり、大型の排水ポンプがなければ対処できません。興華郷や楊家湾では屋根だけが見えるほどの浸水となり、1996年の大洪水を上回る被害規模です。あの時はまだ堤防もありませんでしたが、今回は堤防があっても橋が流され、通信は遮断され、学校もすべて休校になっています」と嘆いています。

 従江県でも被害は深刻化しています。現地の住民は「24日の昼から夜にかけてさらに水位が上がりました。旧市街は完全に水没しました。2本の橋が通行止めとなり、かろうじて従江二橋だけが使用可能です。鉄橋は流されてしまいました」と証言しました。「山間部の村は孤立し、市街地の大半が停電しました。商店の商品も水に浸かり、大きな損害が出ています。年配の住民は『1996年の水害と同じレベルだ』と口を揃えています」と語ります。

 さらに下流にある広西チワン族自治区の柳州市三江県でも被害が広がっています。大灘村の住民によれば、「ここでは10分ごとに水位が上がっており、すでに2階部分に迫る勢いです。地盤の低い家はすでに床上浸水していて、村全体が停電しています。我が家はまだ少し高い位置にありますが、あと5〜6メートルで水が入ってくるため、避難を検討しています」と述べました。

 こうした事態を受け、榕江県当局は6月24日午前1時半、洪水に対する緊急対応レベルを水害Ⅲ級からⅡ級へと引き上げました。公式発表では、継続的な豪雨と上流からの水流増加の影響で、平永河、寨蒿河、都柳江の水位が急上昇しており、防災対応に強い緊張感が漂っているとしています。

 現地住民は「消防隊はあるものの人手が不足しており、各地で孤立したままの状況が続いています。今回の洪水はあまりに急激で、住民には避難の準備をする時間すら与えられませんでした」と語りました。

 現在も榕江、従江、三江をはじめとする被災地域では、依然として水が引ききっておらず、救助や物資支援の到着が待たれています。

(翻訳・吉原木子)